名残と盛りを味わって「ズワイ、山菜、サクラエビ」

SPRING1生、三月、雛祭り。冬から春に季節が移る、いつもなら1年で最も美しい季節、のはずだった。ところが、2020年の3月は新型コロナウイルスの影響で、すっかり鬱々とした1ヶ月になってしまった。それでも山菜の天ぷらを食べなければ春が来ない!と言う妻の主張で新宿の京王プラザホテルに向かった。ロビーに入った途端に春色に溢れる空間に包まれ、笑顔が溢れた。段飾りの雛人形と吊り飾りが2人を迎えてくれたのだ。

SPRING2約して伺った「天婦羅しゅん」は、京王プラザホテルの本館7階。残念ながらカウンタは満席とのことでテーブル席へ。それでもカウンタ10席、テーブル10席だけの小さな店だから、揚げ場のほぼ目の前で揚げたてが食べられる。迷わず「お好みでお願いします♬」と笑顔でオーダーする妻。最初は、こごみ、楤の芽、蕗の薹の3品。「うわぁ。春の香りだぁ」と、うっとりと蕗の薹を頬張る妻。確かに香りを味わう一品だ。

SPRING4いて筍、そして春の旬に入ったばかりのサクラエビ、サヨリと続く。サクラエビは浜松出身である妻の自慢の静岡名産。「あれ?まだ早いんじゃないかな」と言いながらも美味しく頂く。*調べてみると2020年春の漁は4月5日からとのこと。どうやら駿河湾産ではない模様。「寿司では頂くけど、天ぷらは珍しいね」とサヨリをぱくり。ん、んまい。この店の天ぷらはさっくりと軽やかな揚げ方。お気楽夫婦の好みにぴったり。

SPRING3味しそうな珍しい揚げダネがあるね、この店」と選んだのは海老真丈の大葉包み揚げ。ぷっくりとした海老のすり身の味と香りと大葉の香りが絶妙に合いまって、天ぷらの衣で一体となる。これは旨い!塩でも天つゆでも、それぞれどちらでも美味しい。そして締めはデザート代わりに、どの店でも最後にお願いする丸十(さつまいも)をいただき、満足満腹。「京プラ、良いね。正直ちょっと舐めてた」と妻の評価も急上昇。

SPRING5シーズン最後の越前がに。さらばズワイガニ!」と、馴染みの鮨屋のインスタに見目麗しいズワイガニの写真がアップされた。ん?最後?最初(走り)と最後(名残)に(ついでに旬にも、…とするといつもと言うことか!)弱い典型的な日本人であるお気楽夫婦が、そんな書き込みに食い付いた。さっそく電話をすると残念ながら希望の日程では予約が取れず、何とか他のスケジュールを変更して席を押さえる。名残が優先。

SPRING6後には弱いよ、釣られちゃったよと席に着くと、したり顔の大将は「昨日のお客様はほとんどカニでした♬」と微笑む。日本人の弱みを突く良い書き込みだったと褒めると、大将は満面の笑み。そして最初にカニ刺しをちゅるんといただき、甘くて蕩ける!と頷き、焼きガニの香ばしさで目を見張る。蒸したカニは身を解してもらってミソと一緒にぱくり。これを幸福と呼ばずして何を…という味。冷えた日本酒との相性も抜群だ。

SPRING7りは8貫。イカ、鯛の昆布締め、鯵に中トロと、いつものお任せよりも握りの品数は抑えて、カニを味わうコース。「カニもこれぐらいの種類と量がちょうど良いな」と妻。確かにこれでもか!というカニ尽くしは少食の2人には向いていない。名残のカニに限らず、握りを食べる前に何か季節の味をつまみで味わいたいと思いながら、その量に躊躇うことの多い2人。美味しいモノをたっぷり食べるためには強靭な胃袋が必要だ。

SPRING9繁にこの店に来れば良いんじゃない?」お気楽妻が呑気に宣う。確かに、走りのネタも、旬の魚も、名残の食材も、マメに通えば逃さず少量づつ食べられる。今日食べたいモノを全部食べよう!という食べ方をしなくとも済む。してないけど。「他の日はカロリーメイトで良いし」と、極端な妻。数年後?の引退に向けて、手料理と合わせ、そんなメリハリのある食生活の設計も良し。果たして2人の老後の生活はいかに?

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