再訪は必須♬「神泉 遠藤利三郎商店」

EntranceSpoonは聞いていた。ワインアパートメントというワイン好きが集う住宅のプロジェクトがあり、その物件のテナントとして押上で人気の「遠藤利三郎商店」が入ると話題になっていた。元々は酒店だった押上店は、手頃な価格で幅広い産地のワインが飲めるワインバーであるだけではなく、本格的な料理を供するビストロ。神泉店のOPENは昨年の冬。あっという間に人気店になった。ふらっと当日に行ってみようかと何度か予約を試みたが、いずれの日も満席。伺えなかったけれど、「空いたらお電話しましょうか」という好感度の高い対応も受け、これはますます行ってみねばと思いは募る。

VinsMenu前に予約をして、待望の訪問。渋谷から井の頭線を一駅だけ乗って、神泉駅北口から5分。渋谷から歩けば、上りの路を15分。渋谷からはちょっと遠いけれど、人気のバルやら立ち飲みバーが密集する神泉の街をそぞろ歩くのも楽しい。意外な程小さな入口。通りに面した壁面は全てガラス。ダウンライトの灯りの下で、仄かに浮かび上がるカウンタ席。店に入り振り向くと、吹抜けの2階部分の天井までワインラック。うは。この景色だけで思わず微笑んでしまう。通されたのはカウンタ席。生ビールやワインをサーブするスタッフたちの前。カウンタ内のスタッフたちと会話するには絶好の席。

RenucciNicoisSalade初の1杯は、日替りのスパークリングワイン。スプマンテ。銘柄忘れ。そして流行のワンスプーンで提供されるアミューズ。ところが、そのスプーンを人数分、専用のスタンドに突き刺して供する。これでハートがどきゅん。さっそくスタッフに伺うと、限定で作られたセットで、在庫はどこにもないだろうとのこと。残念。調理器具や食器に凝る友人MARRくん垂涎の一品。オードブルの盛合せで2杯目のグラスワインをいただく。ニュージーランドのマルボロ ソービニヨンブラン。家ではもっぱらスクリューキャップのワインなのだとスタッフと会話。「今は遜色ないですね」と太鼓判。

ChardonnayAmadai杯目はコルシカの白ワイン。利三郎的ニース風サラダをいただきながら。このサラダがすごい。食材はオリーブ、ゆで卵、アンチョビ、ツナ、ポテトと本家ニース風サラダなのだが、使い方が全く違う。ポテトサラダの上に炙ったマグロ、アンチョビ、オリーブなどを盛付け、野菜を飾る。眉目麗しく、濃厚に美味しい。好み。スタッフとワインアパートメント情報、料理談義、ワイン裏話などを聞き、語りながら、ワインと料理と落着いた空間を味わう。「良い感じの店だね♬」飲めない妻もすっかりお気に入りの模様。皮を炙った甘鯛を肴に最後の1杯、シャルドネをいただく。絶妙に旨し。

を出る前に、今日は仲間と来るための下見を兼ねて伺ったのだと伝えると、入口横のワイン樽のテーブルを薦められる。大きなワインラックを見上げながらワイワイと飲むにはぴったり。「すぐに皆と一緒に来るよ!」と妻。店の雰囲気も、料理も、確かに良い感じ。そして酒を飲めない妻にとっては、何よりもスタッフのサービスが心地良かったらしい。遠藤利三郎商店、またすぐにお伺いします!

彼女の旅の目的は…「割烹 弁いち」

BeerZensai人の旅の目的はこの店の料理を味わうことだった。浜松で三代続く「割烹 弁いち」。「さとなお」さんのサイトを見てこの店を知り、お気楽夫婦が訪問する度にアップするブログ記事を読みながら思いを募らせ、いつかは弁いちさんへ!と憧れていたという。だからこそ、一緒に行こうとのお誘いに、「良いですねぇ♬行こうかな」と、拍子抜けする程の返事の速さだった。浜松初日の夜、店を訪ねると“いつもの”個室に通される。4人までのカウンタ席。調理場へ続く、店のご主人とも密なコミュニケーションが取り易いベストシート。その上、このカウンタ裏には秘密があるのだ。

IsojimanUshiojiru杯!まずは、オリジナルグラスが美しいガージェリービールで。ご主人へご挨拶と友人の紹介。「待望のお店だったんです」という友人に、「いえいえ、ウチなんて」と言いながらも嬉しそうなご主人。先付けの山菜の天ぷらを「今年は鳴沢村の○○さん、庄内の…」と産地だけではなく、“人”まで含めた説明をしてくれる。いわゆる地産地消ではなく、その時期の最高の食材を各地から取り寄せて作られる弁いちさんの料理。日本酒も同様。蔵だけでなく、杜氏に拘り、酒を供す。秘密のカウンタ裏からさっと登場した最初の酒は「磯自慢スプリングブリーズ」という爽やかな1杯。旨し。

TengumaiSashimi寸に盛られた美しい料理を味わいながら、超限定の酒、「天狗舞 純米大吟醸 雄町 生酒」をいただく。柔らかで上品で、口に含むと幸福になる味と香り。しみじみ旨い。そして汁物は地のハマグリと京都乙訓のタケノコ。「うわぁ〜っ!美味しいっ」友人と妻が揃って声をあげる。シンプルながら滋味深く、山と海の食材が優しく寄り添う味。和食の素晴らしさを味わう一品。お造りの皿を堪能しながら「松の寿 源水点」を楽しむ。ご主人と友人もすっかり打ち解け、話し込む。料理や酒のチョイスは基本的にお任せ。お酒の量も初見で判断し、友人の飲む酒は種類は減らさず0.5杯分としてくれた。

