「香港ウィークのイベント観に行かない?」そんな言い方は、どうしても行きたい!というお気楽妻の意思表示。了解!とスカッシュレッスンが終わった後、東京駅に向かう。KITTE丸の内で行われていたのは、「香港ウィーク2018 Great Bay Area Showcase」という、香港だけでなくマカオや広州を含めたエリアのプロモーション展示。KITTEのアトリウムには、ド派手な電飾アーチで迎えてくれる展示スペースが出現。
アーチをくぐって中に入ると、この夏に訪ねた最近話題の「OLD TOWN CENTRAL」のイラストデジタルMAPや、元SMAPの香取慎吾くんの描いた壁面アートのレプリカが展示されていた。入場制限があり、やけに人気のイベントだと思っていたら、どうやら人気の理由はこれか。他にも精密に作られた香港の街並みのミニチュアが展示されており、旅情を誘い、今すぐにでも香港に行きたい!という気分が盛り上がる2人。
すぐに香港に行こう!という高揚感のまま、香港に向かったお気楽夫婦。思い立ったら即実行!がIGA夫婦のモットーだ。狭い路地に小さな飲食店が軒を連ね、通りの向こうには高層ビルが聳える。典型的な香港の裏通りの風景…に見える三軒茶屋の通称“三角地帯”だ。大山街道の道標を頂にし、国道246線と世田谷通りに挟まれた、一度入ったら脱出不可能な迷路のような小さな通りからなる、香港にも負けない魅惑的なエリアだ。
その迷路の中に、香港があるという噂を聞いて、三軒茶屋の三角地帯に向かった2人。ところが、事前に予約をし、店への行き方を調べたにも関わらず、散々迷った末にようやく店に到着。恐るべし三角地帯。その店の名前は「香港バル213」という、テーブル席3つと、路地に背中を向けて座るカウンター席4席だけの屋台のような小さな店だ。その小さなハコの中に、香港らしいエッセンスがふんだんに詰め込まれてる。
例えば料理のメニューが香港だ。日本では余りお目にかからないが、香港の飲茶の店ではフツーに何種類もある「腸粉(チョンファン)」という米粉のクレープに豚肉や海老を巻いたメニューが、この店には(海老の1種類だけだが)ある。お気楽夫婦の大好物で腸粉を「ちょうこ」と呼んで溺愛している。これはメニューにあるだけで素晴らしい。「これ美味しいね。初めて食べた!」と同行の友人。ふっ、香港ならもっと…。
「芥蘭がある!」妻が歓喜の声を上げる。アブラナ科の緑黄色野菜で、香港の食卓には良く登場するけれど、日本では滅多に見かけない。コリしゃきとした歯ざわりが心地良く、味はブロッコリーに似て(チャイニーズブロッコリーとも呼ばれるらしい)葉も茎もクセがなく美味しい。茹でてオイスターソースを掛けただけでも旨いし、ワンタン麺と合わせて食べると彩りも良く美味。こんな香港の味を三茶で味わえるなんて!
「海老ワンタン麺も食べたい!」香港に行くと3食は必ず食べるのが、この香港麺(輪ゴムのような細さで噛み切りにくい)のワンタン麺。お気楽夫婦はゴム麺と呼んで愛する麺。これも日本で食べさせる店が少なく、三宿の「新記」に行っては懐かしがっていた。サービスも香港並みの雑な接客(それがまた香港を思い出し、かなり嬉しい)で、美味しいのだけれど、遠いのが難。それが三茶の駅近くの店で食べられる幸福。
「香港の予習もこれで完璧だね!」そう、実は香港バルに集合したメンバーは、スカッシュ香港オープンに参戦(もちろん観戦のみ)する仲間たち。香港に行くのは20年ぶりくらいという友人と、前年にも同行したスカッシュ仲間。そんなメンバーで香港でのスケジュールを確認し、香港を味わいながら決起集会(笑)を開催しよう!という趣旨。そんな目的で集まるにはぴったりの店だった。さあ、香港に行くぞぉ!おぉっ!
