治療か、または拷問か(涙)「病室の長い夜、退院後の日常」

Ope019月初旬から、多摩川を渡ったある場所で15泊16日の長期滞在。これがヴァカンスだったら良いのだけれど、残念ながら手術のための入院だった。とは言え、こんな機会だからと浅田次郎の『蒼穹の昴』から始まる中国シリーズを病室に持参した。せめてもの楽しみとして一気に再読し、登場人物や時代背景の再整理をしながら味わい尽くす作戦だ。刊行時期が異なる作品を連続して読めるのは嬉しい!とビビる自分に言い聞かせる。

Ope02言うのも、かなりの大手術だったのだ。腰椎のすべり症による脊椎管狭窄症の根本治療として、背中を切開し、骨を削り、脊椎間に埋め、ズレた脊椎を金属のボルトで矯正すると言うもの。想像しただけでも恐ろしい。術後は24時間×数日間ドレーンで血液を抜き、血栓症予防のためにフットポンプでふくらはぎを圧迫する。痛みと圧迫の刺激で眠れる…訳がない夜を過ごす。なかなか朝はやって来ず、こりゃ拷問か!と涙した。

Ope03Ope06術前後の画像を比較すると、すべり症でズレていた脊椎が矯正されて真っ直ぐに並んでいるのが素人目にも分かる。神経群の通る隙間が広がり、両脚の痛みや痺れを起こしていた原因が除去された、はずだ。そして、矯正のためのボルトが恐ろしげで、我ながら痛々しい。

Ope04Ope05の上、手術前のCT画像の分析で、私の背骨は右に大きく傾いていたことが分かった。若い頃から右肩が下がっている姿勢だったのは、これが原因だったのか!と納得。もちろん、この右傾化も矯正して中道を行く人生になる。但し、歪んで偏った性格は(好きなので)矯正はしない。

Ope07ろにズレて、右に傾いた脊椎を真っ直ぐにする手術は、ボルトはあくまでもサポートで、自分の骨同士が接合されることが目的。せっかく矯正した骨が元に戻らないように、コルセットで押さえてサポートする必要がある。これが辛い。暑い時期は蒸れることを予想して秋口に手術を決めたのは正解だった。重いし、身体に当たる部分が痛いし、涼しくなった今の季節でこの蒸れ具合では、暑かった夏に手術だったらとゾッとする。

Ope08リジナルのサイズで製作したコルセットは、フィットするが故に当たりが痛い。着衣の上に装着するようにと言う指導を守っても、何ヶ所か水疱ができた。これも治療とは言え、退院後も日常的に着けている必要があり、拷問に近い。事前に調べていたところ、睡眠中も着けるという情報もあったがために困惑していたが、(治療方針の違いか)その必要はないとの主治医の一言が何とも嬉しかった。彼が神々しくさえ見えた(涙)。

Ope09れにしても、コロナ禍でも言われる「当然と思っていた日常のありがたさ」が更に身に沁みる。腰が曲げられないから、床に落ちたモノはスクワットのように腰を落として拾うしかない。パンツや靴下が履けない。これで1年後にスカッシュができるのか不安になる。「大丈夫。あなたは筋力も体力も、ついでに私のサポートもあるし」とお気楽妻の一言が嬉しい。そして、内臓疾患ではないから酒が飲める事が一番ありがたい♬

辛かった入院生活は所詮2週間余り。本当に大変なのは、術後に何ヶ月も続く不自由な“非日常的な日常”生活なのかもしれない。以前の生活、以前いた“場所”に戻れるように、焦らず、急がず、丁寧に過ごしたい。

I shall return ! We shall play squash !「腰椎後方固定術」

ope01年前に腰椎のすべり症と診断された。MRIの画像では、素人目でも腰椎のひとつが見事にずれているのが分かった。時折起こる脚の痺れや痛みは、腰椎が脊髄神経を圧迫する脊椎管狭窄症によるものだとの診断も納得だった。さらに、10数年前に坐骨神経痛と診断されたのも、原因はこれか!と。ズレは元には戻らないから、周囲の筋肉を鍛えて支えるためにパーソナルトレーニングの頻度を増やし、スカッシュを続けてきた。

