六感で味わうリゾート「シックスセンシズ・コンダオ」

ConciergeVillasーチミンシティのタンソンニャット空港から、ヴェトナム航空のプロペラ機で南西へ45分。コンダオ島は、かつては流刑の島として、そして近年はリゾート地として知られる大小16の島からなる諸島だ。小さな空港にはホテルから迎えの車が待っていた。専任のガイドが同乗し、ホテルまでのドライブ中に島の案内をしてくれる。手つかずの自然が残るコンダオ島は、全島が国立公園。お気楽夫婦が宿泊したホテルも、環境保全を優先して建てられ、エコロジカルな運営を行っているという。

PalmTreeBeachゾート手前で未舗装になった道路から少し入った場所にある、小ぢんまりとして開放的な木造平屋建てのフロント棟でチェックイン。ミントの香りのする冷たいオシボリ、ウェルカムドリンクでほっと一息。そこからは幅1.6kmもある遠浅のビーチに面したリゾート全体を見渡すことができる。チェックイン後に滞在中お世話になる部屋付きのバトラーが紹介される。小柄で目がくりっとして、笑顔の可愛いヘイリーちゃん。リゾートの施設を紹介してもらいながら電動カートでヴィラへ向かう。

PoolStaff50棟あるリゾートのゲストルームヴィラは、全てオーシャンビューでプール付き。お気楽夫婦が予約した、いちばん小さなワンベッドルームのヴィラでも150㎡。けれど建築資材はリサイクルの廃材でペンキも使っていないから、ヴィラの外観は質素。海岸に沿ってカート1台がようやく通れる細い路が続き、その道沿いに大小のヴィラが並ぶ。路の突き当たりにはエレファントマウンテン(象が横たわっている姿に似ている)と呼ばれる特徴的な姿の山。その麓にはこのリゾートグループご自慢のスパ施設が広がる。

SpaFreeIcecream気楽夫婦がこのリゾートで過ごした5日間は、実に規則正しい生活だった。夜明けと共に(私は)目覚め(妻を起こし)、眠気覚ましにプールに飛び込み、昇り立ての太陽を眺める。そして自転車に乗ってレストランへ。たっぷりと朝食を取り、一息付いたら自転車に乗ってジムへ向かう。ストレッチと軽い筋トレの後には、トレッドミルかクロストレーナーで5km程度のラン。他に利用者のいないジムで、大音量の音楽に乗ってたっぷり汗を流す。そしてヴィラに戻ってウェアの洗濯(笑)。

Gym2Bicycleンチはプールサイドで。引き潮の海岸を散歩する母子や、椰子の樹の陰をのんびり眺めながら。そして午後はビールを飲みながら、やはりプールサイドで読書。暑さに我慢できなくなったらプールに飛び込む。甘いモノふが欲しくなったら、毎日メニューが変わる無料のアイスクリームやシャーベットを食べに出かける。夕暮れ時にはワインを飲みながら、夕食前にと予約したスパの時間を待つ。マッサージの余りの気持良さに、ヨダレを垂らさんばかりに束の間の午睡。そして星空とキャンドルを眺めながら夕食。

のリゾートは五感をフルに使って楽しむ…だけではない。見て、聴いて、味わい、嗅いで、触って、そして感じることができる。流れる雲、移り変わる空と海の色、素足で踏むパウダーサンド、スコールがやって来そうな風の気配、プールに突き刺ささる雨音、漆黒の夜の無音、そんな自分を取り巻く全てのものを六感で味わうリゾートだ。そのリゾートの名前は、シックスセンシズ(Six Senses:六感)。

サイゴンの昼「東洋のパリ」

NotreDamePostOffice洋のパリと呼ばれるサイゴン(ホーチミンシティ)。古代より中国などの統治下にあり、民族の独立に向けた何度もの戦争の歴史を持つヴェトナム。中でも1847年に侵略を開始し、1862年に第1次サイゴン条約により南部を占領したフランスの影響は大きい。サイゴンに総督府を置いたナポレオン3世は、パリを大改造したのと同様にサイゴンの街並を一新した。緑豊かな大通り、市庁舎、市民劇場、ノートルダム寺院、中央郵便局、ホテルなど、今も残る美しいコロニアル(植民地様式)建築の洋館が街を彩る。

GrandHotelHoしい街並だけではなく、食文化にもフランス統治時代の名残がある。例えばカフェ。街のあちこちにフランス風の、あるいは緑に被われたテラスがある、こぢゃれたカフェが点在する。街角には子供用かと思われる低い椅子に座り、ヴェトナム風のやたらと甘いコーヒーや清涼飲料水を飲む人々が溢れる。あるいはバゲットサンド。フランスから伝わったパン食文化が、美味しいパン作りの技術を残し、ヴェトナム風のバゲットサンド(バインミー)という形で定着した。軽めのバゲットが多彩な具にぴったりの美味しさ。

