VIVA! ITALIA!「ドンチッチョ」

DonCiccioMenuレンチビストロが人気!スペインバルが熱い!などと惹句が踊るグルメ系雑誌。80年代バブルの時代、イタリア料理をイタめしと呼び、ティラミスと共に大ブームになったこともあった。日本に居ながらにして世界各国の料理やお酒を味わえる、そんな国に住んでいることを素直に嬉しく思う。けれど、世界各地に「これが和食?」という日本人以外の料理人が創作日本料理と呼ぶにも問題がある料理を出す店が多いように、日本国内の各国料理にも日本流のアレンジが施されている場合が多い。それでも日本で出される料理の水準はある程度高いから許せるけれど。

ItyneraMenu2して、京料理と九州料理が全く違うように、同じ国の料理でも地方によって大きく違う。和食、日本料理、という呼び方によっても料理のジャンルが変わってしまう。イタリア料理も同様のはず。「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」シチリア料理のお気軽レストラン。だからこそ、この店の名前はとても正確。そして正統イタリアン。決して広くない店内。リストランテのようにお高くもなく、気さくなスタッフ。シチリア島由来の食材、料理、お酒を楽しめる。スタッフたちをシチリア島に研修旅行に派遣するほどの徹底ぶり。それが店の味や雰囲気に見事に現れている希有な店。

RoccaStaffえば、少し早めに到着した私に「待たれますか、先に飲まれますか」と声を掛けるスタッフ。迷うことなく生ビールをお願いして、手書のメニューを眺め、何を食べようかと楽しみながら、ひとりお先にぐびり。メンバーが揃って乾杯の後、「今日のメニューをご紹介させていただきます」と流れるような説明が始まる。押し付けがましくなく、その日のおススメの食材をレコメンド。「イワシとウィキョウ、良いねぇ」「あ、それ食べよう!」わいわいと料理を選ぶ楽しさ。オーダーのボリュームを的確に把握し、全体のバランスを調整しながらさらにおススメしてくれる。気持の良い接客だ。

DessertWineDessertイン選びも同様。その日はワイン好きの若手建築家にお任せ。スタッフと楽しそうに談笑しながらオーダーした料理に合ったワインをセレクト。その日選んだのは、ロッカ、イティネラというシチリアのワイナリーの白。シチリア島はイタリアでも有数のワインの産地とのこと。香り高くきりりと冷えた辛口の白ワインを、アクアパッツアなどの魚料理に合わせる。ん、旨い。イタリア料理はシンプルな味付けと盛付けで、オキドリの要素がフランス料理よりも少ない。仲間たちとわいわいと食事をするのにぴったり。スタッフの対応もいずれも心地良く、料理の美味しさを増してくれる。

い店だよねぇ」「うん、さすがだ」見送られ店を出ると、仲間たちが賞賛のことばを次々に口にする。イタリア人の人なつっこさと、日本人の繊細さと家庭的な温かさを併せ持ったサービス。それをマニュアル的ではなく、柔軟で臨機応変かつ自然な振舞いで提供することで生まれる店の空気。シチリア由来のレシピ、食材、ワイン、そして日本人シェフの技。イタリアと日本の良いトコ取り。その日も実に満足!の夜だった。VIVA! ITALIA! VIVA! Don Ciccio!

夏こそ。「銀座 天一」渋谷東急店

Ten-ichiBeer経新聞の夕刊に、小さな広告がほぼ毎日のように掲載される。早春なら「たらの芽、白魚、蕗のとう」だったり、初夏には「若鮎、茗荷」だったり。そして梅雨明けした今の季節なら「夏こそ天一」となる。そう、昭和5年に銀座で創業した天ぷらや「銀座 天一」の広告だ。店舗は銀座の本店をはじめ、帝国ホテル、日本橋の高島屋など、全国に30店余り。銀座本店はちょっとお高いが、他の店ならお手頃価格のお気軽な名店。

KisuMyouga気楽夫婦が季節毎に通うのは、渋谷東急店。銀座本店や新宿伊勢丹店、玉川高島屋店などにも行ったけれど、この店がお気に入り。長閑な佇まいが気に入っている。他の店に比べてもさほどの高級感はない。揚げ場があるカウンタは10席程。土日は満席になるけれど、平日の夜ならほとんど予約も要らない。せいぜい2〜3組が揚げ場の前に座る程の混み具合。お気楽に、のんびりと季節の味を堪能することができる。

AyuAspalaずは茗荷とキス。茗荷は夏の香りがする。これは塩で。キスはやっぱりサクサクとした天ぷらだなぁ、などと語りながら。天ぷらの良さ、嬉しさは、食材で季節を味わうことができること。それも鮨屋と違い、野菜もたっぷりと食べられること。特にこの店はワンコ蕎麦のように、小鉢になくなったと見るやおろしダイコンを次々に追加してくれる。これが更に嬉しい。薄口の天つゆを掛け、おつまみ代わりにいただく。旨し、ヘルシー。

