お気楽夫婦のホテル探しは、ジムの施設が充実していることが第1条件。当初旅先に予定していた香港では、いつものグランドハイアットとインターコンチだった。そして、台北でもグランドハイアットとリージェントという全く同じ組合せになった。*香港のインタコは2021年にリージェントとしてリブランド予定。ジムの充実度=ラグジュアリー度は比例する、というのが2人のホテル選びの法則。そして今回もその法則は正しかった。
「グランドハイアット台北」は、かつて世界一の高さを誇った「台北101」とスカイウォークで直結する便利な場所。雨が多かった滞在前半は101に通い詰め、その利便性を満喫。貯まったポイントでアップグレードした客室は「グランドエグゼクティブスイート」という83㎡の眺めの良い部屋。ラウンジのサービスも(もちろん、わんこシャンパンも)充実しており、ホテルライフ優先のお気楽夫婦としては、満足できる滞在だ。
客室で特筆すべきは水周りの充実度だ。角部屋のため、2面の明るい窓から光が射し、ツインボウルの洗面スペース、プールを見下ろせるビューバス、シャワーブース、そして何よりもウォシュレット付き(ToToだった)付きのトイレが嬉しい。リビングルームのソファ、カウチ、ベッドルームなど、本を読む場所にも困らない。2つあるトイレ、ウェイティングスペースの椅子を持て余すのがせいぜいの難点だ。
「ここの施設は良いねぇ」と妻が絶賛したのは、ジム&スパ。有酸素系、筋トレ系のマシンジム、スタジオが独立しており、スチーム&ドライサウナなどのスパ施設が充実。これは使い倒さなきゃ!と、もちろん毎朝ジムで走り、ジャクージに浸かり、たっぷりと汗を流した。さっぱりした後は台湾ビールをぐびり。小籠包をぱくり、部屋に戻って読書、夕刻はわんこシャンパンという嬉しい無限(じゃないけど)ループ生活だ。
台北市内を新都心からダウンタウンに移動して、前回の台北訪問の際にも宿泊した「リージェント台北」にチェックイン。街の雰囲気が大きく変わり、お気楽夫婦がワクワクする猥雑な街並みになる。ホテルの周囲には足裏マッサージやら小籠包の名店が点在する。それらの店にどこも歩いて移動できる嬉しいロケーションだ。中でもすっかりお気に入りの「足道養生会館」という店には2度も(足裏&全身マッサージ)訪問した。
リージェント台北の魅力は「タイパンラウンジ」というクラブフロアのラウンジだ。眼下には康樂公園と林森公園の緑が(NYCのセントラル・パークのように)広がり、その周縁のビル群、その奥に台北101が聳える抜群の眺望。カクテルタイムも、朝食も、丁寧に作られた料理がビュフェ形式で美しく盛り付けられている。窓際に席を取り、そんな風景を眺めながらシャンパン♬どこでも同じスタイルながら、至極の時間だ。
客室はIHG(インタコ)のメンバーズ特典でタイパンジュニアスイートにアップグレードされた。リビングルームとベッドルームがTVを嵌め込んだ壁で仕切られ、そのTVは180度回転し、どちらからでも視られるという合理的な設計。65㎡とコンパクトながら、ラウンジと同様にパークビュー。窓からの景色を楽しみながらゆったりと過ごせる客室だ。ラウンジと同じフロアにあって、ラウンジのアクセスに便利なのも嬉しい。
窓から暮れ行く街を見下ろすと、オフィスビルに明かりが灯り、野外音楽場のようなステージが陰った緑の中に浮かび上がる。ビル群の奥には台北101が周囲を睥睨するように聳え立つ。ラウンジから眺める景色と違い、自分たちの客室からの眺めは独占できる所有感がある。自分たちだけのビュー。飽きず眺めてはビールをグビリ。良い夜だ。良い旅だった。旅の前半に滞在した101方面を眺めながら独り言つ。
チェックインの朝、ラウンジでのんびりと朝食を取る。「野菜が新鮮で良いよね」妻の評価はサラダの野菜のシャキシャキ感で大きく変わる。その点でこのホテルの評価は高い。確かに小ぢんまりとしたラウンジながらメニューは豊富で、料理の味や見た目(これ大事)の水準も高い。「次に来る時も、今回と同じホテルが良いかなぁ」控えめな表現ながら、これが妻の最大級の賛辞。台北の快適ホテル、ぜひ次回も。
久し振りに台湾を訪れた。またいつでも行けると思っていたが、気が付くと前回の訪問から四半世紀近くが経っていた。びっくり。香港に恋をした妻は旅先を台湾にすることはなかったのだ。実は今年もその香港を旅する計画だった。ところが、香港のワカモノたちが香港を守るための抗議活動を行っているため、心情的には応援しているものの、飛行機が飛ばない最悪のケースを避け、急遽予約を全て変更することになったのだ。
直前まで香港に行くつもりで計画をしていたものの、旅先を変更してからのの気持の切替は速い。滞在を台北に絞り、いつもの通りに美味しい中華料理を食べ、ホテルでのんびりする(毎日ジムで走るけどね)ことをテーマに新たに旅程を立てた。ホテルにチェックインして早々に、まずは小籠包の食べ比べだ!と台北に何店かある「鼎泰豊」の内、ホテルの近所にある「101店」を視察。予想以上に物凄い行列。80分待ちだ!