StreetCafeMarket2ちろんヴェトナムならではの風景がある。例えばベンタイン市場。街の中央に10,000㎡の敷地、大小2,000軒以上の店が集まる。観光客向けの雑貨、おみやげ、地元の人々向けの生鮮食品、果物、食品などの店が傍目には混沌としながらも、ジャンル別、エリア別に集積している。市場にはドリアンなどの果物や干物の匂いが溢れ、狭い通路には売り子と客が溢れる。エネルギッシュで猥雑で、きれいに並べられた商品は器用で几帳面なヴェトナムらしい風景。この街は混沌と整然が矛盾なく成立している。

BikeCycloしてバイク。街の全ての通りがバイクが溢れる川となる。それも決して上流から下流にだけ流れるだけとは限らない。逆走するバイクあり、信号を無視することもある。その頼りの信号が少ない。慣れない歩行者はその川を渡るために神経を集中する必要がある。交差点で左折する(日本で言えば右折)際に、中央分離帯で待つ。走行する車の間をバイクが縫うように疾走する。3人乗り、4人乗りはどうやらフツーなことらしい。事故が起こらないことが不思議で仕方のない、刺激的でスリリングな光景が日常にある。

Pool333&Poolくつものバイクの川を渡り、地元スーパーでおみやげ等の買物をし、ヘトヘトになった身体はホテルでリフレッシュ。コロニアル風の建築様式のパークハイアットサイゴンの中庭には、こぢんまりとしたプールがある。お気楽夫婦の客室はプールへ直接アクセスできるテラス付きの部屋。買込んだバゲットサンドとローカルビールでのんびりランチ…とはいかず、余りの暑さに食べ終えるとすぐにプールで身体を冷やす。そしてエアコンの効いた室内に逃避。ヴァカンス用に持参した本を読みながら午後を過ごす。

い街だよね」歩き疲れ、暑さにダメージを受けた妻が息を吹き返す。美味しいパンを食べさえすれば元気になる彼女にとって、この街は暮しやすいかもしれない。ドイモイ(刷新)政策開始から30年弱、WTO加盟からは僅かに7年。まだまだ大きく変貌する都市のエネルギーを肌で感じ、再訪の日を楽しみにしつつ(帰りたくない)帰路に付いた夏の日だった。

サイゴンの夜「マジェスティック&パークハイアット」

Majestic3Majestic年も前からヴェトナムに行きたいと思っていた。タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールの街や島々を訪ね、次はヴェトナムだ!…と。けれど、ホテルマニアの妻が満足しそうなホテルがなかった。街を訪ねるというよりは、宿泊したいホテルがある街や島を訪ねるという2人の旅のスタイル。快適に汗を流せるジムがあるか、スパなどの施設は充実しているか、そして何よりスモール&ラグジュアリーなホテルであるか。数年前、南シナ海に浮かぶある島に、そんなホテルができた。これは行かねばだ。

Majestic4Majestic2気楽夫婦のリゾート滞在にはお約束のスタイルがある。リゾートに向かう前、そしてリゾートから帰る前に都市に滞在すること。今回の夏旅はホーチミンシティに前後泊。往路のホテルはマジェスティック。ヴェトナム戦争時、開高健がこのホテルの103号室に長期滞在し、朝日新聞の臨時特派員として記事を書き、その壮烈な体験を基に3部作の作品を書いた。そんなホテルの最上階にあるバーでヴェトナム最初の夜を過ごす。なぜかスイートルームにアップグレードされたこともあり、初めてのヴェトナムの夜に、浮き足立つように酒を飲む。

ParcHyatt2Opera路のホテルはパークハイアット。数日間のリゾート滞在で緩みきった心と身体を、少しだけ街モードに戻す。もの凄い数のバイクが行き交う街の中心にありながら、優雅に過ごせるコロニアルホテルの佇まい。バイクの川となった通りを渡るだけで冷や汗をかいた身体をホテルでリフレッシュ。ジムで汗を流し、部屋から直接出入りできる中庭にあるプールサイドでのんびり過ごす。読み残した本を手に取り、ビールをぐびり。ゆったりとヴァカンスから仕事に戻るには、そんなアーバンリゾートが相応しい。

SquareOneSquareOne2はホテル内にある「Square One」でヴェトナム料理を味わう。牛肉のからし菜巻、揚げ春巻きなどのヴェトナム料理の盛合せが絶品。ひとつ一つは素朴な地元の料理も、洗練された美しい一皿になる。店の入口のセラーに並ぶワインも充実。グラスワインの種類も豊富。ヴェトナム最後の夜に、幸福の味と空間に包まれる。

1975年4月30日、当時のサイゴンに北ヴェトナム軍が進出し、10年以上続いたヴェトナム戦争が終わった。そしてサイゴンはホーチミンシティに名前を変えた。けれど、今もこの街はサイゴンだ。2人が泊まった2つのホテルも、マジェスティックホテルサイゴンであり、ホテルパークハイアットサイゴン。駅や中央郵便局をはじめ、多くの公共施設の名前もサイゴンのままだ。フランス統治時代の香りを残し、戦争の記憶を消し去ることなく。ふっと妻の飲むお茶のミントの葉の香りが闇に広がった。そんなサイゴンの夜だった。「あれ?もしかしたらサイゴン最後の夜って言いたかったの?」妻のそんな突っ込みは黙殺。

002315557

SINCE 1.May 2005