Archive for 5 月 9th, 2015

爛漫の春を味わう「割烹 弁いち」浜松

Ben1Ben2の故郷浜松を訪ねる度に、食べに行きたい店がある。帰省のスケジュールを決めると、真っ先に予約の電話を入れるのだから、正確に言えば、食べに“行っている”店がある、というのが正しい。その店は、創業90年を超えた老舗「割烹 弁いち」。2008年3月に初めて訪問して以来、春と秋の連休、そして冬、年に1〜3回の頻度で伺っている。さらに義父母が、(婿殿に気を遣い)毎年弁いちさんにおせち料理をお願いしてくれるから、年に4度は味わうことができる。この店のご亭主は、季節毎に食材と生産地に拘り抜き、全国各地から旬のものを取り寄せる。この春、味わったのは山野の美食材だった。

Ben3Ben4付けは、ホタルイカ、コゴミのゴマ和え、ウドとウルイの酢味噌和えなど、春の香りの盛合せ。まずは、ガージェリービールをぐびり。この店は、食材はもちろんのことながら、酒に拘りがある。酒蔵、杜氏、そしてグラス。だから、お気楽な2人は、この店に来たら、只々ご亭主に身を委ねるだけ。料理も酒も全てお任せ。季節の料理を味わい、料理に寄り添う酒に納得し、その酒にぴったりのグラスを楽しむ。料理は直球。その季節の最高の食材を惜しみなく使い、その本来の味わいを損なうことなく、最高の状態で供する。コシアブラとタラの芽の天ぷらも、まさしく食材自身が泣いて喜ぶ味。

Ben5Ben6初の1杯は、奈良の蔵本「風の森純米大吟醸しぼり華」山田錦45%精米のフレッシュな味わい。「どれどれ」飲めない妻が、味見だけとグラスに口を付け「ん、んまい」と唸る。椀物は美しい木の芽が添えられた旬のハマグリ。直球で、かつ豪速球。しみじみ美味しい。ここで2杯目の酒。山忠本家酒造「義侠 純米大吟醸」。向付のねっとり美味しい刺身にぴったりの、力強さを持った酒。「どなたにもおススメできるものではないので、ご提案なんですが、焼き物で珍しいものはどうですか」とご亭主から前置かれて出てきたのは、蝦夷鹿の内子の焼き物。柔らかさが独特の歯応え。まぁ、旨し。

Ben7Ben8く酒は、「新政 頒布会」の2種。2015年4月の「改良信交」「美山錦」の飲み比べ。前者は「柔らかくみずみずしいかたち」後者は「凛として奥深いかたち」だそうだが(ラベルに記載)、「そろそろ酔っぱらって、どれも美味しいだけでしょ」と妻の指摘の通り、ほろ酔い加減。ふふふ。実は、美味しいだけじゃなく、楽しいのさ!と独り言つ。ご亭主とカウンタ越しに語りながら、春を味わい、美味しい酒を愉しむ。至福のひと時。と思っていたところに、その日の掉尾を飾る一品、炊きたてご飯の上にワラビ味噌、フキノトウの味噌汁。香り高き絶品。春よ春。爛漫の春を口一杯に頬張り、満足の笑み。

日もゼータクだったね」と妻も笑顔。祭りのお囃子を遠くに聞きながら、2人で夜の街をそぞろ歩く。祭り装束が繰り出している街を、彼らと同じく浮かれ気分で。とは言え、ますます小食になってしまった義父母と一緒に味わうことができなかったことが心残り。よしっ、秋には「弁いち」のランチに誘い出そう。年末にはおせち料理を頼んでもらい、思いっきり喜ぼう。健気な婿殿として、妻の親孝行に精一杯協力しよう。妻の故郷で過ごす春は、そんな思いと共に過ぎて行く。

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