そうだ、京都行こう「オトナの修学旅行」
2013年 3 月23日(土)
ある週末、お気楽夫婦は京都にいた。それぞれの仕事を終え、ホテルにチェックイン。翌日に備え夕食を軽く済ませようと街に出る。思い付いた店は「京都 権太呂 本店」。蕎麦好きの私、うどん好きの妻。観光客モードで出かけるにはぴったりの店だ。四条通から麩屋町通りを上る。老舗の風格漂う堂々の店構え。京風うどんすきで有名な権太呂。とは言え、小食の2人には多過ぎるためコース料理は避ける。まずは焼酎のそば湯割。酒のアテに「にしん棒炊き」「そば実豆腐」「つくね芋磯辺揚げ」「生麩田楽」。焼酎をちびちびと舐めながら、好物のにしんの棒炊きをつまむ。ん、しみじみ旨い。
「そば十二節」という月替メニューがある権太呂。睦月「蛤そば」、皐月「茶きり」、葉月「大文字そば」、師走「討入そば」。京の風情溢れるメニューを眺めながら京都のそれぞれの季節を思う。そして、弥生「白魚そば」、名物「けいらん」うどんをチョイス。白魚の磯辺揚げと菜花、柔らかな出汁が優しい「白魚そば」。生姜の利いた卵餡かけがたっぷりの「けいらんうどん」は身体も温まるなかなかのお味。店を出て旅情溢れる麩屋町通りをのんびり歩く。「俵屋」「炭屋」「柊屋」の老舗高級旅館の御三家が軒を連ねる麩屋町通りは、町家を改装したこぢゃれた店も多く、散策が楽しい街並だ。
翌日、京の街をそぞろ歩く。まずは円山公園へ。枝垂桜の蕾はまだ固いけれど、陽気に誘われた人々がのんびりベンチに腰を下ろす。結婚記念だろうか、カメラマン付きで撮影をしているカップルがいたり、知恩院の三門の下では観光客の女の子たちをモデルにスケッチをしているおじさんがいたり。気持が柔らかくなっていく。観光客モード全開。寺社仏閣にさほど興味がないけれど、人のいる風景に心惹かれる。清水に向って歩いていると、公園で見かけた振袖と羽織袴の微笑ましいカップル。カメラマンにお願いして一緒に写真に収まる。仲良くね、などと余計なお世話のメッセージを残して去る2人。
三年坂に差し掛かると驚くほどの人出。休日の渋谷のような賑わい。レンタルだろうか、慣れない着物を着た外国人観光客も目立つ。海外からの観光客もずいぶん戻ってきたようだ。修学旅行の生徒たちが歓声を上げながら通り過ぎて行く。ふ〜っと何十年も前の自らの修学旅行を思い出す。もしかしたらそれ以来の三年坂。あの頃はまだ京都市内を縦横に市電が走っていたんだよなぁ…などと遠い目になる。そうだ、これはオトナの修学旅行。急にそう思い立ち、テンションが上がる。自分向けにお土産などを選んでみる。ビールに合いそうな丹波黒豆の揚げ菓子。オトナの修学旅行らしい一品。
「やっぱり京都は良い街だね」東京に戻る新幹線の中で妻が呟く。そうだ、京都行こう。そのフレーズに誘われながらも何年も訪ねることのなかった街。途中下車して立ち寄った1日だけの旅だったけれど、久しぶりに京の香りを味わった。