AnagoShishiTo節を感じるのは天一の広告も同様。「天一の春」というキャッチコピーを眺めながら、もう山菜の季節か、すっかり春だなぁと、出かけて行く。そして今回は「若鮎、茗荷」のキャッチに釣られて、夏だ!鮎を食べに行かなくちゃ、となった次第。鮎好きの2人。塩焼きももちろん大好きだけれど、若鮎を頭から噛り付き、腹のほろ苦さを丸ごと頂く天ぷらにも目がない。香魚の名の通り、上品な香りも一緒にパクリといただき、夏を堪能。

EbiMaruJuは穴子かなぁ」と妻。小食の2人は半分に分けていただく。中骨も良いおつまみ。白ワインがすすむ。目に鮮やかな空豆、シシトウ、イカ、アスパラ、茄子…。小食と言いながら、ほぼ全部のネタを揚げていただけるのは、薄めの上品な衣だからこそ。とは言え、真打ちの車海老が登場する頃にはすっかりお腹いっぱい。カリカリに揚がった頭がまた旨い。「海老は尻尾とか頭が美味しいよね」妻の言い分も良く判る。

して最後はデザート代わりに丸十。薩摩藩の紋が丸に十であることから、天ぷら屋ではサツマイモをそう呼ぶ。「美味しかったねぇ」と妻が満足そうに微笑む。父の見舞などで慌ただしかったこの春、残念ながら山菜を食べに伺うことができなかった。春の天一が味わえなかった分、夏の天一を満喫。夏こそ、天一。

全国制覇!達成記念?「日本料理 よのぜん」徳島

AwaodoriKaikanAwaodoriPostの好きなワカモノだった。出張仕事が多かった。北海道から沖縄まで、全国の主要な観光地、主要な街を巡った。だから10年以上も前に、未訪問県は徳島だけになっていた。そして10年程前、妻と一緒に淡路島の南端、ホテルアナガに宿泊し、翌日は徳島を訪ね飛行機で東京に帰る予定だった。ところが台風襲来。飛行機欠航。残念ながら鳴門海峡大橋を眺め、あの橋を渡れば徳島という場所から引き返し、新幹線で帰京。全国制覇を直前で逃した。それから訪問の機会がなかった街を出張でを訪れることになった。満を持して徳島に初上陸。これで全国47都道府県いずれかの街を全て訪問。全国制覇!

YonozenCounter石での仕事を終え、鳴門海峡大橋を渡り四国へ。ホテルへチェックインした後、初めての街を探索。さだまさしの小説のタイトルであり、映画化もされ、その名前を知ることになった眉山に向かう。ポストの上には阿波踊り像。眉山の麓にはロープウェーの駅にもなっている阿波踊り会館。残念ながら運転は終了の時間。頂上は諦める。それにしても、街は阿波踊りの気配に満ちている。他の街と同様に、商店街にはシャッターが下りた店が多い中、阿波踊りの文字やポスターだけが、街の誇りやエネルギーを秘めている。夏の祭に向かって、ひっそりとパワーを溜め込んでいるように見える。

TaiSakeBizan食店街を散策。これまで培った嗅覚を使い、独り酒の店を探す。こぢんまりとした店構え、控えめな看板、これだ!という1軒を覗いてみる。良い感じのカウンタ。ところがその日は満席。嗅覚は確かだったが、残念。続いて1軒。やや派手な佇まい、自信に溢れた店の顔つき「日本料理 よのぜん」に入店。ところが、カウンタ席、テーブル席には客がいない。失敗か。清潔に整えられたカウンタに座りぐいっとビール。美味い。1品目の鳴門鯛のシソ造りを噛みしめながら、地元の日本酒「眉山」をぐびり。これまた旨い。すると奥や2階の座敷にどんどん客が訪れる。どうやら地元でも人気の店らしい。

AyuAwaodori子を見て2軒目をハシゴか、シメに徳島ラーメンかとも思っていたけれど、アクセル全開。酒を追加し、鮎の一夜干しをオーダー。吉野川の近郊では良い鮎が獲れるらしい。これが大正解。三枚におろされた鮎が2尾、美しく盛付けられている。徳島名物のすだちをたっぷり絞り、かりかりの中骨をかりり。鮎の香ばしさとすだちの香りがたまらん旨さ。頭から尻尾まで微妙に変化する香りと味と歯触りが楽しめる1品。さらに追加したのは徳島名産の阿波尾鶏を山椒と焼いた一皿。ジューシーで粒山椒のスパイシーな香りとぴったり。旨い。この店を選んだ私の嗅覚は正しかった。全国制覇に独り乾杯!

れにしても、出張なんだよね」妻が訝る。1日の仕事が終わった後、訪問先との会食がない場合はプライベートな旅になる。その上、その街に行かなければ味わえない街の空気を、土地の名物を、酒を、楽しむことが訪問先との話題にも繋がる。「取って付けたでしょ」妻の突っ込みは厳しいけれど、事実…だよ。

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SINCE 1.May 2005