鼎泰豐には作戦を練って訪問し直すことにして、巨大なフードコート周辺を調査。ともかくデカい。カップルや親子連れが笑顔で食事をしつつ、大きな声で会話しており、そのエネルギーがフードコートに充満している。ワクワクする風景だ。しばらく歩き回り、ある店の前で立ち止まると、妻の目が輝いた。「甘牌焼味(カムズ・ローストグース)」という香港で大人気の店。余りの行列に香港では食べるのを諦めた繁盛店だ。
「明日のランチはここに来るよっ!」香港ほどの行列ではないことをチャンスと見た妻が宣言した。御意。そして翌日、午前中にホテルのジムでたっぷりと汗を流し、万全の体調でローストグースに臨むお気楽夫婦。外はパリパリ、中はジューシーというお約束の表現ながら、絶妙な甘さのソースもぴったりで、お気楽夫婦好み。ゼータクにも「蜜汁叉焼」もオーダーし、お昼からたっぷりと肉三昧。満足の昼餉だ。
小籠包の食べ比べは「點水樓」からスタート。地元で人気の店ということで、ホテルのコンシェルジュに予約してもらい、SOGO復興店にある店に向かう。天井が高く、デパートの中にあるのに落ち着いた雰囲気。広い店内は地元客で賑わっている。さっそくお目当ての小籠包をいただくと、やや厚めの皮の中の濃いめのスープ。ん、好みの味。他にも、皮にゴマたっぷりの「ナズナの中華パイ」がパリパリ旨し。お気に入り。
小籠包2店舗目は、万全を期して「鼎泰豊101店」へ。事前の下見の結果、開店早々が良いだろうと11時に店に到着。番号表をもらい待つことしばし。20分ほどで店内へ。すると、奥に奥にと店が広がり、客が入って行く毎にロールスクリーンを上げ、新たな客を案内する。接客は丁寧で、笑顔あり。そして小籠包は、やはり圧倒的に旨い。脱帽。他店の追随を許さない人気が分かる。日本の鼎泰豊(美味しいけどね)とは別格。
小籠包3店舗目は「金品茶樓」へ。ツアー客も多く、並んで待つ人たちを横目に(やはりホテルのコンシェルジュに予約依頼)小ぎれいな店内へ。この店の小籠包はアッサリ目の味。ショウガが小椀にたっぷりで旨し。他にも香港を思いつつ海老ワンタン麺をいただく。麺は香港麺ではないけれど、魚介系のスープはスッキリと美味しい。翌日は小籠包4店舗目として「京鼎樓」へ行こうと思ったものの、さすがに断念。
「台湾、期待以上に美味しかったねぇ」最終日、インルームダイニングで「牛肉麺」と「海南鶏飯」を食べながら、お気楽妻が満足そうに微笑む。台湾の定番「魯肉飯」も「担仔麺」も味わい、何ヶ所かの市場を訪ねて元気な魚介類や野菜を眺め(市場巡りが好き)、ホテルのラウンジの食事にもご満悦。香港に行けなかったことが残念で淋しかったことはすっかり忘れた。香港のワカモノたちのお陰で台湾を再発見できた。
妻にとって「食在香港」だったが、台湾株が急上昇した模様。「台湾、また来なきゃね。今度は台南行って担仔麺食べたいし、タピオカミルクティーの発祥は台中なんだって♬」と妻。「食在台湾」食は台湾にも在り。
10年余り前に故郷に住む母が逝き、数年前に父が亡くなった今、“実家”も“生家”も無くなり、“故郷”は只の出身地になった。18年しか住んでいなかった故郷、それも物心付いてからの計算だと十数年しか知らない地方であり、それでももちろん10代という濃厚な時代を過ごした特別な土地でもある。そして、学生時代からアルバイトに明け暮れた私は、盆暮れに帰省するという習慣がなく、自分の故郷を知る機会がなかった。
