故郷とは、実家とは「三回忌」

Hakushuが母の元に逝ってから2年が経った。三回忌法要で故郷の街に向かい、父母の墓前に参った。仲の良い夫婦だったから、また向こうですぐに出会い、一緒にいるに違いない。そんな時に思い出すのは、元気だった頃の2人の姿だ。とは言え、母が倒れる前は頻繁に帰省していた訳ではないから、思い出す2人の姿は、母が座る車椅子を押す父の姿であり、不自由になった右側の神経を懸命に使おうとしながら笑う母の顔。ここ20年程、故郷の街に帰るきっかけは、母の入院、葬儀、年忌法要、そして父の入院、葬儀、そして法事だった。「こんなことばかりで来てもらって、楽しいことで来てもらったら良いのにね」何度目かの入院を一緒に見舞った妻に、亡き父が言った。「美味しいモノ食べたり、楽しんでますから大丈夫ですよ」妻がそう返したのは慰めばかりではなく、お気楽夫婦が意識してやっていたことだ。

Zensai18歳までしか暮していなかった故郷の街は、オトナになって改めて訪ねると、いろいろな魅力に満ちていた。食材ひとつ取ってみても、子供の頃の味覚で味わったモノとのは全く違う。外食などほとんどしなかったから、美味しい郷土の味はおフクロの料理だった。ところが、オトナになって故郷の温泉宿に泊まったり、趣ある料理屋で食事をする度に驚いた。海にも山にも豊かな食材があり、それを新鮮なままに味わえることのゼータクさ。それに加え、子供の頃に比べ、旅館も料理屋も、良い意味で洗練され、進化していた。例えば旅館なら「湯どの庵」や「亀屋」であったり、料理店なら「アルケッチャーノ」や「紅屋」であったり。その宿を、そのレストランを、訪ねることが目的であってもおかしくない故郷への旅。お見舞いや法事で、帰らなければならない帰省ではなく、積極的に楽しむ故郷再発見の旅。

Hakamairi心地の良い馴染みの(笑)バーもできた。地元の役所勤めを辞め、弟がひとりで始めた「ラピタ」という店。身贔屓だけではなく、60年代〜80年代を中心とした音楽が流れ、適度に落着いた照明、懐かしいジャケットが壁を飾る、とてもリラックスできる店。生ビールはレーベンブロイ。スコッチも、アイラも、バーボンも、そして国産のウィスキーも揃っている。三回忌法要の前日、通常営業していた店に向かった。その日の1杯は、2種類の白州の飲み比べ。飲み比べている時点で1杯ではないけれど。カウンタ席に妻と並んで座り、グイッとストレートグラスを煽る。妻は持参したパソコンをカウンタで立ち上げ、仕事を始めた。まだまだ忙しい中、同行してくれたことに感謝しながら味見を勧める。「あ、これは良い香りだね。美味しい♫」シェリー樽の1杯を誉める。飲めない妻の方が舌は確かかもしれない。

Naorai郷の家に父母はおらず、すっかり弟家族の家になった。故郷を離れてから建った家ではあるから、さほどの思い入れがある訳ではないし、自分たちの場所はないのだけれど、故郷の持つ意味合いが変わった。実家とは、自分の生まれた家、または両親の住む家を指すらしいから、元より余り好きな呼称ではないのだけれど、私の“実家”はなくなった。「ただいま!」と言って(言ってはいなかったけれど)“帰る場所”ではなく、2人の遺影がある仏壇や墓を“訪ねる場所”になった。この春をもって、3人の甥や姪たちは、全員社会人になった。故郷に暮す父の兄妹たちは相変わらず、ありがたいほど元気だ。彼らの弔事や慶事があっても、故郷は帰る場所ではないだろう。とは言え、生まれた街を失った訳ではない。生まれ故郷を訪れることができるのも、弟夫婦と家族がいてくれるから。ありがたいことだとつくづく思う。

