終の住まいに?「リノベーション契約」

Renovation20代の頃、初めてマンション購入の契約を交わした。物件は、世田谷区の北西部にある小さな中古の2DK。大学を卒業して間もなく、自分の年収(やたらと低かった)の何倍もの金額が記載された契約書に捺印をしても、その金額を支払うことに実感が湧かなかった。年収は定年まで毎年上がっていき、買い換える度に住居を広くすることができる、そして最後は郊外の一戸建てで、あがり。そんな住まいのスゴロク神話が生きていた頃。そんな神話は知らなかったワカゾーだったけれど、契約場所である新宿西口の不動産販売会社の高層階から、眼下に広がる家の灯りを眺めながら、この灯りのひとつ一つが、こんな面倒な手続を経ているのだなぁと、感慨深かった。

Living年後、バブル期前に購入したマンションは、駅から近かったこともあり、3倍くらいの価格になっていた。売却して残債を精算し、差額を頭金にして買換えた。けれど、購入した物件も当然高くなっていた訳だから、残債も増えた。自分の住まいだから、儲かったという実感(実際儲かった訳ではないし)もなかった。さらに数年後、現在の住まいに買い換えた。パートナーも変わった。初めての新築マンション。最初に購入した物件の近く、お気に入りの街だった。とは言え、残債はさらに増えた。以降、繰上返済こそが最良の金融商品と信じて払い続けた。そして、完済。収入減を気にしない働き方を選択し、自分の住む街の「まちづくり」にも参加し始めた。

Tokyo'sNight築で入居した住まいも、購入後20年近くが経った。水回りなどの設備の老朽化が目立ち、震災後にますます気になってきた地震対策、老後に備えたバリアフリー化など、住まいを見直す機運が高まった。そして、全面的に改装、リノベーションすることを決意。数社と何度も打合せを実施し、相見積を取り、比較検討した結果、友人の建築家に依頼することにした。既存のメーカーの設備の組合せが中心の大手不動産会社の提案に比べ、自由度が高いことが決め手のひとつだった。建築家の友人が設計・管理を担当し、彼がこれまで多くの物件でタッグを組んできた、造作家具が得意な工務店が工事を担当することになる。

Mt.Fuji約の夜、自宅を訪れてくれた友人と記念撮影。リノベーションを手掛けるのは初めてとのことだが、彼にとっても今後の仕事の拡がりが持てる案件になるならばと、期待を込めた契約でもある。儀式はさっと済ませて、よろしく!の乾杯に出掛ける。夏頃には工事に入り、秋に完成の予定。溢れる蔵書をどうやってスッキリと収納しようか。ビストロ風(どんなんだ?)カウンタキッチンにして、友人たちを手作り料理でもてなしたい。寝室とリビング、バスルームをウォークスルーにして大きなワンルームのような住まいにしたい。仮住まいにどの街に住んで、飲んだくれようか。そんなリノベーションに関わる全てのことが、今から楽しみだ。

だか楽しみになってきたよ」リノベーションに腰が引け気味だった妻。けれど、友人の建築家からラフスケッチが大量に送られて来て、イメージが拡がりテンションが上がった模様。「楽しくなったのは何よりです」友人からもそんなメッセージが届いた。この街に住んで延べ30年近く。富士山を望み、都心の夜景が遠くに楽しめる、適当に郊外な住み易い場所。リノベーションの契約をしたということは、これからもこの街に住むという決断でもある。10年後には連続立体化事業により近隣全ての踏切が解消され、駅周辺の様子も変わる。自分が関わって来たまちづくりの計画が、どのように実現していくのか。より住み易い街に進化できるのか。これからも、この愛する街の行く末を見届けよう。

保存と維持と修復と「鞆の浦、姫路城」

Tomonoura2Tomonoura1岡製糸場が世界文化遺産に登録された。登録名の「富岡製糸場と絹産業遺産群」という名が示すように、日本では初めての近代化遺産(石見銀山に続く2例めの産業遺産)としての登録だ。この世界文化遺産登録は、2004年に市に寄贈されるまで保有者だった片倉工業の「売らない、貸さない、壊さない」という方針で保存されてきたことで実現した。閉鎖した工場の固定資産税を払い続け、施設の維持、管理をしながら、当時の工法で復元工事をして保存に努めてきた片倉工業。操業時にも従業員に教育環境を整えるなど、社会的責任を強く意識して来た企業だ。そのブレのない経営姿勢に頭が下がる。

Tomonoura4Tomonoura3島出張の際に、鞆の浦という港町を訪れる機会があった。大伴旅人など、万葉集に歌われたように、古代から潮待ち風待ちの港として栄えた、歴史ある港町。町のシンボルである古い灯台(常夜)がある鞆港を中心に、昔ながらの商家などが立ち並ぶ街並が保存され、海外からの観光客も多い。この町に県道のバイパス建設による港の埋立て、架橋計画が持ち上がり、計画は景観を破壊してしまうという反対派と、町のインフラ整備を期待する推進派が対立した。訪れてみると確かに路は狭く、車両の入れない路地を観光客が行き来する風景があった。旅人の目線では好ましい風景でも、住民にとっての不便さの解消とのバランスは語るに難しく、余所者はコメントできない。

Himeji2Himeji4路を出張で訪れた際、修復中の世界文化遺産、姫路城の大天守を観ることができた。2009年から始った修復工事により囲いで被われ、大天守を観ることができない期間が続いていた。それが出張の数日前に囲いが撤去され、別名でもあるかつての「白鷺」の色が蘇って話題になっていた。けれど、瓦や城壁の色が不自然なまでに白い。白鷺ではなく、白過ぎ城だと揶揄されてもいた。けれど、これが本来の色らしい。城壁や瓦を固定する漆喰に黴が生えて黒ずみ、修復前の色になっていたという。*修復前の写真は、他のサイトから借用。見慣れていた色ではないから違和感がある、というのは人間の勝手な心理。…けれど、確かに白過ぎるくらい白い。

