口福な日々「用賀 本城、てとら、洋食バル ウルトラ…」

Honjo月某日、春を味わうために「用賀 本城」に伺う。スカッシュレッスンの後に砧公園でお花見をして、その後に本城で春の料理を楽しもう!という企画…だったが、花より団子。肌寒い天気にメンバー全員一致で花見を中止。本城訪問がメインとなる。それを知ってか、雅な京料理の一皿にサクラが添えられた。思わず微笑んでしまう料理に深く頷き、寒さに震えながらお花見をする他の友人たちの様子をFacebookで知り、思わずほくそ笑む。左隣に座る小顔美女改め酒豪女子のペースに釣られ、ついつい深酒。最後の一品を食べられず、右隣に座る妻に睨まれる。「こっそりもう1本いっちゃいましょう♬奥さんに怒られちゃうかな」という誘惑に勝てなかった私の不覚。

Tetra月某日、どうしても飲みたい!という気持を抑えきれず、「さかなの寄り所 てとら」に伺う。その日も妻は深夜残業。家で独りメシは淋しいと、独り酒。1時間限定で席が空いていると聞き、サクッと飲んで帰るにはぴったりとカウンタ席に座る。店主のジローさん、奥さまのアキちゃんと取り留めのない話をしながら、ぐびっと一献。さらっと二献。おっと三献と酒がススム。この店は、居心地が良く、魚と肴が旨い小さな店。独りで飲んで帰ろうかと思う時に、真っ先に頭に浮かぶ店。おススメの酒を味わい、酒に良く合う肴を味わい、程よく酔いながら帰宅。ここで止められないのが酒飲みのだらしなさ。独り二次会。本城さんからいただいた釘煮で一杯。深酒。

Ultra月某日、スポーツクラブでたっぷり汗を流した後に「洋食バル ウルトラ」に伺う。深夜残業でストレスが溜まる、運動しないと体重が増える、どうしても走りたい!身体を動かしたい!と訴える妻。彼女は一定期間運動しないと、酸素が身体に回らなくなるらしい。酸素が足りずに錆びてもらっては困るので、定期的にジムに通っている。健康のため、のはずなのだけれど、運動の後のビールは旨い。すいっと飲み干す。お代わり。汗を絞った後だから、2杯目なのに、これでもかというほど旨い。塩分を失った身体には、揚げたてのポテトなどの料理が、これまた沁みるように旨い。つい冷えた白ワインなどを飲む。時は深夜。体重は減るどころか増えるばかり。残念。

Senmano月某実、前職の飲み仲間とシモキタの「千真野」に伺う。体調が良くないからあっさり目の料理で、という彼女のリクエストで選んだ店。岩手出身だと言う店主は、地元の食材を使った料理を供し、地元の酒蔵の酒を揃える。シモキタには珍しい落着いた佇まいの貴重な店。「このタケノコ美味しいぃ。なんだか元気になってきました」と、悪かったはずの体調があっという間に回復の模様。美味しい酒と料理は人を元気にする。どうやら最近気になる相手がいるらしい。彼女にとって久しぶりの恋バナ。彼女よりも彼女の父親に年齢は近い。ディープな話も余裕を持って聞ける年齢差がありがたい。すっかり彼女が元気になった頃に、残業帰りの妻が合流。またもや深酒。

Trois月某日、ボルダリングの後に「ビストロ トロワキャール」に伺う。オーナーシェフの木下さんが、facebookに旬のホワイトアスパラが入荷したとの書込み。思わず釣られて予約。その後アップしたバスク地方のマネッシュ豚の画像に、食べたい!とメッセージ。訪問前にオーダーは決まった。店を訪れると木下シェフが満面の笑みで迎えてくれた。ホワイトアスパラに敬意を表し、白ビールで乾杯。そして白ワイン。ボルダリング仲間と山行計画。燧ヶ岳、瑞牆山、千畳敷カール、候補地が次々に上がる。妻もどうやら新たなスポーツに足を踏み入れる気持が固まったらしい。楽しみだ。と、調子に乗って深酒。メインの肉を食べきれずにドギーバッグで持帰り。無念。

を飲まない日はあるんですか」と誰かに問われれば、傍らにいる妻がない!と即答する。独りで店に伺っても心地良く飲める店がある。ありがたいことだ。美味しく酒が飲める気の置けない仲間たちがいる。嬉しいことだ。季節毎に食べに行きたい美味しい料理を出す馴染みの店がある。一緒に味わいたい仲間たちがいる。幸福で、口福なことだと思う日々。

