丸の内に余り縁のない半生を過ごして来た。通勤したこともなく、馴染みの店もない。せいぜいが○菱地所の皆さんと「大丸有」のエコポイントプロジェクトでご一緒したくらい。*あぁ、そうか。10年ほど前のその仕事では何ヶ月か日参したけれど、記憶から消えていた。決して黒歴史ではないのだが。地所と言えば、大手町、丸の内、有楽町の大家さん。その頭文字を取って、「大丸有」と名付け、エリアマネジメントを行なっているのだ。
地所が丸の内に日本初のオフィスビル「三菱一号館」を建設したのが1894年。1968年に解体され、2010年にレプリカ復元(決して歴史的建造物ではない)され、「三菱一号館美術館」として開館。そこで開催中の『フィリップス・コレクション展』を鑑賞。“全員巨匠”というキャッチ通りの美術展。遠目で、あ!マティスだ、ゴッホだ、ユトリロだ!と分かる作品ばかり。レプリカとは言え味わいある建物と融合して、なかなかの趣き。
美術鑑賞で心を満たした後は、空腹を満たそう!と予約してあった「丘如春/YAUMAY(ヤウメイ)」という点心専門店へ。場所は美術館のすぐ隣の東京會舘、東京商工会議所があった場所に建てられた「丸の内二重橋ビル」の商業施設「二重橋スクエア」の2階。この建物は丸の内仲通り側が二重橋スクエア、皇居側に東京商工会議所、東京會舘が同居し、上層階は三菱地所と東京會舘が共同で所有するオフィスという面白い作りだ。
店は入口を入って左側がバーコーナー、右に進むと巨大なオープンキッチンを横目に見ながら正面に広い客席を見渡す、という新鮮なレイアウト。オープンキッチンと客席の間には良くあるガラスの壁もなく、キッチン上部にある巨大な換気扇が煙や臭いを吸い上げている。出来たばかりということもあるが、清潔感溢れる店内は高感度高し。家具や内装も香港にありそうな雰囲気。飲茶好きのお気楽夫婦の期待は高まる。
最初の一皿は、点心といえばの「海老蒸餃子」。プリプリのエビがゼータクにパンパンに入っている。皮は薄くモチモチで、繊細で上品な味。「ん〜、これはなかなか美味しいねぇ」早くもお気楽妻はOKのサインを出し始めている。まだまだ。評価は焼き物を味わってからじゃないか。とは言え、順調な出だしに頬が緩む。だいたい、少食の2人にとって、夜でも軽めに点心が食べられる“点心専門”というのが嬉しい。
焼き物は、これも定番の「ハニーローストポーク」。肉汁たっぷりジューシーで、脂が甘く、表面がカリッとして、ガッツリと旨い。先日、治療先の先生から膝の怪我が治らないのはタンパク質が不足しているからと断言され、肉肉しい食事を心掛けている。そんな今の私にぴったりのメニュー。バランス良く「台湾豆苗ガーリック炒め」と合わせ技で1本。生ビールをグビリ。く〜っつ、んまい。至福の時間が流れる。
店の名物料理「蝦夷鹿肉のパイ包み」は、楽しみにしていた一皿。サクッとしたパイ皮の中の鹿肉(ロンドンで有名になったメニューらしい)は、濃厚で黒胡椒が効き、というか効き過ぎており、美味しいのだけれど汗ダラダラ。臭みを消すために必要以上に黒胡椒が入っているのか。「豚肉でも良いんじゃないかと思う」という妻が名言を吐いた。全く同感。好きなのに辛味に弱いという(涙)私にとっては辛い味。とは言え大満足。
サクッと食べて(点心はこれが良い)、外に出ると丸の内仲通りはまだ宵のうち。以前なら週末はひっそりとしていたこの街も、明るくオシャレに大変身。地所さん、頑張ったなぁとしみじみ思う。ブランドショップの並ぶ街並みあり、美術館あり、香港まで行かずとも美味しい点心の店ありと、オフィス街に奥行きができ、深みができた。街並みがキレー過ぎて陰がなく、人によそよそしいから、ワクワク感はまだないけれど。