ope02ころが、痺れの頻度が増した。痛みが居座り、日常生活にも支障が出る。これはマズイと再検査の結果、保存治療は限界で、手術をした方が良いのではとの診断。「よくこれで歩けてますねぇ」と担当医。確かに画像を見ると神経が通る隙間がない。セカンドオピニオンの専門医の見解も、画像を見るなり「こりゃひどいね!」との第一声。「これから痛みも酷くなる可能性が高いね」との診断。即刻、手術することを決めた。

ope04に手術を決めたと告げると、「このサイトを読んでみたら?」といくつかの手術体験者のブログを示す。手術を検討し始めた頃から、いろいろと調べてくれたらしい。手術の執刀医(予定)から最小限の情報は得たものの、体験者のリアルな情報はありがたい。*手術後に装着するコルセット(3ヶ月ほど寝る時も装着!)の画像は「にこにこさん」のブログから許可を得て掲載。他にも妻の調査は多岐に渡る。優秀な秘書、妻に感謝。

ope03術は「腰椎後方固定術」という、ずれた腰椎を矯正しボルトで固定するもの。実寸に近いものだと見せられた模型は、予想以上に大きく、ゴツく、正直ビビる。背中から3カ所ほどメスを入れる手術は、全身麻酔の時間も含め3時間ほどらしい。骨が固まるまで装着するコルセットは個別にオーダー。退院後すぐにゴルフに行って、病院に逆戻りして再手術という事例(汗)を妻が発見。しばらくは運動ができないということだ。

ope05スクがあることを理解した上で手術をするか、痛みを我慢して暮らすか、迷いが全くない訳ではない。プレー中に痛みが酷くなる場合もあるが、週に2回もスカッシュができている。年齢相応以上(?)のハードな動きでプレーしている自負もある。手術は不要か?しかし、まだ63歳。自分に体力のある内に、対症療法だけではなく、原因療法を選択したい。そして、改善された身体で今の生活に戻りたい。それが結論だ。

ope06だ一緒にスカッシュしなきゃだし、パークハイアットのジムで走らなきゃ!」と妻。それこそが、戻りたい“今”の生活だ。半年は運動ができず、スカッシュできるようになるまでは1年との主治医の見立て。コルセットをして通勤するのはハードルが高いが、幸いなことに勤務先のリモートワークが定着し、3ヶ月ほど出社せずに執務できそうだ。3ヶ月後におそるおそる通勤を開始し、半年後にはジム通い再開が目標だ。

ope07への帰還、映画タイトル的には「Back to the Future」ならぬ「Back to the Now」 。あるいは、マッカーサーではないけれど「I shall return」の心意気だ。復帰のための準備も開始。ジムに通えるようになるまで、筋力、体力が衰えないように秘密兵器を手配。退院後に組み立ては困難と判断し、早々にポチッと購入しセッティング。腰を固定したままでも使えるだろうと判断したマシン、その名も「FIT BOX」ただの箱ではない。

ope08の中から現れたのは、フィットネスバイク。もちろんそのまま入っているのではなく、ひぃひぃ言いながら1時間ほどかけて組み立てた。予想以上に重く(手術後だったら組み立て不可能?)、本格的で、リビングに置ける(妻もギリギリ許容した)スタイリッシュなデザイン。そして電源不要でマンションでも安心の静音仕様。さらに意外にもコンパクト。これなら雨の日でも、台風が来ても、毎日自宅でトレーニングできる、はず。

ope09して、私が最も戻りたい、お気楽妻と共に戻るべき場所こそが、この場所だ。・・・We shall play SQUASH !!

絶品料理はホスピタリティと共に「パークハイアット東京」

ParkHyatt00気楽夫婦が愛してやまない「パークハイアット東京」の魅力は、料理とサービスにもある。開業当時から人気の「ニューヨーク グリル」をはじめとしたレストランはどれも粒揃いでレベルが高い。もちろん宿泊しなくとも、レストランの利用だけでもその魅力を味わえる。「でも、やっぱりパークは泊まってなんぼだよねぇ♬」と宣う妻と共に、梅雨が明けたある日、今年4度目となる愛しのホテルステイに出かけた。

ParkHyatt05日の夕食は、インルームダイニングでオードブル&ホットミールをいただく。クラブラウンジのないパークハイアットは、ワールドオブハイアット上級会員グローバリスト特典サービスとして、ピークバー(場合によってニューヨークバー)を使って会員向けのサービスを提供する。さらに緊急事態宣言発令中はお酒の提供ができないから、カクテルタイムと同様に客室に酒と料理を運ぶというサービスに変わるのだ。

