冬景色、春景色「月山とヨットハーバー」

Photo_5先で食べる朝食は、なぜきっちりと食べてしまうのだろう。いつもならトースト1枚とヨーグルトでお腹がいっぱいなのに。誰もが経験する謎。しかし、そんな疑問を抱く余地のないほど<古窯>の朝食は実に旨かった。後ろ髪を引かれながら、宿まで迎えに来てくれた弟の車に乗り込み、山間の街から海辺の街までのロングドライブ。山形の中央に聳える名峰月山(がっさん)を横断する、短時間で冬と春を味えるコース。しばらく走ると、車窓左側の低山の奥に白い峰々が長く続く。朝日連峰だ。春を迎えた田圃の向こうの冬景色。そして車が山形自動車道に入る頃は、道の両側の残雪と雪山にぐるりと囲まれた冬景色の中を走ることになる。晴天の下の雪景色、心震える風景だ。

Photo_7内平野を一望する辺りからは、すっかり景色は春になる。振り返ると月山は遠く春霞の中。白く丸い月の山が、春めいた田圃から上っている。高校時代に見慣れた春の風景。当時と変らぬたおやかな山の姿は、懐かしさや郷愁だけではない、眺める人の心を動かす美しさを持っている。良い山だ。ん?そんな気持に浸ってると、左前方にオレンジ色の見慣れない物体が。何だ?良く見ると、猿?オレンジ色の猿、猿、猿。臨時の車線規制のためのガードレールの土台。ん~、チャーミング。思わずパチリと1枚。田舎道に似合うゆるゆるの意匠。和みの風景。のんびりドライブの副産物。

Photo_9過ぎに到着した我々を待っていたのは海の美味。末弟の同級生が営む人気の寿司屋で一族揃っての昼宴会。姪っ子&甥っ子3人の、高校・中学・小学校卒業と、父親の誕生日を祝う祝いの席。大きな寿司桶が並ぶ。ほっと美味しい。寿司ネタには極めて珍しい“ハタハタ”の握りもなかなかの美味。当然のようにズワイガニも美味しい。いずれも素材勝負の逸品。自慢の玉子も豪快な味と大きさ。自分たちが子供の頃の寿司ネタは、イカとタコと、せいぜいがブリだったなぁ。山形も豊かになったなぁ。オヤジたちはしみじみ。

Photo_8の墓参の前にヨットハーバーでのんびり散歩。清々しい青空の下、大型クルーザーが並ぶ本格的な施設。「ヨット買いたいなぁ。ディンギーで良いんだけどなぁ」末弟が呟く。買いなさい!妻も私も若かりし頃ヨットの経験あり。しっかり教えてあげよう。冬の長いこの街では一年のうちに沖に出られるのは半年余り。その分係留代が安いわけだし。夏にみんなでクルージングしようぜ!そんな会話も互いに大人になったからこそ。しかし、老いた父と、兄弟たちと、姪っ子&甥っ子たちと一緒に過ごす夏もきっと数えるほど。家族の季節はそんなに長くはない。せいぜいそんな会話のできる内に実現できると良いね。

Photo_11うしてまた慌しく週末が過ぎて行く。庄内空港発羽田行きの最終便の座席に腰を下ろし、姿勢を整える。お腹の空く時間、お弁当のサービスがあるということもあり試してみたプレミアクラス。へぇ~シャンパンのサービスもあるんだぁ。決して美味しくはない弁当をつまみながらベビーボトルのニコラフィアットを一口。ふぅ。肩の力が抜けて行く。「ご搭乗の皆さま、飛行機はまもなく着陸体勢に入ります…」おいっ!ついさっき離陸したばかりだろうっ!アナウンスに突っ込みを入れる。空路なら故郷は近い。それにしても一安心。やっと墓参りまで済ませることができた。顔を揃えた子供たちに父親も喜んでいた。それが何より。週末の心和む風景を思い出しながらまどろむ。「寝てる場合じゃないよっ!もうすぐ到着だよ!お台場の観覧車が見えるよ♪」妻の声に、“自分の街”に帰ってきたことを自覚する。

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