Himeji1Himeji3和の大修復と呼ばれ、日本各地の城がコンクリートで建築されたのとは異なり、平成の大修復は元の姿に戻すことに重きを置いているらしい。効率を求めた高度成長期の発想と、文化財修復と耐震性などを考慮した現在の修復には大きな違いがある。“元”の姿を再現することは歴史や文化的に意義がある。観光の視点からも意味がある。子供の頃に初めて訪れた大阪城で、コンクリート造りの城の天守閣にエレベーターで上って、子供心にも興ざめた記憶がある。けれど、歴史的に見れば、いつを“元”とするのかという課題もある。例えば、江戸城を“元”に戻すという際に、太田道灌が築いた平城の時代まで遡ることをしないだろうし、日本橋をどの時代まで戻って再現するのか。

路おでん、姫路産カラスミ、姫路の名産レンコンのサラダ、そして姫路の地酒。前夜に独り居酒屋飲みの写真をfacebookにアップすると、友人たちが「美味しそう!」とコメント。なのに「飲む前に走った?」と妻の厳しいコメントに、ホテルで走ったよとレス。文化的遺産を保存、維持するのが困難なように、飲んでばかりの私が体重と体型を維持するためには、日々のトレーニングが欠かせない。学生時代の体重まで戻らないまでも、せめて30代の体型に修復したいものだ。

テニスは楽し、中華は旨し♬「白椀竹筷樓、桂花」

TennisTourSetagaya年前、久しぶりのテニスで肘と手首を痛めた。私のサーブは、正確にはサーブだけは、やたらと速い。セカンドサーブもベッカー並みに(古い!)力一杯。それに加え、普段は軽いスカッシュラケットを使っていることもあり、重いテニスラケットが負担になったのだろう。ましてや、バドミントンで癖になっていた、手首を酷使するプレーが致命的だったのだと思う。その後はスカッシュも肘や手首の痛みに耐え、騙し騙しやってきた。そんな事情で長い間封印してきたテニスを、仕事の関係で再開することになった。復活の場は、テニスクラブやテニススクールのTOPとの1泊懇親会。お相手は、かつてプロプレーヤーだったり、コーチだったりという方々。コソ練せねば。

GyozaShoronpo回は世田谷区の総合運動場。スカッシュ仲間が空きコートを押えてくれた。当日はプレー直前に晴れるという奇跡的な天候。恐る恐るコートに立ち、フルショットせず、サーブも抑え気味に打つ。そのレベルはと言えば、ヘタ。徹底的に下手。相手のボールの勢いに負ける。ボールを捉える位置が悪く、ラケットの真ん中で打てた時の、パコーンという小気味好い音が出ない。むむう。それでも2時間たっぷり汗を流す。下手でもやっぱりテニスは楽しい。心地良い汗を流した後は、もちろんビール。二子玉川の「白椀竹筷樓」で、カリカリの焼餃子、スープたっぷりの小籠包、キリッと冷えたビールでお疲れさま!それにしても、こんな状態で本番は大丈夫なのか。

TennisSanratanmen週末もコソ練テニス。前週の役員秘書、アスリート女子に加え、酒豪女子も参戦。3人ともテニス歴が長く、それぞれプレースタイルが違うから練習相手としてはありがたい。彼女たち3人がコートに入るとラリーが長く続き、プレーを止めるのは決まってお気楽夫婦。2人ともレッスンを受けていない我流。ベッカー並みのサーブにはほど遠く、妻に至っては上から打つサーブをようやく習得したところ。それでも時折すばらしいストレートショットを放ち、相手を驚かせる妻。「きちんと習ったらすぐに上手くなると思うよ」と仲間たちに誉められ、照れながらもちょっと嬉しそう。それに比べ、かつてのプレーができない私。その“かつて”も、実はたいしたことはないのだけれど。

ChineseSaladeKeiphaニスもかなり楽しいね」と調子に乗った妻。「テニス復活しようかな」とジュニアの頃からプレーしていたという酒豪女子。「私のクラスの体験レッスン受けてみる?」という役員秘書のお誘いにもノリノリ。成城学園の中華の名店「桂花」で、お疲れさまビールを飲みながらテニス談義。「桂花」は地元住民に人気の薬膳中華料理がウリの店。週末は予約をしないと入れない。その日も満席。常連らしき客たちがゆったりと食事を楽しんでいる。そんな落着いた雰囲気の店で、元気に乾杯。ホタテと青菜炒め、ライチやキウイをたっぷり使った夏らしいサラダ、名物の酸辛湯麺などをいただきながら紹興酒をぐびり。たっぷり汗を流した後のビールも中華料理もしみじみ旨い。

々スポーツが好きで、美味しいモノには目がない元気な仲間たち。そのスポーツがスカッシュであれ、テニスであれ、身体を動かし、汗を流し、その後に待っている美味しいビールと料理を何よりも愛する。特段何もせずに飲んでも食べても美味しいモノが、スポーツの後だと何倍もの美味になる。ましてや一緒にプレーし、汗を流した仲間たちと一緒ならなおさら。「テニス合宿でもやろうか!」お気楽妻のテンションも高止まり。どうやら本番と思っていた仕事絡みのテニスの後に、ホントの“本番”が待っているようだ。

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