独りではない一人芝居『なにわバタフライ N.V』

NaniwaButterflyらの生誕50周年を記念して「三谷幸喜大感謝祭」と銘打ち、2011年に4本の舞台公演を行った三谷幸喜。多作だった分チケットも取れ易くなったのか、幸いにして全4作品を観ることができたお気楽夫婦。けれど、残念ながら全てに満足だった訳ではなかった。そして2012年。今年は「初」を追求するとのことで、初「チェーホフ」に挑み『桜の園』を上演。けれど、これまた残念ながらお気楽夫婦の嗜好には合致しなかった。このままではいかん!三谷離れが起きてしまう、灰皿投げの巨匠N川さんと同様に観なくなってしまうと危機感を抱いたお気楽夫婦。失礼ながら口直しとして名作『なにわバタフライ』NewVersionの再演のチケットをゲット。「初」ロングラン公演だという。

阪公演を皮切りに、東京、仙台、札幌、水戸、名古屋、金沢、高松、福岡と回り、100公演目を迎えるという。その東京公演初日。お気楽夫婦はPARCO劇場に向かった。主演の戸田恵子の幅広い活動によるものか、ロビーには溢れんばかりの祝花。そして開演前の前説に戸田恵子登場!芝居の背景を語り、舞台の小道具を紹介し、客席をいじり、開演前の硬めの空気を和らげる。“一人芝居”について柔らかい解説を披露する。一人芝居のパターンについて自ら短く演じ、観客を納得させる。「落語」が日本独特の一人芝居の1種という視点が印象的。刑事コロン○は、不自然な一人芝居の類型という説明には会場爆笑。なるほど、必要以上ではなく、押し付けがましくない予備知識は芝居を観る“目”を開かせる。初演は観られなかったために比較はできないけれど、客席をわくわくさせながらも適度にリラックスさせる嬉しい演出だ。そして、戸田恵子自らが舞台上で開演を告げる。

TodaKeikoすっと、舞台は本番の空気に変わる。戸田恵子のスイッチが入ったのが分かる。瞬間、鳥肌が立つ。あっという間に芝居の世界が広がる。そこからは芸達者の戸田恵子の文字通り独り舞台。ミヤコ蝶々の生涯を演じる戸田恵子に、ミヤコ蝶々そのものが降りて来る。というよりは、三谷幸喜が描き戸田恵子が演じるミヤコ蝶々を、舞台の上から本人が楽しそうに眺めている風情。最小限の小道具を実に巧みに使い、年齢を重ね、男性との遍歴を重ねる蝶々を舞台に登場させるばかりか、その男たちを出現させる。観客からは見えないはずの男たちが、時には荒々しく、情けなく、弱々しく、愛おしく、登場し、舞台上に佇んでいたりする。一人芝居のはずが、男たちの存在が確かに感じられる。実に自然で、実に上手い。分かっているのに、見事に騙される。舞台に引きづり込まれる。

っぱり三谷はやる時はやるね!それに、戸田恵子は凄いね!」上から目線のお気楽妻。けれど、全く同感。イチローだって打率は10割ではないし、遼くんは今週も予選落ち。才能あるものも、全てが上手くいく訳ではない。けれど、才能ある者たちの幸福な出会いは、高い確率で見事な作品を生む。『なにわバタフライN.V』は、まさしく才気あふれる2人の生んだ名作。優れたエンタテインメントに触れた夜。観た者たちを幸福にさせる作品。エンタテインメントはステキだ。

分が良いから、何か美味しいモノを食べに行きますか!」前夜の連絡なし、深夜帰りを見事にリカバリー。では、連日の沖縄料理でも行こうか!「良いねぇ、でも今夜は泡盛は禁止だよ!」了解。

酒瓶を抱えて「抱瓶」高円寺

UmiBudohMimiGahには相性というものがある。相性が良い相手とは、お互いに余計な気を遣わずに一緒に酒が飲める。話題を取り立てて探さなくとも会話が弾む。たまたま会話が途切れても気にならない。すぐにどちらからか軽口が飛び出す。お互いに相手に酒を勧めるでもなく、ましてや酒を差しつ差されつなどせず、自分のペースで淡々と酒を飲む。酒の肴についても主張し合わない。自分の好きなものを食べ、選んだものがたまたま好きなもの一緒だったらそれも良し。好みを押し付けず、相手の好みを気にせず、尊重する。だからこそリラックスして、美味しく食べ、楽しく飲むことができる。そんな相手がいる。

GoyaChanShimaRakkyo女からは隊長と呼ばれる。前職で同じ部門に配属された同期の中途入社。安かろうまずかろうの社員食堂に飽き足らず、美味しいランチを求めて結成した「ランチ隊」の隊長と隊員という関係。ランチ隊と言っても少数精鋭。彼女と2人だけのランチも多かった。そして、ランチで下見した店に飲みに出かけることも多く、彼女は「飲んべ隊員」と自称もしていた。妻を交えて食事に行く機会も多く、お気楽夫婦の自宅にも遊びに来たことも数度。遠慮なく軽口を言い合う妹のような、おせっかいを焼かれてしまう娘のような、扶養の責任のない姪っ子のような飲み仲間。

