危ない。ライブエンターテインメントが危機だ。春先に4週連続予約していた芝居が全て公演中止。映画館に行く機会が激減し、代わりに自宅でDVD三昧の日々。オンラインで「リリパットアーミーII」の朗読劇を観たり、サザンの無観客ライブをTV画面越しに観たりはしたものの、ライブ会場に行けない。年に30〜40本の公演を観るお気楽夫婦が消費する金額だけでもそこそこの水準。それが今年はほぼ「0円」なのだ。
妻が勤務し、私がかつて在籍した「ぴあ」は今や堂々たる上場企業で、この春にアリーナまで建設した。そのぴあの事業の根幹はライブエンターテインメント。すなわち、ぴあの危機でもある。演劇やコンサートは不要不急のもの。けれども、多くの人たちの生活を豊かにし、元気に生きていくためのエネルギーでもある。さらには、TVやパソコンの画面越しに観るだけではなく、そのライブ会場にいて初めて味わえる感動がある。
アーティストや劇団の人気に応じて会場は大きくなり、主催者は満席を目指してチケットを販売する。チケット販売状況のマーケティングにより、追加公演やロングラン公演を行う。そんな興行のあり方は、根本的に変わらざるを得ない。客同士の間隔を十分取るというのは興行においては大きすぎる課題だ。しかし、エンタメ業界だけではなく、ビジネスモデルの大転換を実現しない限り、新たな地平を開くことはできない。
お気楽夫婦が六本木を旅したもうひとつの目的は、美術館巡り。「国立新美術館」「森美術館」「サントリー美術館」など、六本木は今や上野に引けを取らない美術のメッカ。ミッドタウンでランチの後「国立新美術館」で開催中の『古典×現代2020 時空を超える日本のアート』という企画展へ。浮世絵などの古典を本歌に、現代の作家が描くアートをペアで展示する視点が面白い。感染予防対策の為、日時指定で入場者を限定。
続いて「森アーツセンターギャラリー」で開催している『おいしい浮世絵展』へ。どちらの美術展も予定通り東京オリンピックが開催されていたら、インバウンドの観光客に大人気であったであろう企画。単なる浮世絵の展示に止まらず、浮世絵で描かれた寿司、蕎麦、天ぷら、鰻、など、現代の和食に繋がる江戸の食文化が詳細に解説される。東海道五十三次の宿場毎の名物料理なども紹介され、エンタメ感溢れる楽しい展示だ。
こちらの企画展も感染拡大防止策が厳密に取られていた。入場の日時指定はもちろん、美術館への直通エレベーターは人数を制限し、エレベーター内の立ち位置までが指定されている。入場口では体温を計測され、マスク着用と手のアルコール消毒も必須。ここまで徹底されると鑑賞する客側も自然とお互いに距離を取り、人気の美術展にありがちな密状態も発生しない。皮肉なことにコロナ対策でとても快適に鑑賞できる環境だ。
ライブエンターテインメントのジャンルによっては新たな試みによって損益分岐点が上がってしまい、興行として成立しない可能性もある。この2つの美術展もきっと同様。感染防止策を行なってコストアップ→来場者の限定→収益の悪化という単純な構造だ。快適に鑑賞できた観客に対し入場料の値上を求めることも個人的には応じたいが限界があるだろう。残念ながら私には解決策がないが、自分たちにできる範囲で応援したい。
前年から予約していたLA便の代わりに、それならと航空券を予約した沖縄便をキャンセルし、六本木に旅したお気楽夫婦。滞在最後の日に長かった梅雨が明けた。「止まない雨はない」とコロナ禍の中で多くの人々は口にする。終わらないと思うほどだった2020年の梅雨も明けた。だからと言ってこの状況が終息するとは限らない。けれど、その日の東京上空に現れた青空は、きっと終わると思える爽やかさだった。祈疫病退散!