「くまモン発見!」すかさず観光客の如く自撮りする2人。そうか、お気楽夫婦にとっては、この街はホームではなく、旅先なのだ。渋谷、二子、シモキタのように、我が街として歩いてはおらず、ふわふわと少し浮いている感じ。そんな視線で見直せば、実に良い街なのだ。そうだ、また訪れよう。きっと、まだまだしばらくは他所者扱いされてしまうだろうけれど、一方的に告白しよう。丸の内、LOVE。
2019年初春の「ビストロ808」第1弾は、柑橘類がテーマ。毎日が乾燥注意報続きで、記録的に流行っているインフルエンザや、風邪を予防するためにも、たっぷりビタミンCを摂ろう!と言う企画。まず買い込んだのは、たまたま(完熟金柑)だ。レギュラーメニューのキャロットラペをアレンジし、金柑を加える。ポロネギのマリネ、小さなパイにサラダを乗せたキッシュと一緒に盛り付け、最初の一皿が完成。
続く2皿目は、サーモンのリエット チコリ乗せ。いつもの「サバのリエット」にかわり、鮭缶を使ったサーモンのリエット。サバ缶を使ったリエットと同様に、丁寧に中骨や皮、血合いの部分を除き、クリームチーズなどと丁寧に混ぜる。以上。とても簡単で美味しいオススメのメニュー。今回は気取ってチコリに盛り付けてみる。あらら豪華。チコリの歯応えと、サーモンの優しい味が良い組合せだ。我ながら美味しいぞ。
3皿目はビジュアル勝負。白いキューブ状のモノは?「大根?」「冬瓜?」残念。「こんにゃく?」「ナタデココ?」惜しい?正解は、イカ。ハチミツに浸けたたまたまと、同じくらいの大きさに切り揃えたイカを和えて、交互に並べる。ネットで見つけたレシピにバルサミコ酢などの味付けを加え、お気楽夫婦好みの味にする。初めて作る料理は2人で味や盛付けを評価し、ゲストに出せるか、2度目があるかを判断するのだ。
次はフキノトウのグラタン。デパ地下で発見して衝動買いした食材は、買った後にメニューを決めることがある。今回のフキノトウがその典型。あぁ、もう春なんだなぁと買った後に、慌ててレシピを探す。もちろん食材として扱ったことはない。アクが強く、切った側から変色していく面倒なやつを巧く調理できた。「オトナの味だね。香りが良いね」とゲストにも好評。春のレギュラーメニューになりそうな雰囲気だ。
オレンジをたっぷり使った「タコとオレンジのセビーチェ」は、ご近所のJA直売所でミカンとして売っていたモノ(実はオレンジだった!)を大量に買ったことから生まれたメニュー。オレンジ、タコの白、プティトマトの赤をバランス良く盛付け、フレッシュチャーピルの緑を添える。目に鮮やかで食欲をそそる。それにしても料理は盛付け8割、味2割?盛付けには自信があるオレ。その意味では料理上手と言えるだろう。
メインの肉料理は、豚と金柑の低温ロースト。事前に調理して妻の舌で試し、好評だったためメニュー入りとなった。低温でローストした豚ロース肉は、大きめのひと口サイズながらとても柔らかい。フレッシュローズマリーが香り付けで良い仕事をするのだが、残った仲間達がまだ冷蔵庫の中で眠っている。ハーブを使い切るのは難しい。皿や調理器具のセレクトも料理の内。この赤いストウブは料理上手に見える必殺技だ。
「おぉ〜っ!ナオミちゃん、優勝だ!」その日は全豪OPENテニス女子シングルスの決勝。参加メンバーでTV中継を観入っていた。サービスが決まって優勝が決定した瞬間、思わず全員でハイタッチ。渋谷ハチ公前交差点のワカモノたちの気持ちが分かる。TVの前に集まってナオミちゃんと一緒に記念撮影。ワイワイと仲間たちと観戦するスポーツは楽しい。そして何より仲間たちとワイワイと飲むワインは美味しい。
