彼女の旅の目的は…「割烹 弁いち」

BeerZensai人の旅の目的はこの店の料理を味わうことだった。浜松で三代続く「割烹 弁いち」。「さとなお」さんのサイトを見てこの店を知り、お気楽夫婦が訪問する度にアップするブログ記事を読みながら思いを募らせ、いつかは弁いちさんへ!と憧れていたという。だからこそ、一緒に行こうとのお誘いに、「良いですねぇ♬行こうかな」と、拍子抜けする程の返事の速さだった。浜松初日の夜、店を訪ねると“いつもの”個室に通される。4人までのカウンタ席。調理場へ続く、店のご主人とも密なコミュニケーションが取り易いベストシート。その上、このカウンタ裏には秘密があるのだ。

IsojimanUshiojiru杯!まずは、オリジナルグラスが美しいガージェリービールで。ご主人へご挨拶と友人の紹介。「待望のお店だったんです」という友人に、「いえいえ、ウチなんて」と言いながらも嬉しそうなご主人。先付けの山菜の天ぷらを「今年は鳴沢村の○○さん、庄内の…」と産地だけではなく、“人”まで含めた説明をしてくれる。いわゆる地産地消ではなく、その時期の最高の食材を各地から取り寄せて作られる弁いちさんの料理。日本酒も同様。蔵だけでなく、杜氏に拘り、酒を供す。秘密のカウンタ裏からさっと登場した最初の酒は「磯自慢スプリングブリーズ」という爽やかな1杯。旨し。

TengumaiSashimi寸に盛られた美しい料理を味わいながら、超限定の酒、「天狗舞 純米大吟醸 雄町 生酒」をいただく。柔らかで上品で、口に含むと幸福になる味と香り。しみじみ旨い。そして汁物は地のハマグリと京都乙訓のタケノコ。「うわぁ〜っ!美味しいっ」友人と妻が揃って声をあげる。シンプルながら滋味深く、山と海の食材が優しく寄り添う味。和食の素晴らしさを味わう一品。お造りの皿を堪能しながら「松の寿 源水点」を楽しむ。ご主人と友人もすっかり打ち解け、話し込む。料理や酒のチョイスは基本的にお任せ。お酒の量も初見で判断し、友人の飲む酒は種類は減らさず0.5杯分としてくれた。

GensuitenAmadaiやかな樺色のカウンタテーブルのこぢんまりとした個室は、ご主人から提示される新たな驚きを味わうステージであり、ご主人の掌の上。生半可な知識は必要ではなく、楽しく味わい、喜べる五感さえあれば良い。甘鯛と山独活を組み合わせた香り高き一皿を味わった時、目と鼻と舌がそう実感した。だめ押しでいただく酒は「十四代龍月」という名品。そんな銘酒の数々をグラスで、それも1杯毎に酒の特性に合わせてグラスの形を変え、酒の味や香りを楽しめる店はありがたい。そして、締めのご飯と汁物にも春山の幸。しどけ、タラの芽、こしあぶら、こごみ、タケノコ…。春の山菜まつり。

味しかったです。ありがとうございました」友人と共に、見送っていただいたご主人と玄関先で記念撮影。満足げな笑顔。どうやらお誘いした甲斐があったようだ。妻の帰省に合わせて訪問するお気楽夫婦と違い、わざわざこの店で食事をするためにやって来た友人。ミシュランガイドの☆☆☆の定義は、「その店で食べるためだけに旅する価値がある」というもの。彼女にとって、「割烹 弁いち」はそんな店だったと思ってもらえたら嬉しい。店を出ると、遠くに聞こえていた「おいっしょ、おいっしょ♬」の声が急に近づき、浜松まつりの練りの若衆たちが手に手に提灯を持ちやって来た。偶然ながら、なんて素晴らしい演出だ。美味しい時間と空間を友人と共有し、たっぷりと味わった夜だった。

おいっしょ!おいっしょ♬「浜松まつり2014」

TakoTako2休の真っただ中の浜松駅。出迎えの人で溢れるコンコース。いつもなら迎えられる側のお気楽夫婦。その日は新幹線の改札口から出てくる友人を待つ。Wellcome to HAMAMATSU!遠路東京からやって来てくれた友人に、2日間いかに楽しんでもらおうか。気分はすっかり地元浜松人。小手調べに浜松餃子を食べ、昼ビーで乾杯した後に向かったのは「浜松まつり」の凧揚げ会場。遠州灘を臨む中田島砂丘に設けられた巨大な会場「凧場」には、晴れ上がった空に無数の凧が浮かんでいる。子供の誕生を祝い、健やかに育つようにと凧を揚げたところから始った浜松まつりのメインイベントだ。

NeriYatai休中の3日間、浜松の街は祭一色となる。法被姿で街を歩く人がいるのはもちろん、法被姿で接客する店員さんがいたりもする。「こんな大勢の法被の人たちを見たことない!」と友人が言うように、凧揚げ会場にも大勢の法被姿。参加町数は170余り。町ごとの凧じるしがあり、法被の襟には町(組)名、背面に凧じるしの祭装束。この祭は神社の神事などではなく、住民参加の市民祭。初子の名前が入った凧を揚げて誕生を祝い、凧じるしが入った凧を揚げて合戦を行い糸を切り合う。おいっしょ、おいっしょというかけ声とラッパの音が響く。爽快。広い空に浮かぶ凧を眺め、清々しい気持になる。

