お気楽な日々「リタイア・モラトリアム」

59−159−2い年の友人から定年退職の挨拶状が届いた。驚いた。この正月に還暦を祝う同窓会に参加し、意識したはずだった。もうすぐ60歳、還暦を迎え、定年退職の年齢になるのだと。ところが、定年退職という概念のない働き方をしていることもあり、全く自覚がない。幸福なことではある。しかし、現在のライフスタイルを止め、リタイア後の生活に移行する準備ができていない。友人のハガキには、畑違いの新たな企業で勤務すると記載されていた。我が世代は、年金生活に入りたくても、年金が支給されるのはまだ数年先。それまでは働くぞ!という明確な意思が行間に記されていた。そうだよなぁ。などと思いながらも、現実逃避ではないけれど、友人に借りた“飲食系”の小説を読み耽る。その友人との間で、“食”に関する作品がちょっとしたブームなのだ。

59−359−4三湊(とさ みなと)作『ちどり亭にようこそ』は、京都を舞台にした弁当屋の物語。やや現実離れした設定や登場人物造形ながら、物語世界にすっと引き込まれてしまう。「草木萌動(そうもくめばえいずる」とか「菖蒲華(あやめはなさく)」と七十二候を各章のタイトルに入れ、京都の季節感と物語を重ね、「お弁当練習帳」という記載されたレシピと共に魅力的な描写が満載。成田名璃子作『東京すみっこごはん』も同様に、ある登場人物の亡母が残したレシピノートが小道具になっている。そして、これまた非現実的な設定ながら、あって欲しい空間として「共同台所」が描かれる。どちらの作品も料理の描写が食欲をそそる、温かな物語が綴られる。どちらも食べに行きたくなる店なのだ。食べに行きたい店と言えば、ある若いスカッシュ仲間と重なることが多い。

59−559−6否両論に行きましょう!私が頑張って予約します」と言いながら、毎月1日だという予約(翌月以降の!)開始日にすっかり電話を忘れてしまった若いスカッシュ仲間。代わりに一緒に訪問したのは「アバスク」というバスク料理の店。料理もワインもご機嫌の味。こぢんまりとした店内は居心地が良い。話題が映画に及び、お気楽妻が行かない作品は独りで観に行くのだと言うと、「じゃあ、一緒に行きましょう!」とおやぢ殺しの発言。ふふ、俺に社交辞令は通じないぜっ!とは言え、行きたい映画はもちろん妻と。『カフェ・ソサエティ』は夫婦50歳割引で。夫婦の証明が必要なく、どちらかが50歳以上であれば良いという実に嬉しい制度だけど、1人で正規料金で観ると損をした気分になるという弊害もある。そこで、一緒に行こう発言に繋がる、という訳だ。

59−759−8ッセージ』は、妻が残業の日に、2人で観て貯めたポイントで単独鑑賞。哲学的SF映画が好きな私。あぁ、これは独りで観て正解だったなぁと頷く。そしてふと、来年になったらシニア料金で観られることに気づく。その日が楽しみだ。ある週末、妻は休日出勤。そこで、「マリクレールフェス」というイベント開催中の自由が丘へ出かける。晴天に恵まれ、通りのワゴンセールも、緑道の飲食出店も、まずまずの人出。この街に関わる者として、ホッとする。誰もいないオフィスで残務を処理しながら、昼食を取る。出店で買った焼きそばの隣、ビールに見える飲料は、もちろんビールだ。それぐらいのことは(私が許せば)許される。来年の今頃は60歳になっている。けれど、来年もこのイベントには参加しているのだろうな、と生ビールをぐびり。んまい。

カッシュを通じて知り合った仲間たちは、仕事も、年齢も、性別も関係なく、ただスカッシュが好きだという共通項で繋がっている。シンプルな関係。そこに、好きな小説や映画、美味しい料理、楽しい酒、というポジティブなキーワードが加われば、好きなモノでしか関わらないのだから、無敵。そんな友人たちに囲まれている生活。だからこそ、このままのライフスタイルが続くと思ってしまう。リタイアせずに、リタイア猶予期間として楽しんでしまう。良いのか、俺。「良いんじゃない、できる間はずっとそれで」お気楽妻のことばは心強く…、「だって、私は仕事は辞めても、ずっとこの生活続けるし」…力強い。

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