と母がいなくなったら、浜松に帰ることも少なくなっちゃうかなぁ」と妻。兄弟のいない妻にとって、故郷とは両親の住む街のことらしい。「でも、スカッシュしに行ったり、弁いちさんに食べに行ったりすれば良いか♬」そう、生まれた街は故郷と呼び続けるけれども、実家:実の家は自分たちの住み続ける場所。故郷は懐かしむだけではなく、積極的かつ肯定的に楽しみ訪ねよう。

ブログは誰のために「IGA-IGA.com」

MaltsSweets2005年5月、前職の会社を辞めようと決めた頃、ブログを書き始めた。最初に“快楽主義”宣言などと、ちょっと肩に力の入った文章を書いた。快楽:楽しさを追求することは悪ではなく、何でも楽しんでやれ!という好奇心と、ポジティブな姿勢が快楽主義を全うさせる、などと。今読むと我ながら赤面する。けれど、文章を修正したりはしない。その時の自分がそこに在るから。ブログに書く記事の基本は、批判、誹謗中傷など、わざわざネガティブなことばをまき散らさないこと。さらに言えば、ひとり読み返す日記ではなく、ネットに公開する以上は、読んでもらう“誰か”を意識して書く訳だから、リア充をアピールする自己顕示に陥ってはいけない。それが信条。

JiyugaokaKyosenログで紹介する、いろいろなカテゴリーの「私の快楽の素」が、他の方の“楽しいこと”に繋がるきっかけになれば嬉しい、とも書いた。お気楽夫婦は、形として残らないものにお金を使うことが大好きだ。美味しいモノを食べること、スモール&ラグジュアリーなホテルに宿泊すること、スポーツクラブで汗を流すこと。そんな2人がいかにお気楽に過ごして来たかを書き留めたメモだとも。だから、このブログを読んでいただける方に対する何らかのメッセージは、全く含まれていない。読んだ方が「なんだ!こいつら!」と腹立たしく思われても、全く責任は持てない。どうかその場合は、読むのを止めるだけにしていただきたい、と綴る。我ながら、実にごもっともである。

TsutayaKodamaログを書き始めて10年が経ったのだと気が付いた休日の朝。しみじみ。心地良い5月の日射しの中、自分の文章を読み返してみる。10年間にアップした記事の総数は1,000を超えていた。すげー!記事の中には、良い文章書いてるなぁとイケシャーシャーと思う(最近局地的に流行中)ものがあり、小っ恥ずかしくてすぐにでも削除してしまいたいものもあり、しみじみしてしまったり、笑ってしまったり。あれ?自分で結構楽しんでるではないか。誰かに読んで欲しいと思う気持もありながら、文章を書くことも読むことも、その行為自体が好きなんだなぁと改めて自覚する。はい、正直に告白します。はっきり気付きました。私、自分の文章読むの好きです(笑)。変形した自己愛?

YamamotoKobe夜、その筋(どんな筋だ?)で有名な“びぢん”ブロガーさんと楽しく食事をする機会があった。どんなネタならアクセスが増えるかなどと話しながら、いかん!いかん!と自責の念に駆られた。SNSの普及で、ブログを書き始めた2005年頃とは大きく環境は変わった。誰もが気楽に近況を発信し、メッセージが交わされる。いいね!の数を意識する。私のブログの場合、読書に関する記事になるとアクセス数が減る。美味しい店を紹介すると伸びる。どうやら求められているのは、“美味しいモノ”らしい。けれどもこのサイトはビジネスではない。「いいね!本位制」に陥ってはいけないのだ。読んでくれる人におもねることなく、自分の“いいね!”を書き留めることに立ち返るのだ。

んでくれる人が多い方がいいじゃない」妻が断じる。この10年、どの記事も最初の読者は妻だった。公開する前に一読してもらい、気になる部分を指摘してもらう、謂わば専属の編集者。ごもっともではある。けれども、そのさじ加減が難しい。これからもこのチームで、楽しみながら続けて行きます。

