サイゴンの昼「東洋のパリ」

NotreDamePostOffice洋のパリと呼ばれるサイゴン(ホーチミンシティ)。古代より中国などの統治下にあり、民族の独立に向けた何度もの戦争の歴史を持つヴェトナム。中でも1847年に侵略を開始し、1862年に第1次サイゴン条約により南部を占領したフランスの影響は大きい。サイゴンに総督府を置いたナポレオン3世は、パリを大改造したのと同様にサイゴンの街並を一新した。緑豊かな大通り、市庁舎、市民劇場、ノートルダム寺院、中央郵便局、ホテルなど、今も残る美しいコロニアル(植民地様式)建築の洋館が街を彩る。

GrandHotelHoしい街並だけではなく、食文化にもフランス統治時代の名残がある。例えばカフェ。街のあちこちにフランス風の、あるいは緑に被われたテラスがある、こぢゃれたカフェが点在する。街角には子供用かと思われる低い椅子に座り、ヴェトナム風のやたらと甘いコーヒーや清涼飲料水を飲む人々が溢れる。あるいはバゲットサンド。フランスから伝わったパン食文化が、美味しいパン作りの技術を残し、ヴェトナム風のバゲットサンド(バインミー)という形で定着した。軽めのバゲットが多彩な具にぴったりの美味しさ。

StreetCafeMarket2ちろんヴェトナムならではの風景がある。例えばベンタイン市場。街の中央に10,000㎡の敷地、大小2,000軒以上の店が集まる。観光客向けの雑貨、おみやげ、地元の人々向けの生鮮食品、果物、食品などの店が傍目には混沌としながらも、ジャンル別、エリア別に集積している。市場にはドリアンなどの果物や干物の匂いが溢れ、狭い通路には売り子と客が溢れる。エネルギッシュで猥雑で、きれいに並べられた商品は器用で几帳面なヴェトナムらしい風景。この街は混沌と整然が矛盾なく成立している。

BikeCycloしてバイク。街の全ての通りがバイクが溢れる川となる。それも決して上流から下流にだけ流れるだけとは限らない。逆走するバイクあり、信号を無視することもある。その頼りの信号が少ない。慣れない歩行者はその川を渡るために神経を集中する必要がある。交差点で左折する(日本で言えば右折)際に、中央分離帯で待つ。走行する車の間をバイクが縫うように疾走する。3人乗り、4人乗りはどうやらフツーなことらしい。事故が起こらないことが不思議で仕方のない、刺激的でスリリングな光景が日常にある。

Pool333&Poolくつものバイクの川を渡り、地元スーパーでおみやげ等の買物をし、ヘトヘトになった身体はホテルでリフレッシュ。コロニアル風の建築様式のパークハイアットサイゴンの中庭には、こぢんまりとしたプールがある。お気楽夫婦の客室はプールへ直接アクセスできるテラス付きの部屋。買込んだバゲットサンドとローカルビールでのんびりランチ…とはいかず、余りの暑さに食べ終えるとすぐにプールで身体を冷やす。そしてエアコンの効いた室内に逃避。ヴァカンス用に持参した本を読みながら午後を過ごす。

い街だよね」歩き疲れ、暑さにダメージを受けた妻が息を吹き返す。美味しいパンを食べさえすれば元気になる彼女にとって、この街は暮しやすいかもしれない。ドイモイ(刷新)政策開始から30年弱、WTO加盟からは僅かに7年。まだまだ大きく変貌する都市のエネルギーを肌で感じ、再訪の日を楽しみにしつつ(帰りたくない)帰路に付いた夏の日だった。

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