ご当地グルメ「浜松餃子とバゲットと」
2010年 5 月15日(土)
ご当地グルメ、それも自らB級グルメと名乗って、地元で人気の料理でまちおこしを!というブームが起きている。数年前、静岡県の富士宮焼きそばに、福岡県の小倉焼うどんが挑んだ「天下分け麺の対決」が先駆け。その後、B-1グランプリというB級グルメの一大イベントに発展し、横手焼きそば、八戸せんべい汁、駒ヶ根ソースカツ丼、厚木シロコロ・ホルモン、静岡おでんなど、次々にご当地グルメが脚光を浴びた。妻の両親が住む浜松でも、浜松餃子が人気。ある日、浜松餃子の老舗「石松」に向かうと、店の前は長蛇の列。駐車場にさえ入れない。「凄いねぇ。前はこんなじゃなかったのに、店もすっかり大きくなったねぇ」と義母。地元の人さえ驚く人気ぶり。恐るべしB級グルメブーム。空腹の妻は「他に行こうか」とあっさり言い放つ。
けれど、餃子好きの私としては諦めきれない。「TVで観たんだけど、五味八珍という店が浜松餃子のほとんどを工場で作っているらしいよ」と妻の情報。そこだ!「五味八珍」という店は、いわゆるファミレス。餃子以外に、つけ麺あり、ラーメンあり、チャーハンありの、浜松市を中心として50店舗ほどあるフツーの中華系チェーン。けれど、侮れず五味八珍。名物の浜松餃子が12ヶで480円!まさしくファミレス価格。これが実に美味しいのだ。キャベツたっぷりのヘルシーな餃子を丸く並べて焼き、中央にもやし。あっさりとした味で、いくつでも食べられそう。「あら、さほど期待してなかったけど、美味しいねぇ♫」妻も満足そうに微笑む。餃子はお気軽で身近な料理。ファミレスで満足できる味なら文句なし。妻の両親もリラックス。
「実は行きたいパン屋があるんだよね」浜松滞在中のある日、妻が呟いた。浜松まで来て、妻がわざわざ行きたいパン屋とは、最寄り駅の近くにあるブランジェリー・スギヤマという小さな店だった。真っ白な壁、赤いテント地に白くBoulangerie Sugiyamaの文字。入口の扉を囲むように大きな藤棚。店のロゴもきとんとデザインされ、藤棚の影とともに白い壁に映える。いかにも美味しそうな予感が漂うキュートな外観。店の面構えは、大切だ。「うぅ〜っ、どれも旨そうだぁっ」小食なのに、パンに対してだけは異常な執着を持つ妻。なかなか決められない様子。4人分なのだから、妻の食べたいものを全部選んで、分けて食べようと提案すると、狂喜乱舞。パンのことになると単純明快。
妻が選んだのは、食パンのミニチュアのようなブリオッシュ、小豆入りのベーグル、シェル型のクリームパン、バゲットなど。「嬉しいよぉ♬」さっそく持帰り、4人揃ってランチ。ブリオッシュはサクサクと香りが豊かで上品。ベーグルはもっちりと、そして小豆の甘さが実に繊細にパン生地に馴染む。クリームパンはしっとりと、そしてこってりと濃厚なクリーム。私好み。バゲットは表面カリカリと、中の気泡も充分。妻好み。いずれもきちんと小麦の香りと味がして、実に丁寧に作っていることが伝わって来る。そしてパンの形やネーミングにパンが好きでたまらないという気持も伝わって来る。ん〜これは素晴らしい。
「こんなパン屋が近くに欲しいよぉ」涙ぐまんばかりの妻。彼女に言わせると、美味しいパン屋があるかどうかは、その街の文化度を測る物差しだと言う。確かに、それは一理ある。ご当地グルメも良いけれど、自分たちの住む街にこんな美味しいパン屋があったらかなり嬉しい。きちんとしたコンセプトを持った棚のある本屋、ゆったりと落ち着いたソファで美味しいミルクティが飲めるカフェ、美味しい酒と料理を組み合わせてくれる料理屋、そして妻のためにハード系パンが得意なパン屋がある街。そんな街に2人で住めたら良いね。「それに気持の良いスポーツクラブもね」と妻。すると、浜松でまだ見つけていないのは、カフェと本屋…。浜松移住計画までの道程は長い。