「たまたま、どの料理も美味しかったなぁ」「フキノトウのグラタン絶品!」その日のゲスト、スカッシュ仲間の世田谷マダムたちから口々に料理をお褒めいただく。嬉しい限り。持って来ていただいたワインも順調に空になった。柑橘系料理で風邪を予防し、アルコールで消毒もできた。冬の日本のお約束の言い回し。2019年も「ビストロ808」不定期ながら好評営業中。次回の皆さまのご来店、お待ちしてます♬
忘年会シーズンが嵐のように去り、新年会もようやく落ち着いた。気が付けば、あっと言う間に如月2月だ。忘年会は、文字通り年忘れの宴会。1年間お疲れ様と杯を交わす。それに対し新年会は、これまた文字通り、新しい年を祝う会。忘年会よりもオフィシャルな意味合いが強く、会社単位で開催されたり、賀詞交換会という呼称で公的機関が開催する場合が多い。同窓会やクラス会などの開催も新年の場合がほとんどか。
友人同士の場合は、忘年会でスケジュールが合わなかったから、新年会というケースが多い。けれども、年末の慌ただしさに追いかけられず、年が明けたという新たな気持ちで、何となく時間的にも落ち着いて会える新年会が割と(いや、かなり)好きだ。年末に伺った際に、「用賀 本城」が2月ひと月お休みと聞き、では新年早々に京都の白味噌仕立ての雑煮を食べに行かなければと予約。スカッシュ仲間と新年会という企画だ。
母方の故郷が京都というスカッシュ仲間も、愛知の味噌文化が近いお気楽妻も、西京白味噌の雑煮が好物。この店で初めていただいた際に、お気楽夫婦のお気に入りの料理になった。そして、そこにもう一人のスカッシュ仲間、と言いってはおこがましいが、元日本チャンピオンの千夏ちゃんをお誘いした。 昨年夏以降は大会にも出ていなかったので、もしや?と思っていたら、予想通りにご懐妊の報告があったばかり。
体調も安定したものの、まだ以前のようには食べられないという彼女は、確かに驚くほど少食になった。けれども、無事に出産したら現役に復帰するとの宣言だけではなく、全日本にも出場したいと言う。嬉しい!素晴らしい!その意気や良し。何て新年会に相応しい話題だ。思わず独りで(残念ながら他は誰も酒は飲まない)乾杯。お土産にと、バゲットを買って来てくれたパン好きは相変わらずの千夏。どうか母子共に健康で!
そして今年初めて参加したのは、やはりスカッシュ仲間たちとの新年会。昨年末にお気楽夫婦が揃って入会した鬼沢コーチのレッスン生たちが30人程集まった賑やかな会。“鬼”沢という名前の通り、レッスン中にカウントを取り、敗者には笑顔で罰ゲームを課す。千夏ちゃん同様に、日本代表にも選ばれたことのある女性コーチだ。我ながら年齢の割に走れるのが災いして、汗まみれになるレッスンが続く。今年はお手柔らかに。
「誕生日おめでとう!」「ありがとう!(×3)」と、新年会を兼ねた、誕生日(何と1月生まれが3人!)のお祝いをしたのも、スカッシュ仲間たち。ご近所の四川の名店「萬来軒」で、持ち込んだシャンパン(グラスも持ち込み)で乾杯だ。余りにも愉しげに(騒がしく)していたせいか、見知らぬ独り飯のご老人が混ざり込んで来たのもご愛嬌。嫌がりもせず、鷹揚に大先輩の話に合わせるのは酔っ払い(女子たち)の懐の深さ。LOVE♡
スカッシュを通じて、良い仲間と出会ったとしみじみ思う年の始め。仕事のしがらみや、ストレスを抱えることもなく(お付き合いするのに面倒な相手もいるが)、同じスポーツを愛すると言う共通項で、一緒に汗を流し、美味しい酒が飲める。シンプルに嬉しく、つくづく有り難く、心から幸福なことだと思う。…あぁ、何だかまるでジイさんの心情だ。私も間もなく61歳。何だか不思議だが、今年も元気な1年のスタートだ。