「だからと言って、飲み過ぎだよ」という妻のおことばはごもっとも。

お勝手にシロクマ♬「フリッジズー(Fridgezoo)」

WhiteBear、別れと出会いの季節。そいつは春の訪れと共にやって来た。ある週末の昼から馴染みのビストロに集まり、たっぷりとワインを飲んだ席で、1人のスカッシュ仲間からメンバー全員に贈られた。「これ知ってます?」他のメンバーは、全員「?」。「どれが良いですか」そこに並べられたのは、ペンギンやアザラシなどの動物たち。妻がその中から選んだのは、小さな牛乳パックの形をしたシロクマ。冷蔵庫に入れておくと、開ける度に話しかけられるとのこと。ん?なんだそれは?調べてみると、ソリッドアライアンスという会社が企画した、フリッジズー(Fridgezoo)というガジェット(オモシロ小物)。地球温暖化のため極寒の地で暮していた動物たちが住処を失い、辿り着いたのが冷蔵庫の中、というストーリーがあるらしい。

Cowんにちは」うっかり存在を忘れ、朝一番に冷蔵庫を開けた時に聞くシロクマの声には、かなり驚かされる。慌ててドアを閉め、開け直すと「なんだよぉ〜」と因縁を付けられる。なんだよぉ〜と言いたいのはこっちの方だ。夜遅くに帰って来た妻が冷蔵庫を開ける。「こんにちは」とシロクマに挨拶された妻は「こんばんは、でしょう?」と返す。どうやらお疲れ気味らしい。風呂に入った後、発泡水を飲もうと冷蔵庫を開ける。「今日もご苦労様」というシロクマの声に、「そうなんだよ、疲れちゃったよ」と答える妻は、ささくれた気持をすっかりお湯に流したらしい。良かった良かった。次は深夜のチョコレートを取り出そうとドアを開ける。「また甘いモノかい?」とシロクマ。「そうだよぉ〜ん」とすっかりご機嫌の妻。

Sealわいいぃ〜」「欲しいぃ〜っ」facebookでわが家のシロクマを紹介すると、仲間たち(圧倒的に女子)が一斉に食い付く。「アザラシをポチッと買ってしまった」と役員秘書。「京都弁のペンギン買っちゃおう」と小顔美女改め、酒豪女子。「癒しが欲しいから私もポチッとしなきゃ」とアスリート系女子。「これ欲しい!アザラシも可愛い!」と陶芸教室の先生。仕事でお疲れ気味の女性たちが、“癒し”や“和み”を求め、深夜にポチッと押している姿が目に浮かぶ。涙。そして数日後、「さっき帰って来て、これから深夜ご飯。しばらくハードワークが続くので、その疲れを癒してくれそう」「アザラシくんに挨拶されて照れちゃった」などと、購入者からは歓びの声が!(笑)こうして、仲間たちの冷蔵庫の中にすっかり潜り込んだ動物たち。

Penguin調子どう?」シロクマにそう聞かれる度に、「まぁまぁかな」「良い感じだよ」と妻の返事は違う。とっさに聞かれることもあり、素直に答えている様子。シロクマは妻の調子を計る、体温計ならぬ「ご機嫌計」でもある。開ける前に、どのパターンで来るかなと身構えてみる。やさぐれ気味の時に、「なんだよぉ〜」と絡まれてもなぁと思いつつ、「どぉもぉ〜っ」と脱力系で挨拶されると、つい笑顔になる。気持に余裕がある時に、「なんだよぉ〜」と突っ込まれても、俺だよぉ!と返すことができる。「また甘いモノかい」と畳掛けられても、違うよっ!ビールだよ、と独り言つ。「暑いよぉ〜」と泣きつかれても、「まだぁ?」と催促されても、もうちょっと待ってな!とたしなめる。気分で受け答えが変わるのは、シロクマではなく、自分。

ないと淋しいねぇ」動物たちの飼い主が集まった食事会の際、しばらく交換しようかと持参したシロクマを、うっかり酒豪女子宅の冷蔵庫に忘れて来てしまった夜、妻がこぼす。いくつかのことばを使い分けるシロクマだけど、せいぜい数パターン。早々に飽きるのではと思っていた。なのにこの喪失感。適度に生意気で、時に優しかったり、脱力系だったり、なかなか可愛いヤツなのだ。こうして、すっかりわが家のキッチンに(お勝手に)居着いたシロクマくん。