Yatai2Yatai3の中心部に戻ると、パレードや御殿屋台曳き回しの準備が始まっていた。日中に凧を揚げた若衆たちを迎えるために始ったという屋台の曳き回し。年を経るごとに豪華になり、“御殿”屋台と呼ばれるようになったらしい。屋台の中では法被姿の女の子たちが笛を吹き、太鼓を叩く。ベテラン女性が三味を弾く。凧揚げのおいっしょ!おいっしょ!という威勢の良いかけ声とラッパの音とは対照的に、優雅でゆったりのんびりした音色。日が暮れ掛ると御殿屋台に明かりが灯る。夕闇に輝く金色の屋台。「うわぁ〜っ」と友人が思わず息をのむ。凧揚げとはまた違ったまつりの魅力。夜のまつりの始まりだ。

Neri3Neri4子を祝う家では、初凧揚げの労をねぎらいお酒などを振る舞う。その際に列を作ってすり足で練り歩く、“練り”もまつりの名物。参加全町が参加する合同練りと呼ばれる練りから始まり、御殿屋台が光り輝く頃に町毎に激練りと呼ばれる行列が続き、練り本来の初子の祝いのために各町毎へ帰って行く。その日の夕食を終え、店の前の小さな通りに出ると、ちょうど斜向いの家の初子を祝う練りの衆が集まっていた。おいっしょ、おいっしょ♬若衆の提灯の列が家の前を周回する。おいっしょ♫おいっしょ♪おいっしょ♬なんだか嬉しくなってくる。思わず涙が出そうになる。おいっしょ♩おいっしょ♫

松楽しい〜っ」普段は妻と同様に感情体温が低めの友人が、facebookにそんな熱めのコメントを書き込む。嬉しいね。送り届けたホテルの前で、板さんたちを巻き込んだ激練りに出会った直後のことだった。おいっしょ♫おいっしょ…。祭の日、浜松の夜がこうして更けて行く。

悩めるリノベーション「ご近所バル&ピッツェリア」

EntranceHirobe築家の友人から内覧会を開催するという案内をいただき、ご近所ということもあってスカッシュ仲間と伺った。引き渡し直前の、狭小地に建てられた二世帯住宅。受付を済ませ、1階の親世帯から見学。小さな中庭の植栽を背景に、オリジナルの横開き戸が親世帯の入口。採光を確保するために、そして視線を遮るために、細かく線状にくり抜かれたデザイン。さらにはコストを抑えるために、ペアガラスでベニヤを挟み込んだものだという。どきゅ〜んっ!と来た。くぅ〜っ、やられた。こうした細やかなアイディアと意匠が建築家による設計の良さ。2階の子世帯に続く階段で、2度目のどきゅん。

KishEri&Haruましい。内覧会から飲み会へと場所を移し、乾杯をしつつため息を漏らす。新築で購入したマンションで、築19年目のわが家。多少の設計変更をして入居したものの、設備は古い型のものが多い。平均寿命が10年と言われているのに、19歳の湯沸器は未だに現役!バスルームも狭く、収納も効率が悪い。地震に備えて家具は造り付けにしたいし、バリアフリーという老後に備えるテーマもある。ということで、数社に依頼してリノベーションの計画をスタートしていた。建築家の友人にお願いするのは、予算的に難しいかなと思っていたところに、内覧会。これも縁。やはりお願いしてみようか。

Pulucino2Pulucino5日後、さっそく建築家の友人と現場取材も兼ねて打ち合わせ。これまで他社に依頼した資料、見積などを除く提案された内容を開示し、リノベーションの方針を伝える。「大きな会社と違った、ウチならではのアイディアを出さなきゃですよね」そうそう、さすが。どんぴしゃ。それが望むこと。そんな何でも言い合える友人とのやり取りをしながら、新たな住まいを設計できたら楽しいだろうなぁ、と夢想。今までは一軒家、それも別荘などを多く手掛けた建築家の彼にとって、マンションは未経験。ましてやリノベーションは初めて。お互いに制約のある中で、彼と一緒に進められるか微妙ではある。

Pulucino4Pulucino3合せも終わり、ご近所イタリアン「プルチーノ」へ。内覧会の後にスカッシュ仲間の役員秘書と行くつもりが、残念ながら満席。代わりに出掛けたご近所バルの味もなかなかではあったのだけれど、この店の石窯で焼いたピッツァがどうしても食べたかったのだ。「このスカンピ美味しいですね」と建築家の友人も満足気。ピッツァの前に、石窯で焼いた子持スカンピでぐびぐびワイン。至福の時間。そして基本のマルゲリータ。モチモチの生地と適度の焦げが旨い。調子に乗り、マッシュルームとソーセージのピッツァを追加。旅と建築の話をしながらあっという間に完食。メインは打合せよりも会食か。

しいとこだね」と妻。選ぶべきは、ある程度画一的な仕様になるけれど、一定の水準で造り上げるであろう大手施工業者か。それとも、遊び心を持ちながらオリジナリティある意匠やアイディアを織り込めるであろう建築家か。また一緒に美味しいワインを飲みながら“打合せ”しようか。

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