GensuitenAmadaiやかな樺色のカウンタテーブルのこぢんまりとした個室は、ご主人から提示される新たな驚きを味わうステージであり、ご主人の掌の上。生半可な知識は必要ではなく、楽しく味わい、喜べる五感さえあれば良い。甘鯛と山独活を組み合わせた香り高き一皿を味わった時、目と鼻と舌がそう実感した。だめ押しでいただく酒は「十四代龍月」という名品。そんな銘酒の数々をグラスで、それも1杯毎に酒の特性に合わせてグラスの形を変え、酒の味や香りを楽しめる店はありがたい。そして、締めのご飯と汁物にも春山の幸。しどけ、タラの芽、こしあぶら、こごみ、タケノコ…。春の山菜まつり。

味しかったです。ありがとうございました」友人と共に、見送っていただいたご主人と玄関先で記念撮影。満足げな笑顔。どうやらお誘いした甲斐があったようだ。妻の帰省に合わせて訪問するお気楽夫婦と違い、わざわざこの店で食事をするためにやって来た友人。ミシュランガイドの☆☆☆の定義は、「その店で食べるためだけに旅する価値がある」というもの。彼女にとって、「割烹 弁いち」はそんな店だったと思ってもらえたら嬉しい。店を出ると、遠くに聞こえていた「おいっしょ、おいっしょ♬」の声が急に近づき、浜松まつりの練りの若衆たちが手に手に提灯を持ちやって来た。偶然ながら、なんて素晴らしい演出だ。美味しい時間と空間を友人と共有し、たっぷりと味わった夜だった。

おいっしょ!おいっしょ♬「浜松まつり2014」

TakoTako2休の真っただ中の浜松駅。出迎えの人で溢れるコンコース。いつもなら迎えられる側のお気楽夫婦。その日は新幹線の改札口から出てくる友人を待つ。Wellcome to HAMAMATSU!遠路東京からやって来てくれた友人に、2日間いかに楽しんでもらおうか。気分はすっかり地元浜松人。小手調べに浜松餃子を食べ、昼ビーで乾杯した後に向かったのは「浜松まつり」の凧揚げ会場。遠州灘を臨む中田島砂丘に設けられた巨大な会場「凧場」には、晴れ上がった空に無数の凧が浮かんでいる。子供の誕生を祝い、健やかに育つようにと凧を揚げたところから始った浜松まつりのメインイベントだ。

NeriYatai休中の3日間、浜松の街は祭一色となる。法被姿で街を歩く人がいるのはもちろん、法被姿で接客する店員さんがいたりもする。「こんな大勢の法被の人たちを見たことない!」と友人が言うように、凧揚げ会場にも大勢の法被姿。参加町数は170余り。町ごとの凧じるしがあり、法被の襟には町(組)名、背面に凧じるしの祭装束。この祭は神社の神事などではなく、住民参加の市民祭。初子の名前が入った凧を揚げて誕生を祝い、凧じるしが入った凧を揚げて合戦を行い糸を切り合う。おいっしょ、おいっしょというかけ声とラッパの音が響く。爽快。広い空に浮かぶ凧を眺め、清々しい気持になる。

Yatai2Yatai3の中心部に戻ると、パレードや御殿屋台曳き回しの準備が始まっていた。日中に凧を揚げた若衆たちを迎えるために始ったという屋台の曳き回し。年を経るごとに豪華になり、“御殿”屋台と呼ばれるようになったらしい。屋台の中では法被姿の女の子たちが笛を吹き、太鼓を叩く。ベテラン女性が三味を弾く。凧揚げのおいっしょ!おいっしょ!という威勢の良いかけ声とラッパの音とは対照的に、優雅でゆったりのんびりした音色。日が暮れ掛ると御殿屋台に明かりが灯る。夕闇に輝く金色の屋台。「うわぁ〜っ」と友人が思わず息をのむ。凧揚げとはまた違ったまつりの魅力。夜のまつりの始まりだ。

Neri3Neri4子を祝う家では、初凧揚げの労をねぎらいお酒などを振る舞う。その際に列を作ってすり足で練り歩く、“練り”もまつりの名物。参加全町が参加する合同練りと呼ばれる練りから始まり、御殿屋台が光り輝く頃に町毎に激練りと呼ばれる行列が続き、練り本来の初子の祝いのために各町毎へ帰って行く。その日の夕食を終え、店の前の小さな通りに出ると、ちょうど斜向いの家の初子を祝う練りの衆が集まっていた。おいっしょ、おいっしょ♬若衆の提灯の列が家の前を周回する。おいっしょ♫おいっしょ♪おいっしょ♬なんだか嬉しくなってくる。思わず涙が出そうになる。おいっしょ♩おいっしょ♫

松楽しい〜っ」普段は妻と同様に感情体温が低めの友人が、facebookにそんな熱めのコメントを書き込む。嬉しいね。送り届けたホテルの前で、板さんたちを巻き込んだ激練りに出会った直後のことだった。おいっしょ♫おいっしょ…。祭の日、浜松の夜がこうして更けて行く。

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