餃子は街を救う?「宇都宮餃子、ときどきスカッシュ」

No.1GyozaStreet川県が「うどん県」に改名すると宣言したように、いっそ宇都宮市も「餃子市」を名乗れば良いのに、そう思わせる出来事があった。東武宇都宮駅を降りて、迎えられた看板にはこうあった。「連続15年 餃子日本一の宇都宮市にようこそ!」…これには裏がある。実は、その15年連続の後、2年連続で浜松市の後塵を拝していた。さらに実は、2013年は浜松に圧倒的な差を付けてトップに返り咲いた、というNEWSが報道されたばかり。浜松市出身の妻はそんなニュースを歯牙にも掛けない。浜松には鰻も、フグも、スッポンもあるし!と強気の姿勢。けれど宇都宮市は必死だったらしい。宇都宮餃子日本一奪還アイドルを起用し、積極的なキャンペーンを行っていたという。

GokuGyozaの街、栃木市から向かった餃子の街、宇都宮市。市内には餃子専門店が多数営業しており、チェックインしたホテルには餃子店マップもある。きっと餃子専門店の数では圧倒的に浜松に勝っているだろうと思う。なにしろ宇都宮市が拘っていたのは、世帯当りの家計調査の結果、すなわち家庭で食べる餃子の消費日本一の座。スーパーなどの小売店で買って消費した金額。つまり専門店の売上とは関係ないというよりは、ライバル関係。けれども「日本一」と謳えるかどうかは、観光客に対してアピールできるパワーが違う。だったら協力してキャンペーンを行おう!と専門店の集まりである宇都宮餃子会も協力したという。そして3年振りに日本一の座を奪回。めでたしめでたし♬

HotelLounge都宮の宿は「ホテルアール・メッツ宇都宮」というJR系の駅前ホテル。2012年にOPENしたばかりのこのホテル、かなり面白い。元は商業施設だったビルをスケルトン状態にして、デザイン性と遊びごころ溢れるホテルにリノベーション。各フロア毎にデザインにテーマを持たせ、栃木県名産の大谷石をベースにしたシックな内装。宿泊者だけが利用できるラウンジには地元の情報誌、関連書籍がたっぷり詰まった書架、自由に使えるパソコンが並ぶ。他にも、かなり充実した24時間利用可能なジム、ランドリーコーナーなどがあり、お気楽夫婦の好みの方向にどんぴしゃ。駅直結であり、駅ビルにある餃子専門店街にも抜群のアクセス。宇都宮で餃子を食べるならこのホテルがおススメ。

PartyinTrainPartyころで、栃木〜宇都宮の旅の主目的はスカッシュの団体戦参加。同じクラブから3チーム12名で参加し、各クラス優勝賞品の餃子を狙った。毎年ごっそり餃子を持ち帰る我がクラブ。あろうことか今年の獲得は「0」。無念。けれども目的のもう一つは、皆で餃子たっぷり食べまくる宴会に続く、湘南新宿ラインのグリーン席(1階に12席の車両がある)貸切?の大宴会。宇都宮駅ビルにある成城石井で、ビールやスパークリングワイン、おつまみを大量に購入。都内に到着するまでの2時間弱、飲んで、笑って、食べまくる。「皆さん、こんな方たちだったんですねぇ。オトナってもっと落着いてるんだと思ってました」と、初参加の女子大生メンバーが目を見張る。こんなオトナですまん。

年も楽しかったねぇ。でも前から思ってたんだけど、スカッシュの大会じゃなくって、餃子や帰りの宴会目的で毎年参加してるでしょ」と妻の指摘はごもっとも。否定はできない。宴会>スカッシュ。また今年も、こんな仲間たちと一緒にお気楽夫婦のスカッシュライフがスタートした。

