Archive for 1 月 29th, 2012

贈り物の距離感「Gift」

Yumochi草は過ぎたものの、正月気分が残るある日、箱根から小さな箱が届いた。中には温泉街の香りが一緒に詰まった和菓子。箱根湯本にある「湯もち本舗」の菓子詰め合わせ。白玉粉を練り上げた「湯もち」は、しっとり柔らかい。ひと口かじると、中に入った刻み羊羹の柔らかな甘さ、そして柚子の香り。実に上品なお味。箱根八里は馬でも越すが…と歌われる箱根の馬子衆の鈴をかたどったという「八里」は、これまた上品な鈴型の最中。愛らしく食べるのが惜しい。お正月らしい、正しい日本のお菓子の風情。贈ってくれたのはスカッシュ仲間の若手建築家。年末に妻の故郷浜松から送ったミカンのお返しだという。建築家の彼らしい、良いセンスのGift。小さな子供を連れ、家族で過ごした温泉街で選んでくれた風景が浮かび、思わず微笑んでしまう。ごちそうさま、とお礼のメールを送る。

gift人の日も過ぎた頃、年末にワシントンD.C.に旅立った友人からメールが届いた。壮行会の際に皆で贈ったカードへのお礼と、お気楽夫婦が送ったクリスマスカードへのお礼が記されていた。世の中では虚礼廃止と年賀状を止める傾向にある。確かに印刷された型通りの挨拶文だけでは気持は伝わらないかもしれない。けれど、伝えたい気持を1枚のカードに託すことができることもある。カードという形あるものにメッセージを書いて送ることで、伝わることもある。遠く離れてしまった友人は、DCの新居に2枚のカードを飾ってくれたとのこと。壮行会の際に、皆で贈ったカードを喜び、思いが溢れ泣いてしまった彼女。ワシントンのアパートメントで、そのカードを眺めている彼女の姿が思い浮かぶ時、ふぅわりと心が温かくもなり、淋しくもなる。けれど、コミュニケーション能力に長けた彼女のこと、あっという間にDCでも大勢の仲間に恵まれもすることだろう。

LePainPoisson国の新年に当たる春節の頃、お気楽夫婦は友人のパティシエと乾杯をした。松陰神社にある「広東料理Foo」で新年会。絶品の焼き菓子を作る「ル・プティ・ポワソン」のパティシエ「さかなちゃん」は、パン好きの妻のためにパンを焼いてきてくれた。さっそくパンを取り出し「美味しそうっ♫ここですぐに食べたい!」と宣う妻。お返しに当来物のどら焼きをプレゼント。コメ好き、餡子好きのフランス菓子職人の彼女は、お店の繁盛の願掛けとして1年間の「お米断ち」を実行中。お米の誘惑を断ち切る手段のひとつとして、自らパンを焼き食べているとのこと。美味しそうな全粒ライ麦パンは、お米断ちのお裾分け。そんなやり取りを見ていたFooの支配人ネモキチくんの奥様、ホール担当のチエちゃんに彼女をご紹介。「笑顔がステキ♡」「今度ケーキを買いに伺います♫」という彼女たちのやり取りに、ぴんっ!ときた。

モキチくんから勧められた国産ワイン「アルガブランカ」を2本も飲んでご機嫌な上に、「このワインに合うんですよ!」と、おまけで出していただいた烏賊の湯引きを絶賛するさかなちゃん。Fooの料理も、ワインも、とびきり笑顔の接客でネモキチご夫妻が作る店の雰囲気も気に入っていただけたご様子。では、もう1歩踏み込んでおせっかい。お気楽夫婦を通じて、チエちゃんとさかなちゃんはFacebookで繋がれる。2人にそれを伝えると「さっそく探してみます」と声を揃え、その日の内にリクエストをし合った様子。

日後、友人たちと「広東料理Foo」を再訪。オトナのシュークリーム、オトナのチーズケーキ、ちょっとオトナのチーズケーキなど、お気楽夫婦が食べたい、食べて欲しい「ル・プティ・ポワソン」のケーキをチョイスして、お店の皆さんに差し入れ。その夜のFacebookの書き込みで、さかなちゃんとチエちゃんのやり取りを読む。絶品広東料理の接客のプロと、絶品スイーツの職人、プロ同士が繋がった。小さな贈り物で2人の距離が一気に縮まった。思わず微笑むお気楽夫婦。

Giftということばは、「天から与えられたもの」「才能」という意味がある。Giftを持った友人たちと、Giftで距離を縮めることができる。けれど、Giftを贈るには相手との距離も測る必要がある。それだけに難しく、楽しい行為でもある。「あなたは誰かにプレゼントするの好きだもんね」と妻。Giftのない私が、できるのはせいぜいGiftを贈ることだけ。

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