てっぺん目指して!「第39回全日本スカッシュ選手権大会」

ALL JAPAN SQUASH10年来、お気楽夫婦が応援してきたアスリートがいる。松井千夏。“元”スカッシュ日本チャンピオン。2001年の全日本スカッシュ選手権大会に初優勝して以来、優勝回数4回を数えるスカッシュのトッププレーヤー。3連覇を目指して臨んだ2009年の全日本で、当時19歳の小林海咲に敗れ、再度チャンピオンを目指す2010年。彼女のかつての恩師であり、日体大の先輩であり、お気楽夫婦のコーチでもある山ちゃんに数年振りに指導を受けていた。「IGAさん、お久しぶりです!」ある週末、レッスン帰りの千夏にホームコートで声を掛けられた。もうすぐ全日本だけど、調子は?そう尋ねると「調子は良いです」と即答。ほぉ、それは楽しみだ。じゃあ、予定していなかったけど、応援に行くよ。「日曜はレッスンですよね。土曜日だったら1試合だけで…」千夏を観に行くんだったら、決勝だよ!「分かりました。待ってます♡」

CHINATSUる日曜日、全日本の会場である「さいたまスカッシュスタジアムSQ-CUBE」に向う。久しぶりの大会観戦。会場入口付近には懐かしい顔が。「あぁ〜!久しぶりぃ。スカッシュ続けてるの?」40歳を超えても年間何試合かの大会に出場し、一定の戦績を残し、しぶとく全日本選手権にも出場している仲間たち。彼女たちから見ると、大会にも参加せず会場にも顔を出さない我々は、引退したのではないかと思われても仕方ない。「私たちは“お気楽”スカッシュプレーヤーだから」妻が笑顔で答える。スカッシュに関わるスタンスはそれぞれ。お気楽夫婦が愛するスカッシュは、気持よく汗を流し、仲間たちと気軽にプレーすることができるスポーツ。そして、トップを目指すプレーヤーたちの試合を楽しむ“観る”スポーツでもある。

TicketsIGAさん、こんにちは!」会場のあちこちで、ボランティアとして大会に参加しているスカッシュ仲間たちから声を掛けられる。聞けばボランティアスタッフの希望者が多く、途中からお断りしたという。今年は会場が小さいこともあり、観戦スペースが狭い。有料の指定席券の枚数も限られる。けれど、コートを1面つぶして大きなプロジェクターで観戦できたり、会場2階にパブリックビューイング席を設置したり、Ustreamでのインターネット配信を行ったりと、多くのファンに観てもらおうという企画がたっぷり。会場のドロー表も見やすく、外部に向けてツィッターで試合結果の速報を流したり、細部に運営側の心遣いが感じられる。気持の良い大会運営だ。

子一般準決勝、第1試合。順当に行けば、千夏と決勝で対戦するディフェンディング チャンピオン小林海咲が登場。対戦相手は学生時代に大学選手権4連覇を達成した前川美和。ラリーが始まる。小林のキレのあるボールが前川を揺さぶる。強い。善戦して1ゲームは奪ったけれど、前川は全く歯が立たない。鋭く切れ込むクロスは男子並み。ボーストの精度も高く、ミスが少ない。千夏、勝てるか?準決勝第2試合。千夏が登場。相手は第3シードの鬼沢こずえ。危なげなく千夏が3-0で勝利。確かに調子は悪くない。けれど、前の試合で小林のプレーを見た後では、スピード感に欠ける。千夏、大丈夫か?

して決勝。小林のショットが冴える。硬軟織り交ぜた千夏のショットも決まる。互いのプレースタイルを知り尽くしてる2人。いかにその裏をかけるか。いかに自分の持ち味を出せるか。素晴らしいラリーだ。良い試合だ。千夏の気迫籠ったプレーが、小林の動きをやや鈍らせている。けれど、小林の速く鋭いボーストに千夏が反応し切れない。接戦で1Gは小林。2Gめは千夏が奪取。3Gめは小林。このまま小林かと思った4Gに千夏が奮起。前半を5-1とリード。行け!千夏。どきどき。が、ここからが小林の真骨頂。10-10のタイブレークに追いつく。はらはら。最後は千夏をコートの隅に走らせ、マッチオーバー。笑顔でコートを出た後、会場の隅でスタッフの胸に顔を埋め、泣きじゃくる千夏。お気楽な2人が彼女に掛けることばはない。全日本での優勝を目指して、今日のこの試合のために頑張ってきたトップ アスリートたち。けれど、てっぺんに立てるのは1人だけ。目指したのがトップであるからこそ、流せる涙。

カッシュを愛する多くの人が、自分にできるものを提供し、素晴らしい舞台を作り、てっぺんを目指すアスリートたちが、その舞台の上で最高のパフォーマンスを発揮した。そんな大会だった。

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