2020年の夏は、誰にとっても忘れられない夏になるのだろう。お気楽夫婦の夏は、LAに赴任した友人夫妻を訪ねるはずだった西海岸の旅のHND-LAXの航空券をキャンセルし(欠航だからキャンセルではないのだが)、代わりに予約した沖縄便にも搭乗できなかった。前年末から買い揃えてあった「ヴァカンス本2020」を自宅で読むのも悔しい。そこで2人はタクシーでも行けるご近所の旅に出た。*vol.3の欠番はまたの機会に。
宿泊先は六本木の「グランドハイアット東京」。お気に入りの「グランドハイアット香港」に行けないからと、同じブランドのホテルをチョイス。選択先のホテルの主な条件は、ジムと眺めて楽しいプールがあること(そしてコロナ禍の今でも営業していること)、クラブラウンジがあってのんびりフリーフローが楽しめること、客室に読書に適したスペースがあること。すなわちいつもの香港滞在と同様のホテルライフが目的だ。
お気楽妻はホテル内のテラスに並ぶパラソルの下で、ヴァカンス用に購入したワンピースを纏ってご機嫌のご様子。数日前「せっかく買ったのに、どこで着たら良いんだろう」と嘆いていたのが嘘のよう。南の島のリゾートや、サンタモニカの海岸ではなくても、リゾート気分は味わえる。ホテルに滞在する時間が長く、観光に出かける時間が限られているお気楽夫婦の旅。どこに滞在しようが、実は大きな違いはない。
グランドハイアット東京の魅力のひとつは、室内プールの傍で輝くジャクージ(ジャクージの縁に照明が入っている)に代表されるスタイリッシュな佇まい。インスタ映えというか、実に絵になる場所が多いのだ。*実はスパエリアは撮影禁止。この画像をアップしたらホテルからお咎めがあるかもしれない(^^;)ので先に謝っておく。ごめんなさい。ジムで汗を流し、このプールで歩き(笑)、ジャクージに浸かるというのが、ホテル滞在午前中の日課だ。
滞在した客室は、ちょっと広い部屋。L字型のソファに寝転んでも、窓際の椅子に座って外を眺めながらでも、読書がたっぷり楽しめる。通勤の電車の中で読んでも、自宅のリビングルームのソファで読んでも、同じ一冊だけれど、ゆったりとした気分で読む一冊は格別なのだ。ちなみに六本木で読み終えたのは、伊集院静の『琥珀の夢』。サントリー創業者である鳥井信治郎の一代記。初の国産ウイスキー誕生の物語にココロ躍る。
そして、話題のワーケーションではないけれど、大きなデスクも備えられた客室では仕事も堪能できる(笑)。パソコンを持参したお気楽夫婦は、会社からのメールには即座に反応。海外にいない分だけ時差なしで返信。いつものことだから特にストレスもなく、お互いに自然に仕事をホテル内に持ち込む。交通費や備品購入などの決裁もリモートで可能。小さな会社だからこそ、小回りの利くシステムと体制にしている。快適。
窓の外を眺めれば、青山霊園や神宮外苑の緑の奥に新宿のスカイスクレーパー群、それらと競うように渋谷の高層ビルの林が広がる。地図好きの2人にとって、高い場所から眺める街の景色はいつまでも見飽きることのないパノラマ。ビルのひとつひとつをパソコンのMapで確かめ、新たなビルの発見に喜ぶ。眺める場所によって街と街の距離感が変わり、思いも掛けない位置に現れる街のランドマークを見つけて楽しむ。快感。
「悪くないね、このホテルも」お気楽妻の高めの目線からの感想。大好きな「パークハイアット東京」と比べ、ゲストとスタッフとの絶妙な距離感が感じられず、ちょっと気取り過ぎの接客がこれまで不満だったのだ。それが今回の滞在では快適に過ごせた模様。それは何よりだ。いつものように(都内ではあるけれど)過ごす夏のヴァカンス。次回の(ふふふ。実はすでに決まっている)都内近郊ホテルクルーズも、楽しみだ。