アウェーな街で「なんば・ワンダーランド」

Nambakuidaoreめにお断りしておくと、大阪に関して、ましてやミナミに関しての土地勘、知識はほとんどない。キタと呼ばれる梅田・大阪駅周辺と、ミナミとの雰囲気の違いはぼんやり分かる。けれど、ミナミと呼ばれるエリアと難波と呼ぶエリアはどう違うのか、「難波」と「なんば」の使い分け方、こんな基本的なことがまず分からない。だいたい、難波駅となんば駅がぎょうさんあり過ぎ。JRは「JR難波駅」、近鉄と阪神は「大阪難波駅」(でも、路線は阪神なんば線)、南海と大阪市営地下鉄の表記は「なんば駅」(正式名称は難波駅らしい)。それらの駅と多くの路線が複雑に交わる。これは、分からんぜ。

3DTakashimaya宿や渋谷駅も分かり難いと言われたらその通り。大手町をひとつの駅だというのは無理があるとの指摘には頷くしかない。確かに、慣れだけの問題かもしれない。関西出張の際には、今では自然とエスカレーターの右側に乗り、左側を空けられる。きつねうどんと、たぬきそばに関しても頭では理解しているつもりだ。関西には「きつねそば」、「たぬきうどん」はないということも。*赤いきつねと緑のたぬきで覚えた。けれど、難波駅は分かり難かった。iPhoneの乗換案内で調べつつ、どの駅で降りるべきか迷った。出張の重いバッグを担ぎ、久しぶりに道を尋ねた。ようやくチェックイン。ふぅ。

WineShopHotelは蠱惑的だった。3Dで迫り来る巨大看板。手頃で美味しそうな店が軒を連ねる。ワクワク感が高まる。ちょっと小綺麗な香港のよう。けれど店を選べない。客引きのお兄ちゃんに声を掛けてもらえない。一度ホテルに戻り情報収集だと出直す。エレベータに乗り込もうとすると、目の前にワインボトルが並んでいる。お店のワインセラーかと思ったら、どうやらワインショップのようだ。聞けば「WINESHOP FUJIMARU」の支店で国産ワイン専門店だという。これは面白い。部屋飲みにするか。「お酒のアテやったらタカシマヤさんへ」と勧められ、iPhoneのマップを頼りにデパ地下にてお買物。

DinnerMItsuguんだアテは点天の揚げ餃子、北野坂串カツ、菜の花の辛子合え、イイダコの甘辛煮。合わせたワインは広島県三次ワイナリーのシャルドネスパークリング。ホテルの部屋でひとり、ソースは一度づけ!と呟きながら串カツを食べる。ほのかに温かいレンコンがさくっと美味しい。辛口の泡をぐびり。うん、良い香りだ。揚げ餃子をぱくり。旨い。泡をぐびり。ん、旨い。さすが食い倒れの街、安くて美味しい。食べ物にハズレはない。けれど…ちょっと侘しい独り飲み。だが、アウェーな街をひとりで彷徨うには、余りに疲れており、何よりお腹が空き過ぎていたのだ。

しっ、散歩に行こうか!」仕事が終わって駆けつけて来た妻と深夜に合流。妻は初めての難波。「おぉ〜っ!すごぉいっ、香港のようだ!」視点が近い。「おぉ〜っ、これが法善寺横町かぁ。あっ!なんばグランド花月だ♬」すっかりテンションが上がった妻。道頓堀、戎橋、千日前、延々と猥雑で未知の繁華街が南北に続き、東西に広がる。お気楽妻 イン・なんば・ワンダーランド。「なんだか楽しいねぇ」同感。次回は、難波がホームな誰かに案内してもらいながら。

おめでとう!の店「広東料理Foo & ル・プティポワソン」

4Ladiesめでたいことがあった。なかなか常人は達成できない結果を出した主人公はスカッシュ仲間のアスリート系女子。何度目かの応募でようやく東京マラソン2013の抽選に当たり、見事に完走し、さらには自己記録を更新した。それも、アマチュアランナーの憧れ、2度目のサブフォー(Sub Four:フルマラソンでの4時間切り)。実にめでたい。「めでたい」の語源は、賞賛するという意味の「愛ず(めず)」の連用形に「甚し(いたし)」が付いて、「めでいたし」となり、縮約形の「めでたい」となったという。つまり、賞賛する以外にない程素晴らしい、というのが元の意味。とすると、彼女の快挙は、めでたいのことば通り。ではさっそくと仲間を誘ってお祝いの企画。

Dumpling場は松陰神社前の「広東料理Foo」。アスリート系女子のご近所でもあり、スカッシュ仲間にもお馴染みの店。大会前の禁欲的な食生活期間に、扇情的なお店のブログ記事を読み悶々としていたという。だったら読まなきゃ良いじゃないか!という指摘は当たらない。食べてはいけない時ほど食べたいし、終わったら思いっきり食べたいというのが心情。良く分かる。それに彼女はストイックな生活を自ら強いて、目標を決めて、きちんとトレーニングに励むことができる。そんなタイプ。本人にそう評すると、「えぇ〜、そんなことないですよぉ」と謙遜するが、傍から見たら(周囲の仲間の中では)誰よりもきちんと自分を律することができる女性。だからこそのサブ4。

