調布市民の秘密「野川桜ライトアップ」
2015年 4 月05日(日)
お気楽夫婦が住む世田谷区の北西部は、調布市に隣接している。最寄り駅の一駅となりは調布市。毎週通っている世田谷のホームコート以外に、月に数回通うスカッシュコートがあるのも調布のスポーツクラブ。そこで知り合った仲間から、ある情報が入った。毎年桜が満開の頃、一夜限りの大イベントがあるという。日程は直前に決まり、密かに発表されるだけなのに、あっという間に調布市民のほとんどが知ることになるらしい。2015年の日程発表は、開催日のなんと3日前。調布市民ではない2人も、友人たちのfacebookでの書込みで情報を知った。「行けるかなぁ」「行きたい」「今年は行こうかな」という調布市民のやり取りに、「行ってみたい!」と参加表明。すると「是非来てください!」と複数の市民からお誘いをいただいた。うわ〜ぃ。
その調布市民の秘密のイベントとは、調布市を流れる多摩川の支流、野川沿いに1km近く続く桜並木のライトアップだ。実は調布市は映画の街。今でも日活、角川大映などの撮影所やスタジオがあり、美術、映像などの関連企業が集まっている。その中のひとつ、アークシステムという照明機器の会社が、野川沿いに建っていた社屋前の桜の木をライトアップしたことが評判になり、会社移転後もその規模を拡大しながら毎年継続し、今年で12回目の開催になるという。イベント当日、最寄り駅の近くで待ち合わせ。普段は静かな小さな駅も大勢の人。会場へと向かう人の流れに沿って夜道を歩く。駅から10分程歩くと、橋の上に大勢の人。どうやらスタート地点らしい。
「うわぁ〜っ!凄ぉいっ!」感情を余り表に出さない妻が驚きの声を上げる。闇夜に浮かぶ夢のようなサクラ色の景色。橋上から眺めると、遥か上流まで延々と両岸に桜並木が続き、岸辺のサクラと、川面に映るサクラと、そして漆黒の背景が幻想的な絵となっている。さすがプロの照明の技。実に見事だ。これは期待以上に凄いねと調布市民に伝えると、「凄いでしょう♬」と嬉しそうで誇らしげな笑顔が返って来る。確かにこれは市民自慢のイベントだ。橋から上流に一方通行でサクラ色の下を歩く。全市民が観に来ているのではないかという人混み。桜の樹によって表情が変わる。月が浮かぶ空とのコントラストを楽しみ、夢の中を歩いているような、浮き足立つ気分でそぞろ歩く。
「最初はグー…」夢の中から現実に戻る。花見客で混雑する地元の人気店「大漁旗」でオーダーした刺身盛りを巡って、ちょっとしたゲームを始める子供のようなオトナたち。6人で3人前の刺身盛りだから、全員が全種類は食べられない。だったら好きな魚を一斉に指差して、ダブったらジャンケンで勝者が食べるというルール。分厚く切られた脂の乗ったマグロに指名が集中。涙をのむ酒好き奥さま。競合のなかった数の子をぽりぽりと齧りながらジャンケンの行方を笑って眺める。お手頃な価格で新鮮でボリュームたっぷりの料理が(残念ながら満席で売切れが多かったが)食べられる、人気の理由も納得の穴場の店だ。なんだか楽しいぞ、調布。
「今日はIGAさんたちと飲めて良かった♬」コートサイドでお見かけするものの、一緒に飲むのは初めてというスカッシュ仲間から嬉しいコメント。「来年も観に来てまた飲みましょう!」良いですね、ぜひ!と返す。なんだか調布市民の秘密を共有し、仲間に入れてもらった気分。一夜限りの幻夢のようなイベント。参加できるのは(急なスケジュール調整が可能な)地元民だけ。調布市民のお墨付きを頂き、参加資格(?)も手に入れた。来春のサクラの頃にまた一緒に訪ねよう。