蔵の街を訪ねて「小江戸とちぎ」

TobuYoshokuれ?池袋から乗るんじゃないんだ」地図を読める女であるお気楽妻にしてこの発言。東武線で栃木に向かうのに浅草まで行くのが不思議らしい。池袋から出ているのは東武東上線、浅草からは東武伊勢佐木線、その先が日光線と説明しても、「ふぅ〜ん」と興味は示さない。妻には馴染みのない路線。お目当ては人気の東武特急スペーシア。予約なしでも大丈夫だろうと思ったのが甘かった。乗車予定の10分程前にチケットを買おうとすると席が離れるとのこと。まぁ、仕方ないかと購入。「おぉ〜っ!小田急のロマンスカーみたいな感じだね」と言いつつ、乗車するとすぐに隣に座っていた男性客に声を掛け、席を替わってもらう交渉を成立させた妻。天晴れ。男性客にお礼を言って並んで座る。さっそくビールとコーヒーで乾杯。ぐぐっと旅の気分が高まる。

KuraKoban昼頃に栃木市に到着。蔵の街、小江戸と称される、かつて北関東有数の商都だった街。タクシーで街の中心部に向かう。メインストリートには古い街並が残り、良い雰囲気。けれど、街を歩く人はいない。銀行だった建物を改築した洋食屋「Alwaysカマヤ」でランチ。2階分吹抜けの開放的な空間でハヤシライスをいただく。本格的に旨し。妻のオーダーしたランチセットのオードブルを肴に白ワインをぐびり。ふぅ〜っ。のんびりとした休日の午後、旅レポをしてしまいそうな雰囲気。と、テーブルの横には芸能人の写真や色紙。既にプロがきちんと旅レポしている模様。「この店は賑わってるのに、街に人はいないね」そうなのだ。駅の観光案内所でもらったガイドMAPもきちんとしているし、見所もたくさんありそうなのに、肝心の観光客がいないのだ。

Kura2Kura3を出て、蔵の街を散策。日光に向かう例幣使(れいへいし:家康の霊柩がある日光東照宮への勅使)街道沿いに、古い蔵や建物が現存する街並が続く。保存されているだけではなく、現役の住まいや店として使われているのが凄い。交差点にある交番も、蔵づくりの建物を模して建てられている。とちぎ蔵の街美術館、とちぎ山車会館などの観光拠点もある。広く取られた歩道は歩き易く、散策ルートに設置された案内板なども整備されている。なのに、街を歩く人は疎ら。点在する観光スポットに行くと他の観光客の何人かと出会う、という程度。観光客向けであろう店にも客は少ない。地元客と観光客の割合もバランス良く、ほぼ満席だった「Alwaysカマヤ」とは対照的。

Kura4Kura5画のセットのような、郷愁ある街並。魅力あるコンテンツではある。けれど、リピーターが多くいるとは思えない。肥料店の看板のままで営業をしている喫茶店はともかく、荒物店は看板通りの商売。和箒や竹笊は、いったい誰が買うのだろうと心配になる。定番のB級グルメでの街興しの手法も、ジャガイモ入り焼そばで実践済み。けれど店に並ぶ人はいない。とても頑張っているのに、観光客は来ない。どの地方都市でも共通の悩みがこの街にもある。中心部の繁華街だった商店街は、何軒かの老舗らしき店舗は頑張っているものの、多くの店が閉じている。コンパクトシティ、マチナカ居住などの僅かな成功事例は列挙できるけれど、全ての街に上手く当てはめるのは難しい。

っ!箒持ってる人がいる。買う人がいたよ」お土産として買ったのか、地元の人なのかは定かではないけれど、真新しい和箒を抱え、なんだか嬉しそうに歩く家族連れを見つけた妻。そう言う妻も嬉しそう。失ってしまった地方都市の賑わいは、そう簡単には戻って来ない。構造的で複合的な課題が、多くの地方都市に山積する。何度も足を運んでもらえる街の魅力作り、地元の人にも利用してもらえる店作り、継続できるモデルが必要なのだ。頑張っていることが伝わって来る街だけに、踏ん張って欲しい。ファイト!栃木!

