幸福の到来物「チェーン・クッキング」
2020年 6 月07日(日)
飛騨牛がやって来た。丸い缶に詰められて、6缶セットで。ギフトカタログから選んだ「キッチン飛騨」という飛騨高山の老舗ステーキレストランの「黒毛和牛ビーフシチュー」という美味しい到来物だ。このギフトカタログで商品を選ぶ行為が大好きだ。明からさまに価格はわかってしまうけれど、全国の名産品を自宅に居ながらにして選んで味わうことができる。贈る側が選ぶのではなく、贈られる方が選べる合理性が良い。
大阪からイベリコ豚もやって来た。創業85年のイベリコ豚専門店「スエヒロ家」の生ハム。イベリコ豚専門というのが驚きだが、調べてみると他にも同様にイベリコ豚専門の店が各地にあることを知った。さらにこの店を調べてみると、実店舗は大阪府池田市の石橋商店街にある、何の変哲もない小ぢんまりとした肉屋。きっと私は訪れることがない店だ。それがネットで我が家に生ハムを届ける商売をやっている。凄い時代だ。
生前はきっとお互いに会うこともなく、出自も国籍も違う、飛騨牛とイベリコ豚の出会いを演出してみた。飛騨牛のビーフシチューは温めるだけ、イベリコ豚はサラダとして野菜と合わせるだけだから、出会いの場の演出はいたってシンプル。存在感がある飛騨牛は、缶詰類にありがちな「あれ?肉はどこ?」といった寂しさがない。イベリコ豚もドングリの甘い香りを堂々と主張し、野菜とも馴染んでいる。どちらも旨し。
食べきれなかったイベリコ豚は、さっそく翌日に形を変えて登場していただいた。カリカリのバゲットとクリームチーズと組み合わせたバゲットサンドだ。これも料理と呼べる程のものではなく、3色のアスパラガスに主役を譲る名脇役として。アスパラにはオランデーズソースでしょうとメニューを考えた時に閃いた。さらに翌朝にはお気楽妻が大好きなあのメニューに挑戦だ!そして必然的にスモークサーモンのサラダが加わる。
人によって、量はこれだけ?ランチメニュー?それとも前菜だけ?と訝しがられるだろうラインナップが、少食のお気楽夫婦にとっては立派なディナーになる。メインは何?という問いには、アスパラガス!と迷わず返す。それぞれ歯応えと味わいが微妙に違う、白、緑、紫(茹でるとほぼグリーンと変わらない色合いが残念)の3色のアスパラを濃厚なオランデーズソースで楽しむ。今が旬のアスパラトリオは堂々たる主役だ。
翌朝、いよいよ家庭では不可能と言われた(当社調べ)エッグベネディクトの登場だ。この一皿のために前夜のメニューがあった。マフィンをカリッと焼き上げ、ポーチドエッグとたっぷりゼータクに乗せたスモークサーモンの上にオランデーズソースをかける。コーヒーとミルクティを淹れつつ、サラダと一緒に完成したエッグベネディクトを盛り付ける。この一連の工程を同時進行で行い、何れも熱々の内に出す事が難しいのだ。
最も気を使ったのは、ポーチドエッグだ。コーヒー用の紙フィルターに卵を割り入れ、鍋の側面に貼り付けるように茹でよ、とネットでどなたかが教えてくれた通りに挑んだものの、初挑戦にして本番。Let’s try it ! と2人分の卵を投入。茹で加減と見栄えも含めたポーチドエッグの出来が決め手だ。そして、フィルターの形状によってラグビーボール型になってしまったものの、無事に完成。ソースをかけてしまえば大丈夫。
「おぉ〜っ!美味しそうだ!」起き出して来た妻が、歓喜の声を上げる。大好物の料理の前ではさすがにテンションが上がる模様だ。そして、卵にナイフを入れると、トロリと黄身が流れ出す。グッジョブ!上手く行った。「これはもはや家庭の味ではないね♬」妻も絶賛。贈っていただいた牛と豚から始まったチェーン・クッキングは、これにて無事完結。幸福をもたらしてくれた到来物だった。またいつでもお待ちしてます♬