酒と芝居の日々「加藤健一、三谷幸喜、わかぎゑふ」
2014年 11 月30日(日)
某月某日。新宿の紀伊国屋サザンシアターにて加藤健一事務所vol.91「ブロードウェイから45秒」を観る。久しぶりのニール・サイモン作品。相変わらず軽妙なコメディはカトケンにぴったり。翻訳劇の違和感もなぜか気にならないのは、長年彼の舞台を観続けて来た贔屓目だけではなく、原作の世界をカトケンワールドに無理なく置き換え、昇華しているからだろうと毎回思う。舞台を中心に活動している彼の公演は、あと数年でvol.100を迎えることになる。今から楽しみだ。芝居の前に高島屋のデパ地下のイートイン「PECK」で腹ごしらえ。コスパ良し♬
某月某日。パルコ劇場にて三谷幸喜作・演出「紫式部ダイアリー」を観る。長澤まさみと斉藤由貴との2人芝居。長澤まさみの紫式部と斉藤由貴演じる清少納言というライバル同士が、平安時代を現在に置き換えた設定で、ことばのバトルを繰り広げる。文壇や出版業界における自分と相手のポジションを嘆き、若さを羨み、本音を漏らし、プライドをさらけ出す。期待を裏切らない三谷作品のクオリティの高さに舌を巻くが、それ以上に長澤まさみの紫式部が(期待していなかったからなおさら)良い。実に上手い。舞台に映える美貌とスタイルの良さに魅せられる。観劇後に下北沢の「Aサインバー」で乾杯。
某月某日。シモキタのザ・スズナリにて、玉造小劇店配給芝居vol.15 ラックシステム「おもてなし」を観る。わかぎゑふ作・演出の「お」シーリズ芝居。大正時代の大阪、船場を舞台にしたベタな大阪弁芝居。主演のみやなおこのキャラクター設定と演技に、思わず「ええ女やぁ」と大阪弁で呟く。実に巧くて良い脚本。笑いあり、涙ありの傑作。これまで「お正月」「お祝い」「お見合い」など、ほぼ全作品を観てきた。今回の公演も平日の入りが厳しいとの終演後のトークに、なんでこんな良い芝居が、こんな小さな小屋も満席にできんのやろかとインチキ大阪弁で嘆く。
芝居がはねた後は、神泉の「遠藤利三郎商店」へ。通い出して半年余り、月に1回は訪れる最近ダントツのお気に入りの店。ちょうど開店1周年とのことで、泡を1人1杯サービスしていただく。妻の分と泡せて2杯いただける私はニンマリと同行の友人夫妻と乾杯。こぢんまりとして落着いた店の雰囲気、料理、スタッフのサービス、どれもお気楽夫婦にとってはど真ん中の直球ストライク。中でもいつも可愛い笑顔のミカちゃんが好印象だった。ところが彼女はイタリアにワイン修行の旅に出てしまうとのこと。残念。ということで、いつかまたどこかの店で会いましょうと記念撮影。
「今日のお芝居、今までで一番良かったぁ。お店も気に入っちゃった」と、友人(妻)の嬉しいコメント。一緒に観た芝居が良かったと言ってもらえたり、おススメの店を気に入っていただくのが何よりも嬉しい幹事体質。感情体温が低い妻の「良いんじゃない」という反応だけではなく、たまに友人たちの高めのテンションに接することでバランスを取ることも必要。…こうしてようやく落着いて芝居を観て、余韻の中で美味しい酒を飲む日々が帰ってきた。「年末まで芝居はあと2本あるからね!」と妻が息巻く。テンションは低くても意気は盛ん。