京を味わう「用賀 本城、与野本町 京雀」

KyoSuzumeGuideつもなら年末にお伺いし、食いしん坊な1年を締めくくる「用賀 本城」。残念ながら昨年末はスケジュールが合わず伺えなかった。心残りの年越し。そこでスカッシュ仲間の役員秘書を誘って、新年早々にいつものカウンタ席を予約。指折り数えてその日を待つ。店主の本城さんは、京料理の名店「たん熊北店」で修行をし、パリのフランス領事館で公邸料理人を務めた後、たん熊北店二子玉川店の店長を経て独立。2009年に用賀に店を構えた。本城さんとは二子玉川の店からのお付き合い。独立される際に話を伺うと、「最近、若いもんの目標となる料理人の道みたいなもんが見えなくなって来て、だったら私がやってみようかなと…」と、身震いするような答えが返って来た。そんな心意気、そして繊細な絶品料理に魅了され続け、店に通い続けている。

HiuoKonowataる日、TVの情報番組で「店主はたん熊北店で修行をして…」とのナレーションが耳に入る。ん?画面には究極のTKG(卵掛けご飯)と煽りのテロップ。美味しそうだし、感じ良さそうな店だけど、場所はどこだ?チェックすると最寄り駅はさいたま市与野本町。住まいから1時間以上。行く機会はないよなぁ、と思いつつ手帳を見ると、なんと隣駅のさいたま新都心を訪問する予定があった。それも「用賀 本城」に伺う予定の日。これは天啓だ。仕事のアポに合わせ遅めの時間に訪問。客は常連らしき1人だけ。カウンタに座りメニューを眺める。京料理からお気軽なものまで多彩。究極のTKGが食べたいのだけれど、卵丼(これがメニュー名)500円だけをオーダーするのもオトナとして気が引ける。天ぷら定食のご飯を卵丼に変えてもらうという変則オーダー。

SeasonWakatakeウンタに座った私の目の前で卵丼が完成するまでの過程を眺める。小鍋に大量の卵を入れ、弱火で温めながら、かき混ぜ、かき混ぜ、さらにかき混ぜると角の立たないメレンゲのような状態に。タレを掛けたご飯の上に優しく流し入れ、さらに上からタレ、卵黄、刻み海苔を掛けて完成。まるで山かけのような見た目。ひと口食べると、ふわふわな卵とご飯が絶妙に口の中で混じり合い、うまっ!と目を見張る。これは癖になる味と食感。近所に住む常連さんになって、堂々と卵丼だけ食べに来たい!…というような感想をその夜、本城さんに伝えると、「あぁ、京雀さんね。店主の○○くん、良く知ってます。ウチの客だと言ってくれたらよろしかったのに」と即答。初めてだったし、そうそう行く機会もないだろうと思い、名乗らなかったと返す。

KyoZoniEri&Haruころで今日はどんな感じで行きますか」という本城さんに、いつもの様に軽めでと伝えると、「じゃあ、お椀を京都のお雑煮にして、鯛はなしで行きますか」との嬉しいご提案。「きゃあ〜嬉しい♡白味噌のお雑煮って食べたことない」と妻。母方の実家が京都だという役員秘書も大喜び。口取りに氷魚(鮎の稚魚)から始まり、目でも味わい舌で楽しむ料理が続く。季節を感じさせる食材、盛付け、器。やっぱり和食は深いなぁ、日本って良いなぁとしみじみする頃に、だめ押しの京風雑煮。甘く上品で濃厚な、鰹出汁と白味噌の香り高い椀。「美味しい〜っ!柚子が利いてるぅ」「汁がトロッとして丸餅と合うねぇ♬」2人の目が輝く。来年の正月に作ってみようかなと呟く料理担当の私に「作って作って!」と宣う妻。了解。研究します。

日もとっても美味しかったです」輝いた瞳のままで役員秘書が本城さんにお礼。女将さんが更新しているお店のFacebookページもチェックし、一段と満足気。同行の友人のそんな顔を見るのが何より嬉しい。すると本城さんが「京雀さん、電話しといたら喜んでましたわ」あらら、いつの間に。埼玉までの遠征はなかなか難しいけれど、何時の日か再訪してみよう。本城さんの料理に対する愛情、客への気遣い、料理人同士の思い、そんな味付けもお気楽夫婦と友人たちを虜にする。さて次回は京都の春の味をいただきに、誰を誘って来ようか。

002315421

SINCE 1.May 2005