スーツとネクタイの日々「32回めの冬支度」

Suits2005年の小泉内閣の際に提唱された(小池真理子が環境相だった時)クールビズスタイルがすっかり定着し、夏にネクタイをするビジネスマンが減った。その上、10月1日に衣替えをするには温か過ぎるここ数年の陽気のせいか、秋になってもノーネクタイの男性は多い。とは言え11月に入ると、さすがに暑がりの私でもスーツを着てネクタイをすることが多くなる。前職で必ずしもネクタイが必須ではなかった会社に長く務めた。今も決して年間を通してスーツ&ネクタイスタイルではない。けれど、夏のジャケットやパンツをクリーニングに出し、冬物のスーツをクローゼットに並べる季節になると、なぜか身が引き締まる。

の暑さに負けてだらぁ〜っと、ぼぉ〜っと仕事をしている…訳では決してない。けれどもスーツを着ると戦闘モードになる。スイッチが入る。ましてや11月。あと2ヶ月で1年が終わってしまう。少し焦燥感が混じった闘争心がむくむくと沸き上がる。やるべきことは山積しているぞと自らを奮い立たせる。この季節ならではの気持の動き。だったら夏の間もスイッチ入れてなさい!と指摘されればそれまで。振り返れば、夏のやる気は違う方向に向いている。夏の日射しの下で汗を流しながら移動。仕事を終えたらキリッと冷えたビールが待っている!と自らを鼓舞する。あと何日働いたら夏旅に出かけられるぞ!というニンジンを目の前にぶら下げる。ブログ用に誇張してはいるが(笑)、単純でお気楽なおやぢ。

Necktiesから夏への衣替えは、寒い季節から開放された気持や、夏に向かっての開放感が溢れる。それに対して秋から冬は寒い季節への備え、年末に向かっての高揚感。気持の向かう場所は違うけれど、気持が切り替わるのは一緒。それ程意識もせずに、季節に応じてモチベーションの持ち方を変えているだけ。社会人になってから、そんなことを30回以上も繰り返して来たのだと気付く。冬物のスーツやネクタイを眺めつつ来し方を振り返れば、そのスーツを買った頃の自分を思い出す。それぞれのネクタイにまつわる記憶が蘇る。幸い体型もあまり変わらなかったから、我がクローゼット最古参のスーツは20年以上を経た強者。新参のスーツたちとは貫禄が違う。

クタイも同様。流行に大きく左右されないレジメンタルやドット柄が長生きという傾向はあるけれど、いずれのネクタイも長寿。ここ数年は夏場にほとんど活躍できない分、汗染みも少なく、高齢化の傾向がますます強くなっている。あと何年ネクタイをするかと思えば、新たな戦力を投下することに躊躇いも出る。すると必然的に少子高齢化の日本社会と同様の逆ピラミッド型の(ネクタイ)年齢分布となる。そうなのだ。スーツやネクタイの中身であり持ち主である私は、いつ頃まで彼らとお付き合いするのだろう。これも幸いなことに、定年という規定がない契約の元に働く身。自らの冬支度はいつまでに行おうか。

論調査会社ギャラップ社の調査(日経に掲載)によると、世界142カ国23万人の従業員の内、意欲があり積極的に仕事に取り組んでいるのはわずか13%。大部分の63%が「意欲がない」との回答だと言う。さらに24%は「意欲を持とうとしない」層。全世界の労働者の90%近くが仕事が嫌いという結果だという。日本ならもう少しマシかと思いきや、仕事を通じて幸せを感じる従業員は7%という結果。そうか。私は幸運なのだ。仕事に関して幸せを感じ、その後のビールでさらに幸福でいられる間は、スーツとネクタイのお世話になろうか。

4/4(キャトルキャール)の店「ビストロ・トロワキャール」

BigJogKubochi田谷線の松陰神社前駅のホームから徒歩30秒。小さなビルの2階に、こぢんまりとしたビストロがある。ある週末、その小さな店にはお祝いの花が溢れていた。開店3周年を祝う馴染みの客からの花。お気楽夫婦も心ばかりのお祝いを持って店に出向いていた。ちょうどアメリカに住む友人:マダムが緊急帰国しており、「IGAちゃん、その日空いたから飲もう!」という嬉しいお誘いに共通の友人たちを招集。“その日”は、たまたまお気楽夫婦の結婚記念日であり、お誘いした仲間の誕生日、という偶然。お祝いの3乗♬

ZensaiMeats!めでとう!」その日のメニューは開店3周年スペシャル。ビール、ワイン飲み放題、アミューズ、オードブル、数種類の肉料理食べ放題!デザート付きで6,500円!!!というお得なコース。ピッチャーのような巨大ジョッキを両手で抱えて乾杯。「この店はほんとに美味しいよね。マダムに会いたいっていうのは勿論だけど、ここだからなおさら来たかったんだよね」スカッシュ仲間の1人が告白。彼は2度目の来店。1度訪れれば、この店の料理に陥落されてしまう。初訪問のメンバーも絶品オードブルを味わいながら頷く。

