定宿宣言?「ハイアットリージェンシー京都」

EntranceFrontテル好きのお気楽夫婦。旅先で観光する時間よりも、ホテルでの快適な滞在を優先する。場合によっては、そのホテルに宿泊したいがために旅をすることもある。けれど今回の京都への旅の最大の目的は「たん熊北店 京都本店」で食事をすること。ホテルは二の次だった。選んだホテルは「ハイアットリージェンシー京都」。2人が好んで泊まるハイアット ホテル&リゾーツ グループのスタンダードクラスのホテル。1971年に京都パークホテルとして開業したホテルが、経営不振で2004年にモルガン・スタンレーに売却され、2006年にハイアットリージェンシー京都としてリニューアルオープン。

HyattRegencyRoomBathroom直、さほどの期待はしていなかった。お手頃なパッケージプランを選び、予約した。京都駅からタクシーでホテルに向う。東山七条、三十三間堂に隣接する絶好のロケーション。低層の建物、エントランスの竹林が爽やかで楚々とした表情。格子模様のデザインと照明の組合せが和風モダンな雰囲気。こぢんまりとしつつもラグジュアリー感溢れるロビー。好印象。案内された部屋に入ると窓からレストランが見え、視線が気になる。そう零すと、すかさずポーターが「お部屋の空き状況を確認いたします」とフロントに確認。隣接する養源院の緑が借景で望める部屋に交換していただく。グッジョブ!

WinecellarGym室内のデザインも和を基調にしたコンテンポラリー。茶器セットなども和モダン。けれど、デザイン優先ばかりではなく、機能的でもあり、バスルームには桧の椅子と洗い場付き。改装の際に元の客室の1.5倍にしたという部屋の広さも充分。なかなか快適。2人がホテル選びの際には必須設備のジムも充実。営業時間も早朝から深夜まで。何よりもウェアやシューズのレンタルが無料の上に、事前にサイズを伝えると部屋まで持って来てもらえる。きめ細やかなサービス。かなりの好感度アップ。美味しいランチのために朝からジムで汗を流し、シャワーを浴びてから外出という作戦実施が可能。

EggBenedictBreakfast食はルームサービスで。妻はお約束のエッグベネディクト。メニューにある場合はかなりの確率でオーダーし、各ホテルの味を食べ比べ。私は和定食。カマスの開き、シラス山椒、笊豆腐など、見た目は地味ながら一品一品が丁寧に作られている。和洋どちらも満足の味。200室弱の客室数ながら4つのレストラン、バーなど飲食部門も充実しているホテルならでは。ハイアットグループ内では基軸ブランドのハイアットリージェンシーというカテゴリーながら、スモールラグジュアリーがコンセプトのパークハイアット並みの設備とサービスだ。これはお気楽夫婦の好みにぴったりだ。

いホテルだったね。これから京都の定宿にしなきゃね」と満足げに微笑む妻。10年に1回程度の宿泊でも定宿と呼ぶのならそれも良し。それより、近くにフォーシーズンズホテルができるらしいよ。「え〜っ!じゃあ次はそっちだね♬」えっ!

そうだ、京都行こう「オトナの修学旅行」

GontaroSobaShochuる週末、お気楽夫婦は京都にいた。それぞれの仕事を終え、ホテルにチェックイン。翌日に備え夕食を軽く済ませようと街に出る。思い付いた店は「京都 権太呂 本店」。蕎麦好きの私、うどん好きの妻。観光客モードで出かけるにはぴったりの店だ。四条通から麩屋町通りを上る。老舗の風格漂う堂々の店構え。京風うどんすきで有名な権太呂。とは言え、小食の2人には多過ぎるためコース料理は避ける。まずは焼酎のそば湯割。酒のアテに「にしん棒炊き」「そば実豆腐」「つくね芋磯辺揚げ」「生麩田楽」。焼酎をちびちびと舐めながら、好物のにしんの棒炊きをつまむ。ん、しみじみ旨い。

AteShirauoSobaば十二節」という月替メニューがある権太呂。睦月「蛤そば」、皐月「茶きり」、葉月「大文字そば」、師走「討入そば」。京の風情溢れるメニューを眺めながら京都のそれぞれの季節を思う。そして、弥生「白魚そば」、名物「けいらん」うどんをチョイス。白魚の磯辺揚げと菜花、柔らかな出汁が優しい「白魚そば」。生姜の利いた卵餡かけがたっぷりの「けいらんうどん」は身体も温まるなかなかのお味。店を出て旅情溢れる麩屋町通りをのんびり歩く。「俵屋」「炭屋」「柊屋」の老舗高級旅館の御三家が軒を連ねる麩屋町通りは、町家を改装したこぢゃれた店も多く、散策が楽しい街並だ。

ChionInShinkonSan日、京の街をそぞろ歩く。まずは円山公園へ。枝垂桜の蕾はまだ固いけれど、陽気に誘われた人々がのんびりベンチに腰を下ろす。結婚記念だろうか、カメラマン付きで撮影をしているカップルがいたり、知恩院の三門の下では観光客の女の子たちをモデルにスケッチをしているおじさんがいたり。気持が柔らかくなっていく。観光客モード全開。寺社仏閣にさほど興味がないけれど、人のいる風景に心惹かれる。清水に向って歩いていると、公園で見かけた振袖と羽織袴の微笑ましいカップル。カメラマンにお願いして一緒に写真に収まる。仲良くね、などと余計なお世話のメッセージを残して去る2人。

