2度あることは3度も、4度も。「生ガキのノロい」

Huitregeleeめて食べたのは19歳、学生時代。パリに短期留学していた頃。学校には(1日だけしか)行かず、美術館を巡り、街をぶらつき、カフェに、公園に、映画館に溜まっていた。そんなある日、パリで知り合った女子大生(日本人)と、一緒にブルターニュに牡蛎を食べに行こう!モンサンミッシェルへ行こう!ということになった。その旅の途中、サン-マロ(Saint-Malo)という港町で待望の生ガキとご対面。Les fruits de la Mer(海の幸の盛合せ)という大きな三段の銀皿に乗った新鮮な生ガキ、ムール貝、エビなどをたっぷりと堪能した。そして、翌朝。酷い吐き気、激しい下痢に襲われ、目的地には行けず、パリに強制送還。数日間寝込んだ。生モノ(笑)の食べ過ぎだろうと思った。

AspergeCoquille Saint-Jacques2度目は新宿の居酒屋。友人たちと一緒に生ガキをたっぷり食べ、ズブロッカをあおり、大騒ぎ。翌日、下痢と腹痛、嘔吐で会社を休んだ。飲み過ぎかなと思った。3度目は広島への出張。やっぱり広島に来たら生ガキでしょ!と、同僚と一緒に地元の名店で生ガキ三昧。翌日、帰りの新幹線の指定席はムダになり、ずっとトイレに籠り5時間の移動。そして2日間会社を休んで、ようやく気付いた。私は生ガキに当たるんだ、と。これは困った。貝殻の上で艶かしく横たわるミルク色の瑞々しい姿。ふふふ、愛いヤツよのぉ〜♡と言いながら、チュルッと一息でいただく。芳醇な海の香りと、濃厚な潮の実りを味わう。至福の時。そう、私は生ガキが大好きなのだ。

TroisBlanc4度目は、仕事を辞めた後と決めていた。NYCのオイスターバーにでも行って、思う存分生ガキを食べてやる!と妄想していた。3度の経験で、さすがに私も学習した。生がダメなら、焼き牡蛎、蒸し牡蛎は、どの程度火を通してあれば良いのか、実戦で経験し、克服して来た。その経緯を良く知る妻は、生に近い蒸し牡蛎を美味しそうに頬張り、翌日も元気な私に感心していた。そんなある日、甥の大学卒業をお祝いをしようと、馴染みのビストロに向かった。この季節のお約束のホワイトアスパラはホタテとサラダ仕立てに、私と甥の牡蛎は蒸して、妻は生で、どちらも美味しくいただいた。相変わらずの絶品オードブル盛合せも、ワカモノらしく甥の選んだステック&フリットも。

SteakSusumu4度めは、その翌日唐突にやって来た。いつも通りに朝食を取り、妻のサラダランチ弁当を作り、トイレに入った時に異変は起こった。…止まらない。そして腹痛。さらに遠いところで吐き気。あぁ、久しぶりのこの不快な組合せ、違和感トリオは牡蛎だなと直感した。けれども昨夜の牡蛎は火を通していたはず。妻にそう告げると「あぁ、やっぱり。昨日、このジュレ大丈夫かなぁって思ったんだよね」と事も無げに宣う。ん?そう言えば、昨夜の牡蛎の上に美味しそうに、それもたっぷり乗っていたのは、“生”牡蛎のエキスをジュレしたもの。やられた!それにしても、なぜその時に言わずに、今言うかなぁ〜。もちろん、生ガキを食べた妻はぴんぴん元気。

期休暇ならぬ、その日は牡蛎休暇。引退後に取っておいたはずの4度目の生ガキが、思いがけず早めにやって来てしまった。何度も何度もトイレに通う。何も食べることができず、水分だけを補給する。辛い。けれども、本体には火を通してあり、生はジュレだけだったこともあり、これまでの中では最も軽症。夜には僅かに食欲も回復した。ところで、4度も私を苦しめた“生牡蛎に当たる”というのは、どういうことなのだろうと、初めて調べてみた。すると、原因はノロウイルスらしい。海中のノロを吸収し溜め込む傾向にある貝類の中で、生のまま食すことが多い牡蛎が、“当たる”ということらしい。そして、同じ様に摂取しても(妻のように)発症しないこともあるらしい。(そう言えば、大勢で食べに行った中華料理屋のシジミの紹興酒漬けで、ほぼ全員が食当たりしたことがあったと思い出した。あれもノロだったのかと気付き、納得。今さら遅いけど)恐るべし、生ガキのノロい。

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