おいっしょ!おいっしょ♬「浜松まつり2014」
2014年 5 月11日(日)
連休の真っただ中の浜松駅。出迎えの人で溢れるコンコース。いつもなら迎えられる側のお気楽夫婦。その日は新幹線の改札口から出てくる友人を待つ。Wellcome to HAMAMATSU!遠路東京からやって来てくれた友人に、2日間いかに楽しんでもらおうか。気分はすっかり地元浜松人。小手調べに浜松餃子を食べ、昼ビーで乾杯した後に向かったのは「浜松まつり」の凧揚げ会場。遠州灘を臨む中田島砂丘に設けられた巨大な会場「凧場」には、晴れ上がった空に無数の凧が浮かんでいる。子供の誕生を祝い、健やかに育つようにと凧を揚げたところから始った浜松まつりのメインイベントだ。
連休中の3日間、浜松の街は祭一色となる。法被姿で街を歩く人がいるのはもちろん、法被姿で接客する店員さんがいたりもする。「こんな大勢の法被の人たちを見たことない!」と友人が言うように、凧揚げ会場にも大勢の法被姿。参加町数は170余り。町ごとの凧じるしがあり、法被の襟には町(組)名、背面に凧じるしの祭装束。この祭は神社の神事などではなく、住民参加の市民祭。初子の名前が入った凧を揚げて誕生を祝い、凧じるしが入った凧を揚げて合戦を行い糸を切り合う。おいっしょ、おいっしょというかけ声とラッパの音が響く。爽快。広い空に浮かぶ凧を眺め、清々しい気持になる。
街の中心部に戻ると、パレードや御殿屋台曳き回しの準備が始まっていた。日中に凧を揚げた若衆たちを迎えるために始ったという屋台の曳き回し。年を経るごとに豪華になり、“御殿”屋台と呼ばれるようになったらしい。屋台の中では法被姿の女の子たちが笛を吹き、太鼓を叩く。ベテラン女性が三味を弾く。凧揚げのおいっしょ!おいっしょ!という威勢の良いかけ声とラッパの音とは対照的に、優雅でゆったりのんびりした音色。日が暮れ掛ると御殿屋台に明かりが灯る。夕闇に輝く金色の屋台。「うわぁ〜っ」と友人が思わず息をのむ。凧揚げとはまた違ったまつりの魅力。夜のまつりの始まりだ。
初子を祝う家では、初凧揚げの労をねぎらいお酒などを振る舞う。その際に列を作ってすり足で練り歩く、“練り”もまつりの名物。参加全町が参加する合同練りと呼ばれる練りから始まり、御殿屋台が光り輝く頃に町毎に激練りと呼ばれる行列が続き、練り本来の初子の祝いのために各町毎へ帰って行く。その日の夕食を終え、店の前の小さな通りに出ると、ちょうど斜向いの家の初子を祝う練りの衆が集まっていた。おいっしょ、おいっしょ♬若衆の提灯の列が家の前を周回する。おいっしょ♫おいっしょ♪おいっしょ♬なんだか嬉しくなってくる。思わず涙が出そうになる。おいっしょ♩おいっしょ♫
「浜松楽しい〜っ」普段は妻と同様に感情体温が低めの友人が、facebookにそんな熱めのコメントを書き込む。嬉しいね。送り届けたホテルの前で、板さんたちを巻き込んだ激練りに出会った直後のことだった。おいっしょ♫おいっしょ…。祭の日、浜松の夜がこうして更けて行く。