SannenZakaKiyomizuDera年坂に差し掛かると驚くほどの人出。休日の渋谷のような賑わい。レンタルだろうか、慣れない着物を着た外国人観光客も目立つ。海外からの観光客もずいぶん戻ってきたようだ。修学旅行の生徒たちが歓声を上げながら通り過ぎて行く。ふ〜っと何十年も前の自らの修学旅行を思い出す。もしかしたらそれ以来の三年坂。あの頃はまだ京都市内を縦横に市電が走っていたんだよなぁ…などと遠い目になる。そうだ、これはオトナの修学旅行。急にそう思い立ち、テンションが上がる。自分向けにお土産などを選んでみる。ビールに合いそうな丹波黒豆の揚げ菓子。オトナの修学旅行らしい一品。

っぱり京都は良い街だね」東京に戻る新幹線の中で妻が呟く。そうだ、京都行こう。そのフレーズに誘われながらも何年も訪ねることのなかった街。途中下車して立ち寄った1日だけの旅だったけれど、久しぶりに京の香りを味わった。

KYOTO♡LOVE「たん熊北店 京都本店」

TankumaKitamiseTankumaれの店があった。京都の老舗、カウンタ割烹で有名な「たん熊北店」の京都本店。たん熊との出会いは玉川高島屋にある二子玉川店。当時店長だった本城さんと知り合い、その笑みが零れる料理に惚れ込み、足繁く通った。本城さんが独立して「用賀 本城」を出してからも(頻度は下がったが)度々訪れていた。カウンタに座り、何度か本店の話題になった。一度行ってみたいと本城さんに話すと、その度に「ぜひいらしてください。連絡しときます」と返してくれた。ここまでは良くある話。なかなか京都に行く機会もなく、月日が経った。たん熊で食べるためだけに京都に行くにはゼータク過ぎた。

HinaZensaiれで終わらないのがお気楽夫婦。ある週末に幸運が訪れた。2人それぞれが関西出張。妻は大阪、私は神戸、大阪、京都と3都を巡る。チャンス到来!すかさず「たん熊北店 京都本店」を予約。初めての訪問で夜は敷居が高いし、仕事の都合で伺える時間が遅くなってしまう。京都で(もちろん自腹で)1泊し、翌日のランチに伺おう。そんな作戦。ホテルでの朝食を軽く済ませ、午前中はジムで汗を流し、万全の体制で待望のランチに臨む。四条河原町から高瀬川に沿って、春の気配を楽しみながら木屋町通を歩く。店構えは意外なほどにこぢんまりとしている。ワクワク感を抑えながら入店。

ItaSanSashimi約したのはもちろんカウンタ席。遅めの時間での予約ということもあって他に客はいない。「いらっしゃいませ」名札を見れば倉本さんという板さんに迎えられる。残念ながら小食の2人。万全の体調で臨みはしたが、料理少なめの会席をオーダー。もちろん昼酒。たん熊オリジナル「熊彦」の純米吟醸。ぐびり。ん、旨い。そして最初にやってきた前菜で、いきなり心を鷲掴みにされる。彌生3月ひな祭り、男雛女雛の器に収まる眉目麗しい料理たち。小さな菱餅まで手の込んだ絶品料理。食べる前から目で美味しく、口に入れたら幸福になる味。妻の目には♡が飛び交っている。ぐびり。酒が進む。

YakimonoNImonoらっしゃいませ」カウンタ席に出入りする板さんたちが都度気持の良い挨拶をする。会話を聞いていると、倉本さんは店長さんらしい。玉川店や本城さんのお店に伺っていると伝えると、本城さんとは同世代で互いに良く知る仲だという。目の前で笹の飾り包丁の技を眺める。これがカウンタ席の醍醐味。聞けば近く裏千家の懐石があり、京都市内の名だたる料亭が担当して料理を供するのだという。「今から準備しないと間に合わないんです」鮮やかな包丁捌きのままにこやかに語る倉本さん。こうした会話が料理の味にさらなる奥行きを生む。絶品料理の裏にある京都らしいエピソードを伺い、焼肴を味わい、炊合せを楽しむ。実に幸福な時間だ。やっぱり良いなぁ、京都。KYOTO ♡ LOVE。

らっしゃいませ」イベントで外出していたという板さんたちが続々と帰って来ては顔を出す。「ウチのお客様が伺うからと、本城くんから電話が入っておりました」翌月の本城さんの予約の際に、本店に伺うと伝えたのだった。ホントに連絡していただいていたとは。「お世話になっております」社長の栗栖氏からもご挨拶いただく。上客ではないのにと冷や汗たらり。「お弁当じゃなく、会席頼んでおいて良かったね」妻がこっそり耳打ち。ふぅ。とは言え、一品一品に満足。本城さんの原点を訪ね、その技やカウンタ割烹でのもてなしの神髄を味わうことができた。

の席、谷崎潤一郎が座っていた席らしいよ」と妻。私が座ったのは、カウンタの左端。常連だった谷崎潤一郎の指定席だったという。げっ、それは畏れ多い。けれど、あの恍惚となる心地良い満足感を味わいに、いつかまた訪ねよう。

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SINCE 1.May 2005