ParkHyatt06室なら決められた時間内であれば、カクテルタイムとしてフリーフロー、ではあるのだろうけれど、さすがにワイン1杯づつ持ってきてもらう度胸はなく、最初に生ビールとスパークリング2杯をオーダー。少食の2人にしたら充分な量の料理がテーブルに並べられる。その合計3杯のお酒も(妻は一滴も飲まない)食事中に飲むには適量。客室で2人だけで寛いで飲む酒は、ラウンジで飲むのとはまた違ったまったり美味しい味だ。

ParkHyatt032日目、朝食は前夜同様に客室で。これもグローバリスト特典として無料!ちなみに、初日の朝食は和食と決めている。ただし、料理の種類が(必然的に量も)多すぎて、毎回添えられている塗りの器に入った湯豆腐はオーダーの際にお断り。ご飯のお代わりも綺麗な(やはりお高そうな塗りの)お櫃に入っているが、一膳で十分。と言うよりは、どれも美味しい“おかず”をいかに1膳のご飯で食べ切るかという嬉しく困る献立なのだ。

ParkHyatt04はお約束のアメリカンブレックファースト。いつものエッグベネディクトの代わりに、その日はプレーンオムレツにハムを添えて。フレッシュジュース、サラダやフルーツまで、やはりたっぷり付いてくるから、バスケット一杯のパンは昼食用にキープする。やはり会員特典のドリンクとしていただいた、ポットに入ったホットチョコレートとコーヒーも昼食用に取っておく。少食でかつ残すことができない夫婦のささやかな工夫。

ParkHyatt01の日のランチは、朝食で取っておいたパンに加え、ホテル2階にある「ペストリーブティック」のパンを追加しよう!とホテル内の散策に出かけた。客室用エレベータを降り、ライブラリーを抜け、ジランドールを横目に見ながら、ピークラウンジに至るまで、まるでパークハイアットの住人のように行き交うスタッフと都度挨拶を交わす。ゴールのピークラウンジのガラス天井から注ぐ陽射しを浴びる気持ちの良い散策コースだ。

ParkHyatt02ころが、ペストリーブティックのショーケースに並ぶ見目麗しいケーキを眺めている内に、「今日はケーキにしよう!」と妻が発し、何とその日のランチのメインはケーキになった。確かに魅惑的な眺め。そして居並ぶ美女ケーキの中から迷いに迷って選んだのは、「いちぢくのタルト」と「ブルーベリーのチーズケーキ」。これが実に繊細で上品で、見た目で想像した以上に旨いのだ。「これは参ったね」と妻が呟く。同意。

ParkHyatt072日目の夜は、「ニューヨークバー」で前夜と同様のカクテルタイムのサービスを“ノンアルコール”ドリンクのフリーフローでいただく。同じ料理でも眺めが違うと味が変わる。スタッフの笑顔と共に供されるカクテルは、ノンアルコールのはずなのに高揚する味だ。お気楽夫婦の他に客はまばらで、淋しいけれど写真は撮り放題。するとスタッフがやって来て、「IGA様、今日のあちらからの眺めは凄いですよ」と誘う。

ParkHyatt08されるままに付いていくと、そこに広がっていたのは逢魔が時の心震えるような景色だった。足元には灯りがつき始めた都庁をはじめとした摩天楼群や新宿西口公園、遠くまで続くTOKYOの街並みと空の際からオレンジの光が空の青と溶け合っている。素晴らしい。そして何より自分では見慣れているはずの景色を「凄い」と感じて客を案内するスタッフも素晴らしい。これがパークハイアットのホスピタリティだと感嘆。

ParkHyatt10ゃあ、この鰻弁当ってやつ買って帰って、今日の晩ごはんにする?」と妻。その「じゃあ」は、どこから続くのかは分からなかったけれど、きっと今回もこの愛すべきホテルの滞在に満足して、お土産で余韻を味わいたいのだ。了解。その日の夜、「」という和食レストランの豪華な鰻弁当と手毬寿司の味わいは、持ち帰った料理の美味しさ以上の満足感があった。「次、またすぐ宿泊の予約するよ!」と妻。それも了解♪

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