至上の楽器「絢香シンフォニックコンサート」
2009年 9 月12日(土)
夏休み直前のある夕方、お気楽夫婦は慌てふためいて国際フォーラムへ向かっていた。1週間の休みを前に片付けるべき仕事は山積。なのに2人の手にはコンサートのチケット。なんて奴らだと自分たちを嘲る。夏休み中にトラブルが起きることが心配だ。夏休みから帰ってきてからのリカバリーがたいへんだろう。ふぅ。でも、どうしても行っておきたかった。彼女の声を聴いておきたかった。アーティストの名前は「絢香」。水嶋ヒロとの結婚、バセドー病の発症、そして今年一杯で歌手活動の休業を宣言した記者会見。それをTVで観た時に、どうしても生のライブで、彼女の歌声を聴かなければと思った。(写真は当日のパンフレットより)
デビュー曲「I Believe」を初めて聴いた時、彼女の伸びやかで柔らかいのに力強い歌声に魅せられた。「三日月」を聴いた時にその歌詞に強く惹かれた。そして、コブクロとのコラボで「WINDING ROAD」を歌ったプロモーションビデオを何度も繰り返し観ながら一緒にTVの前で歌い、高校生だった姪と何度もカラオケでデュエットした。何よりも歌うのが楽しそうだった。自分の声を自在に操り、メロディを奏でることが嬉しそうだった。あるTV番組で同い年のフィギアスケートの安藤美姫と仲が良く、安藤美姫がリンクに出る前は絢香の「I Believe」を聴いているというエピソードも印象的だった。そんな絢香を聴いておきたかった。
東京シティ・フィルハーモニック・オーケストラの演奏する「I Believe」で開演。そして絢香が登場。フルオーケストラの前で歌うことは誰にでもできることではないことを実感する。歌声が、歌唱力が、オーケストラに負けず、馴染み、ひとつの楽器となっていく。どんな楽器にも創れない絢香の「声」という楽器。一部は「三日月」で終了。二部は「おかえり」から始まった。「ありがとう」「みんな空の下」と続く。病気のことは一言も触れず、こうなりたいとずっと思い続ければ夢は叶うというエピソードを語る。そして圧巻は最後の曲「I Believe」。ピアノ演奏だけ、マイクなしの「I Believe」。シーンと静まり返る会場。広い東京国際フォーラムの隅々まで絢香の歌声が響き、その思いが伝わる。肌が粟立つ。涙が出そうになる。この1曲が聴けただけでもこの場所に来た甲斐があった。究極の、至上の楽器。
♪ 目の前にある 自分の進むべき 道はどれか♪・・・「I Believe」にこんな歌詞がある。♪ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道 二つに分かれて 別々の方歩いてく♪これは「三日月」の歌詞の一部。そしてコブクロとの「WINDING ROAD」。絢香はずっと「道」を意識してきたのかもしれない。歌うことを止め、水嶋ヒロというパートナーと歩む道を選ぶ。バセドー病は完治できる病気らしい。しかし、甲状腺の病気ということもあり、体調管理はたいへんだろうし、1曲歌うだけでも辛いことがあるはず。東京国際フォーラムでのシンフォニックコンサートの後、8月22日の青森県でのライブは中止になったという。快復でき、その至上の楽器を携え、好きな歌の道に戻って来られることを祈るばかり。
「目の前にある、私の進むべき道は、生涯お気楽な道だね」・・・妻の答えは聞くまでもない。