待望の鮎尽くし「用賀 本城」
2013年 9 月23日(月)
独特の香りを持つことから「香魚」とも呼ばれる鮎は、初夏から夏が旬。秋にも落ち鮎、子持ち鮎が楽しめる。けれど、清涼感がある季節の食材として、やはり鮎料理を楽しむには夏が良い。お気楽夫婦は大の鮎好き。初夏の稚鮎の天ぷらに始まり、年に何度も鮎を味わう。特に今年は行きつけのビストロ「トロワキャール」で鮎のコンフィをいただいたり、いくつかの店で鮎の一夜干しを食べ比べたり、鮎を堪能した年だった。そんな2人は、いつか新橋の「鮎正」で鮎尽くしの料理を食べることが夢だった。
盛夏の頃、「用賀 本城」を訪ねた2人に幸運が舞い込んだ。店主の本城さんと鮎の話題になり、「鮎尽くし料理ならウチでやりましょか」という願ってもない展開になったのだ。小躍りした2人。さっそく晩夏にいつもの席を予約。先付けは雲丹、生湯葉、茄子を使った小鉢。もちろん美味しいが今日の主役は鮎。続いて登場したのは一夜干しの鮎とウルカ。待ってました!の美味しさ。この一皿だけで何杯も酒が飲める。ちびちびと大切に味わう。逸る気持を抑えつつ松茸を味わうが、次の鮎料理に気持が移る。
本城さんが跳ねる活き鮎を掴み損ねる演出?を経て、鮎の背越しと刺身の登場。骨ごと味わう背越し、そぎ切りの刺身とどちらもぷりぷりと文句なく美味しい。次はお約束の塩焼き。小振りの鮎を頭から丸かじりで頬張る。絶妙な塩加減の鮎の香りが鼻孔をくすぐる。肚の苦みと繊細な身、香ばしい皮のバランスを堪能。あぁ、日本の夏だなぁと震える美味しさ。そして天ぷら。刺身で使わなかった頭や尾までカリッと揚げて盛付けられている。王道の塩焼きと甲乙つけがたい鮎料理の定番。淡白な鮎の味に奥行きを付ける味。
「京都出てから初めて作りましたわぁ」本城さんが笑顔で鮎尽くし料理の裏話を披露してくれる。そしてこれでもか!と鮎の煮浸し。仄かに梅の香りが漂う、これまた絶品の一皿。ほろほろと口の中で蕩けるダシの染み込んだ鮎、旨いに決まってる。そしてシメは鮎メシ。土鍋で炊いた上品な味付けのご飯の中に、焼き鮎の味と香りが絶妙なハーモニー。ほとんど満腹のはずなのに、ついお代わりを差し出す始末。京漬物をかじりながら、その日の鮎料理たちの味を噛みしめ、反芻する。実に幸福な時間だった。
その日の心残りは1点だけ。急遽決めた日程だったため、スケジュールが合わず仲間たちと一緒に伺うことができなかったこと。ダメ元で声を掛けた友人たちはいずれも「えぇ〜!鮎ぅ〜食べたい♡」「えっ!行きたい!」と、皆身悶える。予想以上の反応。オトナの舌には鮎が合うらしい。鮎好きとしては嬉しい誤算。来年の鮎の季節に、ぜひご一緒に♬
■「食いしん坊夫婦の御用達」 *「用賀 本城」詳細データ、過去の訪問記