Live1Live2の日は沖縄料理を食べたいという隊員のリクエストで高円寺に向かう。老舗沖縄居酒屋の「抱瓶」。店に入ると「8時からライブがあるんですが、1階の席で良いですか」とスタッフ。島唄?「ウチナーロックなんですよ」へぇ。それもまた良し。了解。まずはオリオンビールの生で乾杯。海ぶどう、島らっきょうは彼女の、ミミガー、ゴーヤチャンプルは私のオーダー。それぞれきちんと旨い。飲んべ隊員と会うのは数ヶ月ぶり。数ヶ月ぶりの積る話があるような、ないような。とは言え、いつものように時間を忘れ、飲み、軽口を叩き合っていると、あっという間にライブの時間。ウチナーロックの大音響。

Live3Live4真撮ってきて良いですか」会話が全く不能な店内。まだスマホを持っていない隊員は、私のiPhoneを手に撮影に向かう。一人残された私はボトルでオーダーした泡盛をぐびり。ライブはさらに盛り上がる。エイサー衣装を着た店のスタッフが踊りだす。客も一緒に立ち上がり手拍子を始める。これは参加せねば。踊り、手拍子、汗をかき、泡盛をぐびり。良いライブだ。良い酒だ。楽しい夜だ。泡盛をさらにぐびり。

長ぉ〜!帰りますよ」ん?気のせいかちょっとだけタイムスリップしたような感覚。「店に置いて帰っちゃおうかと思いましたよ」と隊員。やはりウトウトしていたらしい。慌てて店を出て、自転車で帰る隊員を見送ってタクシーに乗り込む。妻に電話をしようとバッグの中を探ると飲み残した泡盛のボトル。ん、我ながら偉い。思わずほくそ笑む。そしてiPhoneを手に取ると、バッテリー残量0。ま、まずい。数秒前の笑みが凍り付く。酒瓶を抱えた脇の下に嫌な汗がたらり。

して、我が家で私を待っていたのは・・・。

Facebookで繋がって「再び知り合う縁」

Lobrosる日、2人の可愛い奥さまと代官山「IVY SQUARE」でランチ。2人は前職の会社の後輩。共に役員秘書の経験があり、3人それぞれ仕事上での接点はあった。同僚たちと一緒に飲みに出かけたこともあった。けれど、私も含め退職してそれぞれ数年。互いに退職してからの消息を知ることもなかった。まして、この3人で会うというのは自分たちでも不思議。そんな仲。そんな3人が会うことになったきっかけはFacebookだった。ある日、前職の後輩から友だちリクエスト。すると、芋づる式に現役やOBたちとどんどん繋がって行った。その中にいたのが2人。けれど、互いの書き込みにコメントしたり、あぁそんな生活をしているんだ、とぼんやり情報を知る程度。

MikanJamんなある日、日食用グラスをお譲りしますと書き込んだところ、大勢のFacebook仲間から欲しい!との反応。中でも「自由が丘まで取りに行きまぁす!」という2人とそれぞれ自由が丘で会うことになった。1人は時間の関係でグラスをお渡しするだけ。お礼にと手作りみかんジャムをいただき、もう1人はせっかくだからと一緒に自由が丘ランチ。やはりお礼にとケークドサレをいただいた。聞けば彼女は2人のお嬢さんの子育て真っ最中で、お子さんを連れずに外でランチをするのは出産以降初めてとのこと。そんな子育て生活のこと、ご主人の転勤で京都に住み「給料の全てを使って食い倒れてました!」などと退職後の話を聞く。彼女にとってはママでなかった頃を思い出す話。私にとっては前職の会社のイメージとは違った一面を垣間みる新鮮な話。あっという間に時間が経つ。「じゃあ次回は、今日ご一緒できなかったY先輩もお誘いしましょう!」と満面の笑みでお子さんを迎えに行く彼女を見送る。

Pizza久しぶりです!」「良い家見つかった?あぁ、それは良かったねぇ」メンバーの1人のご主人の転勤が決まり、引越準備で慌ただしいスケジュールを調整してのランチ。引越のこと、子供の教育のこと、親のこと、パートナーのこと、それぞれどんな本を読んでいたか…。互いに初めて交わす話題。同じ会社に勤務していた頃には知らなかった話。一緒に働いていたというベースはあるものの、改めて知り合った友人として会話をするような不思議な感覚。互いにある程度の人となりが分かっていて、同じ時間と空間をかつて共有した安心感もある。すっと、数年前に戻りながらも、お互いの今を語る。これからの生活を語る。懐かしく、同時に新鮮な会話。Facebookに書き込んだ話題もネタになる。過去と現在、リアルとネットという時間や空間を交錯する話題、共通の友人たちの消息。

IVY SQUAREゃあ元気でね!」「またお会いしましょうね!」お子さんのお迎えに向う奥さまを見送り、残った2人でランチ2次会。代官山蔦屋書店の2階、Anjinでまったり。すると、CCCに勤める前職の後輩、隣に座る奥様の同期の女性にばったり出会う。仕事中の彼女、一段落したところでご挨拶に来てくれた。さっそく名刺交換。これまた不思議なご縁。そう言えば、彼女とは都内のレストランで何度か偶然お会いしたことがあった。私自身のことも含め、広い意味で“遊び”が好きな前職の会社のOBたち。“はじめに遊びがあった”という企業のコンセプトワードそのままに、それぞれのフィールドで活躍している。そんなかつての同僚、後輩たちが元気で活き活きとしている様子を聞くのは嬉しいし、刺激にもなる。これもFacebookが繋いでくれた縁なのだろう。嬉しく、美味しく、楽しい時間を過ごすことができた。

うやってあなたが繋がるのは女子だけなんだよねぇ」と妻。言われてみればおっしゃる通り。知っていたのに、知らなかった同僚(の女性)たちと、再び知り合えた。とても楽しい午後だった。

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SINCE 1.May 2005