WE ♡ LOVE POTATO「フライドポテト愛」

Eri&PotatoAsahi外に思われるかもしれないが、お気楽夫婦はポテト好き。自宅でのんびりつまむポテチも好きではある(No.1は「フラ印 うす塩味」、No.2は「カルビー 堅あげポテト ブラックペッパー」)けれど、お店で食べる揚げたてフライドポテトに軍配が上がる。例えば、連休初日。地元世田谷にある温浴施設(天然♨)に行って一汗流し、立ち寄ったのは施設内の居酒屋。そんな店でも(失礼!)生ビールにフライドポテトをオーダーするのがお約束。そこは細めのややカリカリ系。私好み。風呂上がりの火照った身体に、キンキンに冷えた生ビール、そして揚げたてポテト。ふぅ。文句なしの休日だ。その上、その日は何ちゃらサービスデーで、ポテト大盛りサービス!妻の満面の笑みの理由はそれだ。

TenseiTetoraPotatoえば桜上水の「さかなの寄り処 てとら」に伺った夜。絶品の魚料理をいただき、美味しい日本酒を飲み、ご満悦。そんな後でも、ふとフライドポテトが食べたくなる。店主のジローさんの揚げるポテトも、実に旨いのだ。やはり細めのカリカリ系。手で持てないぐらいの熱々。ん、んまい。こいつには生ビールだと飲み直し。やっぱりポテトは生ビールですよね。「はい」とジローさんがシンプルに合意してくれる。ポテトの甘さと絶妙に振られた塩のバランス、揚げ油の香り、かりかりほくほくとした歯触り、口の中で一体となって味わった余韻を残しつつ、きめ細かな泡と共に生ビールをぐびり。くぅ〜っ。この組合せを考えたヤツは偉い!ところでフライドポテトは和製英語?

KilkenyFish&Chipsカッシュをした後に立ち寄る店のひとつ、アイリッシュパブ「ケニーズ」。ここでオーダーすべきは、フィッシュ&チップス。この料理も偉い。何が偉いって、イギリスで食べても美味しいと言える料理であること。キドニーパイは一度食べれば充分だし、ローストビーフは日本で食べた方が美味しい。けれどもフィッシュ&チップスは許容範囲。この店も同様。これを食べにわざわざ来るという美味しさではないけれど、滑らかな泡のキルケニーズを美味しくぐびりと飲むためのおつまみにはぴったり。お約束の皮付き太め。ホクホク。ちなみに、チップスはイギリスでのフライドポテトの呼称、アメリカではフレンチフライ、そしてそのフランスでは単にフリット(揚物)と呼ぶ。

Steak&flitsWakatakeレンチビストロの定番、ステックフリッツ=ステーキ&フレンチフライ。これはゼータクポテトの最高峰。フツーの感覚なら、ポテトフライは牛ステーキの添え物でしかないはずなのに、堂々と料理の名前としてステーキと肩を並べる。馴染みの「ビストロ トロワキャール」で食べられるのは年に1回あるかどうか。メインに辿り着く前に、オードブルの余りの美味しさにワインをいただき、パンをお代りし、満腹になってしまう。カウンタ席でいつもステックフリッツを召し上がっている初老の常連客が羨ましい。フランスのお隣、ベルギー名物のムール貝とフリッツも絶妙のコンビだ。バケツ一杯にムールの殻を捨て、ポテトをいただく。またもや、くぅ〜っ。すぐに食べたい。

せるためにジムで走ってる訳じゃないから良いんだよ♬」いつものように妻が言う。ジムで走った後、夜中の焼鳥屋で皿に大盛りのポテトフライを2人で喰らう。走って消費したカロリーの何倍もの高カロリー摂取。けれども、汗を流してさっぱりした後、美味しくビールを飲んで、好きなモノを食べることがお気楽夫婦の愉しみ。最高のレジャー。その時間帯が、たまたま夜中であるだけ。食生活の健全さを求めるか、精神的な高揚と快感を優先するか。お気楽夫婦は迷わず快楽を選ぶ。そう、健康的か不健康かは自分たちが決めること。だから今夜もポテト♡。

002291587

SINCE 1.May 2005