BeefCakeダム、お嬢さんの結婚もおめでとうだね♡」それが彼女の緊急帰国の嬉しい理由。微笑ましく若々しいカップルの写真を見せてもらいながら、仲間たちの笑顔が弾ける。そこに「こちらをお好きなだけお召し上がりくださぁい♬」と、満面の笑みの木下シェフ。巨大な肉の塊に歓声が上がる。披露宴のケーキ入刀のように一斉に写真撮影。隣の席のカップルも「私たちも良いですか?」と撮影に参加。そんなコミュニケーションが自然にできる店の雰囲気。そして切り分けられたジューシーな肉料理に笑顔が広がる。

3:44:4めでとうございます」シェフの奥さま、まゆみちゃん作のサプライズケーキ。お気楽夫婦だけではなく、友人の誕生日メッセージも。実は前年の開店2周年に、やはり偶然にもこの店で祝いをした。マダムが帰国し、彼女の空いていたスケジュールに合わせて集まったという理由も一緒。なんだか不思議なご縁。「わぁ〜っ!嬉しい」その日誕生日を迎えた仲間が微笑む。いくつになろうと“おめでとう”は嬉しい。そのお祝いを美味しい料理と気の置けない仲間たちと祝えるのは、さらに嬉しい。お祝いの4乗。そして満席の店も一段落。「3周年おめでとうございます!」シェフと奥さまにもケーキをおススメし、一緒に記念撮影。笑顔の輪がさらに広がる。

の店の名前は「トロワキャール」。フランス語で3/4という意味。良い店には4つの要素が必要だという木下シェフ。料理と、ワイン、おもてなしの心の3つで、3/4。そして、その店を楽しむ客がいて、4/4になるという店名。3周年のお祝いがたくさん届き、料理とワインを楽しむ客席からは笑顔が溢れる。まさしく、その日の店名はキャトルキャール(4/4)だった。

NODA×MIWA×RIE=『MIWA』NODA MAP VOL.18

MIWA2技派とか、本格派と呼ばれる女優は多い。逆に、演技ができないで女優と言えるのか!片手間で女優をやられても困るじゃないか!という、真っ当な突っ込みもできる。とすると、その表現自体は適切ではない。けれど、可愛いだけで、美しいだけでTVドラマや映画に出演する“女優”も多いのは事実。だからこその演技派であり、本格派、実力派と分類されることになる。宮沢りえは、その誰もが知る幼い頃からの美貌によって、決して演技派とは呼ばれてはこなかった。1987年の初代リハウスガールでの衝撃的な美少女としてCM登場。1989年の『ぼくらの七日間戦争』での映画デビュー。1991年の写真集『Santa Fe』。そして、その絶頂からの低迷。激やせ。

MIWA沢りえの舞台初見は2007年のNODA MAP VOL.13『ロープ』。その後、『パイパー』『THE BEE」と野田秀樹の舞台で彼女の演技を観続けて来た。その度に、宮沢りえの際立つ存在感を体感した。野田の舞台世界に見事に溶け込み、活き活きとした、堂々たる「演技派」女優だと実感した。世間的には、2002年公開の映画『たそがれ清兵衛』での演技で再評価。そして、今や伝説的な逸話となった『おのれナポレオン』での天海祐希の急病による緊急代役。誰もがその演技を、男気(女気?)を、堂々と認めることになった。このエピソードが、女優宮沢りえの評価の分岐点になるのだろう。*個人的には、2004年公開の映画『父と暮らせば』が評価の分岐点。

MIWA3NODA MAP 第18回公演『MIWA』は、今年最大の話題作のひとつ。まだ存命である「美輪明宏」の生涯をベースに、野田秀樹が創り上げる「MIWA」の物語。虚実綯い交ぜというよりは、美輪明宏という希有で孤高な存在を、野田秀樹が解き、織り直し、妄想した物語。その現実世界だけではなく、男と女という性差もを超越した半生(いくつまで生きるのだろう?)を、長崎、東京という現実の街に描く。古田新太と宮沢りえの2人だからこそ表現できるMIWAの2面性。多面性。冴え渡る野田の暗示的ことば遊び。そしてシンプルな舞台装置で表現する空間の妙。エンディングで流れるのは、ジョルジュ・ムスタキの『Ma Solitude(私の孤独)』という象徴的な選曲。

A-sighn台は総合芸術だと言われる。脚本という文章の芸術があり、演出や演技という空間表現の芸術があり、舞台美術、照明、音楽など、多方面のARTの結集。それが、数十分という時間と、せいぜい数百人が見守る空間で、やり直しがきかないライブで行われる。再現性はない。その場に立ち会う観客がいて初めて成立するという意味から言えば、観る者すらその総合芸術に含まれる。確かに、観客が創る空気は舞台に干渉する。そして、野田秀樹と宮沢りえの希有な才能、美輪明宏という題材によって、化学反応は起きた。そして、その贅沢な瞬間を客席から見届けることができた。何より、宮沢りえの中性的な少年からオトナの女まで、可憐で幅の広い演技を味わった。

っぱり舞台は良いねぇ」感情体温の低い妻が、彼女としては(おそらく、余りそうは見えないが)興奮気味に呟く。そして芝居の後はいつものAサインバーへ。カウンタに並んで座り、きりっと冷えたビールを飲みながら、芝居の余韻を楽しむ。店内に流れているのはホール&オーツ。「カリカリポークとミミガー、クーブイリチーください!」妻が満足げにいつもの料理をオーダーする。2人にとって、この時間まで含めて、舞台は“総合芸術”だ。

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