母が病に倒れ療養生活を続けることになって以降、見舞いのために定期的に帰省することになった。妻にとっては未知の街への旅となり、私にとっては故郷を再発見する旅になった。オトナになってから訪ねる故郷は、美味しい食材の宝庫だった。*空港の名前もいつの間にか「おいしい庄内空港」という愛称になっていた。だだちゃ豆、温海カブ、庄内米、岩牡蠣、月山筍、…子供の頃に身近にあった食材は、実は貴重なものだったのだ。
この夏、故郷を久しぶりに訪れた。母の13回忌と、父の7回忌。仲が良かった亡き父母は、偶然にも同じタイミングでお気楽夫婦を招いてくれた。実際に招いたのは父母と一緒に暮らした次弟だけれど、彼の日程調整の遅さで航空券が予約できず、久しぶりの上越新幹線と在来線特急を乗り継いでの帰省。お陰で美味しい駅弁を発見したり、ラウンジ付きの車両で日本海の風景を楽しんだり、潜在的な“乗り鉄”の血を確認できた。
ところで、今回の“旅”で楽しみにしていた宿があった。2018年に、米所である庄内平野のランドスケープ、水田の中に建てられた「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」というホテルだ。その土地に住む人たちにとっては、当たり前で身近すぎる水田風景の中にホテルを作る。他所者たる代表の山中氏が、地元の人には決して発想できない、他所から見た庄内の美しさを象徴としたプロジェクトだと言う。
鶴岡市が「サイエンスパーク」を構想し、慶應大学と協定を交わし「先端科学研究所」を開所したのが2001年。その後、「スパイバー」をはじめとしたサイエンスベンチャー企業の拠点となり、プロジェクトの最終段階で、「ヤマガタデザイン」という民間主導で建築されたのがこのホテルなのだ。山中代表は慶応出身、大手不動産会社からスパイバーに転職、鶴岡に移住し、その後「ヤマガタデザイン」を立ち上げた。
ホテルの設計は世界的な建築家である坂茂氏。水田に浮かぶように建つ木造2階建てのホテルの姿は実に壮観。向かいに建つ「慶應大学先端研」のバイオラボ棟、サイエンスベンチャー各社のメタリックな外観の社屋を眺めていると、ここは本当に長閑な我が故郷か?と不思議に思う風景だ。チェックインは大きな吹き抜けに掛かる階段を上った2階フロント。その奥には開放的なライブラリーがある。実にワクワクする風景だ。
フロントやレストランがあるメイン棟から三方にガラス張りの空中回廊が伸び、各宿泊等を繋ぐ。客室はシンプルでコンパクトな造りながら、お気楽夫婦が予約した部屋は大きな(外から内部が見えない)ミラーガラス窓の先にテラス付き。部屋の狭さを感じさせないデザイン。いい部屋だ。いい眺めだ。ただ長閑な水田の風景が広がるだけなのに。子供の頃には見慣れていた、何もないと言いかねないような場所なのに。
宿泊棟の先には、水田に突き出した形でフィットネスジムと温浴施設がある。半地下になったジムのマシンに乗ると、視線がちょうど水田の水面になる。目の前をアメンボがスイスイと泳いでいる。トンボが水を飲みに来る。ふふふ。思わず笑みが零れる。これは気持ちのいいジムだ。汗を流した後は上階の温泉へ。円形のドーム状の屋根の下に、半露天風呂まで付いた本格的なスパ。水田の向こうの山を眺め、ふぅと息を吐く。
「良いホテルだね」地元の食材を堪能し、ライブラリーでのんびり読書をし、緑の田園風景を眺めていたお気楽妻が呟いた。それは良かった。これでホテルフリークの妻の折り紙付きの宿になった。こうしてまた故郷を再発見することができた。東京から飛行機で1時間、空港から車で20分。好きな旅先の一つとして(笑)魅力が増した、美味しい食材に溢れた山形県鶴岡市のオススメの宿。「また行くよ!」と妻。もちろん喜んで!