Nemokichiある平日の夜。三々五々集まろうと声を掛ける。参加を表明したメンバーは全部で5人。企画の仕込みのために早めに店に到着し、お先にぐびり。すると、私を除く4人はいずれも仕事で遅れる!とのメッセージ。あらら。できる女たち。しばらく独り酒。そして次に到着した小顔美女と差し飲み。「今日は紹興酒行きましょうか」と酒豪女子のセリフ。望むところだ!と酒が進む。続いて「あら、お邪魔でしょうか」とアスリート系女子が現れ、「あぁ〜っ!取っておいてくれた?」とシューマイをどうしても食べたいと宣言していた役員秘書が到着。「お酢とペッパーだけで食べると美味しいんですよ」との店長ねもきちくんのアドバイス通りに焼売を頬張り、「うぇ〜ん、美味しいねぇ♬もひとつ食べて良い?♡」と絶賛する女子力の高い秘書嬢。

Cake後に妻が到着。メンバーが揃ったところで、改めておめでとうの乾杯。「すごい記録だよね」「頑張ったよねぇ」「私には無理だわ」賛辞の嵐。お祝いだからと鮮魚の広東式姿蒸しをオーダー。「いや、ホント凄いですよね」魚を取り分けながら、ねもきちくんも絶賛。会話が弾み、箸が進み、酒が進む。そして、店のブログに掲載されたイチゴのプリン食べたい!というアスリート系女子のリクエストに合わせ、サプライズ企画。焼き菓子の名店「ル・プティポワソン」のマコちゃんにお願いした季節のタルトスペシャルがキャンドル付きで登場。さらに、書道の段持ちのねもきちくんにお願いしたメッセージが添えられる。「うわぁ〜っ!すごい!」お気楽妻並みに感情体温が低いアスリート系女子のテンションがあがる。ふふふ、してやったり♬

りがとう!飲み会の口実だと思ってたのにぃ〜っ!」Fooの大ファンであり、ル・プティポワソンの焼き菓子を愛するアスリート系女子。ツボに入って何より。「このケーキすっごい美味しい!」「皿に記録まで書いてある!ねもきちさん凄い!」喜んでいただけると幹事冥利に尽きる。賞賛すべき素晴らしい結果には、それに相応しい店がある。おめでとうとお祝いするには、味わって幸福になる料理が必要だ。それこそがFooの絶品広東料理であり、ル・プティポワソンのケーキ。そして、おめでとうのお裾分けをいただいた、スカッシュ仲間たちだった。

オトナの子供部屋「Bar LAPITA(ラピタ)」

YaguMasterは文化だ。故郷の酒文化を継承したい。それが市役所勤めを辞め、地元でバーを開業した理由のひとつだった。弟がバーを開店して3年。その開業の志の原点でもあり、酒文化のバトンを受け取りたかった先達の店を訪ねた。「南蛮居酒屋89(やぐ)」、それが店の名前。ご夫婦で店を始め、ご主人に先立たれた後もひとりで店を守るステキなマスターのいる店。開業から50年近くになろうとしている超老舗。数年前、弟に案内され初めて訪れた。いつ訪れても柔らかく温かく穏やかな空気が満ちている、居心地の良い店。

LemonMojitoが降って寒いですから、ホットバタードラム(Hot Buttered Rum)なんかいかがですか」何を飲もうかと相談したところ勧められた1杯。ふぅ〜っ。雪の街を歩き冷えきった身体に染み入る。妻はノンアルコールのカクテルを片手に、すっかり店に馴染んでいる。「失礼してタバコいただきます」薄暗い店内に紫煙がたなびく。「タバコのケースで作ったコマなんです。良かったらもらってってください」丁寧に作られた色とりどりの独楽。ひとつお土産にいただき店を出て、ほっこりした気分で弟の店に向う。

CounterLapitaピタという店の名前は、南太平洋の海洋民族の名前であり、現在休刊中の雑誌の名前からいただいたという。雑誌「ラピタ」のコンセプトは“大人の少年誌”。弟の店も、そんな佇まい。80年代を中心としたCDがある。ビートルズのアルバムジャケットが飾られている。『北の国から』シリーズなどの本、マンガ、雑誌のバックナンバーが並んでいる。大きなモニターに流れるのはサッカー日本代表の試合の模様だったり、懐かしの映画作品だったり。大きなスピーカーからは自宅では流せない音量で懐かしい曲が流れ、興に乗った客が演奏できるようにギター、ピアノ、ドラムセットまで揃っている。

CollectionKitanoKunikaraれ聴きたい♬」妻のリクエストは『MEGA HITS ‘80 BEST SELECTION』。エイジア、レインボー、ライオネル・リッチー、ワム、ロバート・パーマーなどがランダムに流れる。カウンタ席で吉田秋生の『海街diary』を読み耽る。妻は雑誌のバックナンバーに見入っている。まったり気分。すると、結婚式の2次会流れで飲んでいた客のひとりに声を掛けられる。小中学校の1つ下だった後輩だと言う。彼の顔と名前は一致しない。が、後輩くんは懐かしそうに話を続ける。すると、不思議なことに子供時代のエピソードが次々に溢れ出す。忘れていたいろなことを思い出す。ほぉ。

んだか時間を気にせずいられる店だね」と妻。ん、良い店になった。素人っぽさはなくなり、すっかりマスター然として客に接している弟。そんな彼が子供に戻って自分の部屋を持つとしたら、きっとこんな部屋なんだろうなぁ。好きな音楽をかけ、好きな映像を楽しみ、好きな酒を客と一緒に楽しむ。大人のおもちゃ箱のような、子供部屋のような、仲間が気軽に遊びに来られる、彼の城。先達とのコンセプトは違っても、彼にとっての酒文化がしっかりとこの場所で育っている。良い感じだ。マスター、長くじっくりと頑張れ!

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SINCE 1.May 2005