Archive for 4 月 9th, 2011

エンタメ × 外メシ = お気楽の日々『国民の映画』『フェルメール“地理学者”』

Film der NationKOKUMIN NO EIGA本を元気にするには自粛ではなく、応援消費。計画停電ではなく節電。ただ縮むだけではなく、経済が回るように生活しようという動きがようやくでてきた。お気楽夫婦も外食の頻度を一段と増やし、スポーツクラブや整体ボクササイズに通い続け、芝居や美術展やお花見に行き、家では節電に努める日々。そんなある日、自らの生誕50周年を祝って大感謝祭を開催中の三谷幸喜の芝居を観た。パルコ・プロデュースによる書き下ろし新作公演の第1弾『国民の映画』だ。主人公はナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルス。プロパガンダの天才と言われたゲッベルスは映画作品を国民の啓蒙のためにランク付けを行い、その最高評価となるものを「国民の映画」と格付けした。そんな国民の映画を製作しようとするゲッベルスと映画人たちが丁寧に描かれる。

BeerserverTortilla真で見る限りゲッベルスにそっくりの小日向文世が、例の甲高い声でナチの宣伝相を熱演。夢の遊眠社出身の段田安則、遊◎機械/全自動シアター主宰だった白井晃、風間杜夫など芸達者の俳優たちが脇を固める。なかでもゲッベルスの従僕を演じた小林隆の抑制の利いた演技が素晴らしい。「やっぱり三谷幸喜はやるときはやるよねぇ♬」観終えた妻も絶賛。「彼の欠点は出たがりのことと、チケットがなかなか取れないことだよねぇ」と続ける妻の言い分もごもっとも。いつものように公演のチラシにはヒッチコック監督のように隠れ三谷幸喜が登場。生誕50周年第1作の『ろくでなし啄木』はなんとか観ることはできたが、それ以前の三谷作品のチケットは連戦連敗だった。「次の公演は取れるかなぁ」早くも次の作品の心配をする妻を伴い、ペンギン通りを井の頭通り方面に向う。

AjilloFried Paellaこって、SOMETIMEがあったとこだよね」妻がそう言ったのは国際ビルの地下にあるスペインバル「カサ・デル・ブエノ」の看板。言われてみればこのレンガ造りの入口と地下に下りる階段は遠い記憶にある。お腹が空いていることもあり、他の選択肢を検討する余地もなく迷わず階段を下りる。ここは吉祥寺を中心とした麦グループを率いて、Sometime、Funky、レモンドロップ、MARU、金の猿、などの人気店を展開した故野口伊織氏の店だった…はず。すぐに妻のiPhoneで調べてみると今は鳥良で有名なサムカワフードプランニングのお店。やはり吉祥寺からスタートした飲食店グループ。不思議な縁。カウンタに座り、トルティージャ、マッシュルームのアヒージョ、パエリアのコロッケなどの定番メニューをオーダー。なかなかのお味。スペイン語でやり取りをするスタッフもきびきびとして心地良い。

FermerLES DEUX MAGOTSる週末、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『フェルメール“地理学者”とオランダ・フランドル絵画展』に向った。入館前にカフェ・ドゥ・マゴで腹ごしらえ。テラス席でハムサンドをつまみにビールをぐびり。毎週通い続けているスカッシュのレッスンでたっぷり汗を流した後、乾いた喉にビールがしみ入る。こんな時にはシンプルなバゲット・サンドウィッチも悪くない。ひと心地付いて入館。寡作で知られるフェルメールの作品は1点だけ。それでも左上から光が射す室内の人物画である「地理学者」は、典型的なフェルメールの柔らかな光で包まれる満足の作品。パリのルーヴル美術館にある「天文学者」と対をなす作品だ。閉館間際の慌ただしい時間ながら久しぶりの美術鑑賞。穏やかな気持で渋谷の街に出る。

だん通り、ってことが良いね」妻が呟く。街の灯りは仄暗いけれど、これぐらいの照度が却って心地良い。エアコンの入らない電車の中は肌寒いけれど、コートを羽織れば問題ない。野田秀樹は『AERA』の連載を辞め『南へ』の公演をいち早く再開した。歓送迎会やお花見は中止が相次いでいるけれど、個人や家族単位での客足は戻ってきているらしい。良質のエンタメも、料理も人を豊かにする。元気にする。ふだん通りに、お気楽に。けれど、決して忘れずに。

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