「調子どう?」と聞かれ、良い感じだよ!と答える日々が続きますように。

大人の視点、オトナの味覚「倉敷」

CafeElGrecoKurashiki4きな街のひとつ倉敷を訪ねたのは、調べてみたら(なんとびっくり!)約20年ぶり、4度目だった。駅前の三越は天満屋に代わり、駅の北口にあったチボリ公園はアウトレットとショッピングセンターになっていた。それだけでも印象がかなり違う。タクシーに乗るほどの距離ではなっかたというおぼろげな記憶を辿り、前回の訪問(前職での出張)と同様に宿泊先としたホテルに向かう。前回と違うのは手にiPhoneの地図アプリがあること。いざとなればマンナビ機能を駆使し、迷うこともない。ホテルは倉敷最大の観光スポット「美観地区」に隣接する抜群のロケーション。さっそくチェックインの後、パソコンをレンタルしてサクッと仕事をし、美観地区の散策に出掛ける。

Kurashiki3Kurashiki2観地区は、江戸時代のなまこ壁の蔵や屋敷が(土産物屋や飲食店だけど)建ちが並ぶ。電柱と電線の地下化でスカイラインもすっきり。そんな風景は美しいのだけれど、作り物っぽさも感じてしまうぎりぎりの線。なくなってしまった倉敷のチボリ公園、長崎のオランダ村、頑張っているハウステンボスと同種の趣。とは言え、本来なかった場所に造る西洋の街ではなく、古くからの街並を遺すのだから意味が違うのだけれど、街に生活の匂いや汚れがない。映画のオープンロケセットのような、フォトジェニックな街並。美しいけれど、観光させられている感があり、しっくり来ない。以前訪問した際には感じなかった違和感を味わう。摩れて汚れちまったオトナになったからだろうか。

TakoTakoSalad和感を払拭するために夜の街に出掛ける。向かったのは地元でも人気だという「多幸半」という小料理屋。ここでもiPhoneが大活躍。細い路地にある小さな入口を難なく発見。「たこはん」と読むその店の名物料理は、下津井のタコ料理。下津井は瀬戸大橋のたもと、瀬戸内の展望台鷲羽山の近くにある港町。その沖で獲れるタコは「下津井ダコ」として全国的に有名。倉敷に来たからにはタコ料理を食べねば。…と、後で知った(笑)。まずはタコのお造り。こりこりとした歯触りがタコの旨味を倍増する味わい。そして名物だというタコが入ったポテトサラダ。食べる前は「?」だが、これが絶妙に旨い。シンプルなポテトサラダに、淡白な茹でダコの組合せが斬新。癖になる味。

ShakoTokoZakeを多幸と書く店名の通り、幸せがたっぷり詰まった店だ。そこで調子に乗り、これまた瀬戸内の美味シャコ酢をいただく。お頭、長い髭、殻付きのシャコ。視線を合わせるとやや不気味なやつら。けれども見た目と違って繊細で淡白な味。旨い。ワカモノの頃に食べた岡山名物「ままかり酢」は美味しいと思わなかったけれど、今なら美味しく食べられるのだろうか。などと回想しつつ、気になっていたメニュー「タコ酒」なるものをオーダー。聞けば「ふぐのひれ酒」のひれの代わりに干しふぐを使った燗酒だという。それください!猪口に口を付けると潮の香り。熱燗酒の香りと、炙った干しダコの香ばしさを一息に含む。んん、んまいっ♡ここにも幸あり。

敷は、アイビースクエアなど倉敷紡績(クラボウ)の産業遺産、大原美術館をはじめとした大原一族の文化遺産の街であり、街並保存という歴史的価値も備えた、いわば街づくりの先駆的成功例だ。今も好きな街であることに変わりはない。けれど、若い頃にしか見えない風景がある代わりに、ワカモノでは気付かない街の見え方もある。複数の視点を持つことで風景の奥行も、影も見えて来る。味覚も同様。舌が肥えたり口が驕るのではなく、年齢を重ねる毎に相応の味覚の幅を備える。取捨選択ができる分、余裕もできる。20年余りを経て訪ねた倉敷。新たな魅力と味力を発見した、良い旅だった。出張だった。

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SINCE 1.May 2005