「くぅ〜っ!辛くて美味しいっ!」香港への渡航直前、さらに予習を重ねるお気楽夫婦。ご近所の四川料理店に向かった。お気楽妻が喜んでいるのは麻辣牛肉麺。牛スネ肉と干し椎茸、ニンニクの芽が入った真っ赤な麺だ。香港には四川料理店が余りなく、予習というよりは、辛いもの好きの本能で食べたいと欲した模様。何れにせよ満面笑顔でご満足のご様子。やはり、食は香港だけではなく、東京にもあったということだ。
那覇初日、ホテルの窓から街を見下ろすと、煌々と光るネオンサインが目に付いた。目を凝らすと「BARサクラザカ」と読める。ん?なんと、その日の夜に行く予定の店。まるでお気楽夫婦を呼んでいたかのようだ。その店はシモキタにある行きつけの泡盛バー「Aサインバー2号店」の姉妹店。入ってみると狭い店とは言え、ほぼ満席。んんっ?店長らしき(何しろスタッフは1人しかいない)男性の顔は覚えがあるぞ。
話を伺うと、やはり彼は姉妹店「チャンプル〜」にいた事を確認。おつまみは缶詰だけ。珍しい天ぷら缶をお願いすると、「天ぷらは美味しくないから止めといた方が」とのこと(笑)。了解。3台もあるジュークボックス、「GORO」や「スコラ」などの懐かしい雑誌。何だか和める良い店だ。泡盛を2杯ほどいただき、また来ますと伝えると、「この店僕1人なんで、休みが多いから気をつけて」と、テーゲーなウチナー感満載。
瀬良垣の視察の後、再び那覇に戻り「壺屋やちむん(焼物)通り」を散策。前回の訪沖の際ものんびり散歩した、お気楽夫婦お気に入りのエリアだ。壺屋焼の販売店があったり、窯元や工房があったり、そして足元には壺屋焼の欠片が埋め込まれていたり、見上げると蔦のからまる塀の上にシーサーが睨みを利かせていたり。戦禍を免れた古い街並みが残り、昭和にタイムスリップしたような商店街に続く、街歩きのハイライトだ。
桜坂中通りを渡り、土産物屋、ゲストハウスなどが軒を連ねる平和通りに入る。1980年にアーケードが作られたと言うから、かなりの“年代物”。昼呑みしている観光客たちを横目に眺めながら、敢えて怪しげな路地に入り込む。何だか既視感があると感じ、あぁ、香港やバンコクの裏通りと似た街の香りだと気付く。これこそ那覇のまちま〜い(街周り)の醍醐味だ。そしていよいよ迷宮の中心、「牧志公設市場」に辿り着く。
戦後間も無く、闇市の露天商を集めたのがマチグヮー(市場)の始まりだと言う。建物の中に入ると、色鮮やかな海産物が並ぶ鮮魚店、チラガー(豚の顔の皮)やテビチなどが圧倒的な迫力で迫る精肉店、島マースをはじめ何十種類もの香辛料を売る店など、市場好きのお気楽夫婦がワクワクする空間が広がる。「楽しぃ〜っ♬」と目を輝かせた妻が自分用のお土産に激辛調味料コーレーグス(島唐辛子入り泡盛)を購入。324円の幸福。
市場の2階にある食堂では1階の店で買った魚などを調理して食べさせてくれるが、敢えて市場の近くにあるソーキそば専門店「田舎」へ向かう。看板メニューのソーキそばが390円、ラフテー入りの沖縄そばが450円。決して清潔とは言い難いし、愛想が良いとは全く言えないし、今まで食べた事のない美味しさとは思わないが(笑)、素朴に美味しい。2人で840円の口福。観光客に媚びない営業方針(たぶん)を貫く姿勢が好ましい。
那覇の夜の掉尾を飾るのは、「沖縄料理と泡盛の店 カラカラ」と言うホテル近くの居酒屋。前回の訪沖の際に偶然通り掛かり、気になっていた店だ。ホテルの近くで沖縄料理の美味しい店を検索すると、この店に当たった。果たして私の嗅覚は?と店に入る。瞬間、当たり!と分かる店の空気。小綺麗でありながらワクワク感満載の内装、料理と泡盛(何と50種類以上!)をはじめとしたドリンクメニューも豊富。これは楽しみだ。
店名にもなっているカラカラ(泡盛用の酒器)で、さっそく泡盛をオーダー。*ビールは(シャンパンも!)ホテルのラウンジで頂いて来た。琉球料理かりゆし3種盛り「ドゥルワカシー」「ミヌダル」「クーブーイリチー」という、どれも大好物のメニューに感涙。都内の沖縄料理屋ではこの3種が揃う店は珍しい。「この店に来た甲斐があったねぇ」と彼女の好物でもあるウチナー料理を味わいながら、妻が満足そうに微笑む。
那覇滞在中のホテルは、瀬良垣泊の前後2泊とも「ハイアットリージェンシー那覇 沖縄」だった。まちま〜いに便利で、マチグヮーにも近い。お気に入りになった2軒の店どちらにも徒歩1分!「良い旅だったねぇ。ウチナー料理もかなり美味しかった♬また来なきゃね!」と、妻の最大級の賛辞。そこで、ふと窓の外を眺めると、うわ〜!遠く打上げ花火が上がる。と、最後までマーサン(美味しい)ウチナーの旅だった。
「台風、大変だったですよぉ。この辺は停電だったしねぇ」那覇から瀬良垣に向かうタクシーの中で、運転手さんが当時の様子を語る。当初、お気楽夫婦が「ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄」に滞在する予定だったのは、まさしく台風24号直撃の週末だった。予報では、“非常に強い勢いで”沖縄付近を通過するという。そこですかさず全ての予約を変更。1ヶ月ほど日程をずらした晩秋の訪沖となった。
「塩害ですっかり枯れてしまいました。植え替えるまではしばらくかかりそうです」チェクイン後、ホテルのスタッフに話を聞くと、その答えにも無念さが滲む。開業から間もないにも関わらず、ホテル周辺の植栽の大半は赤茶け、枯死寸前のよう。想像以上の被害だ。ホテル内部に入ると、エントランスからロビーラウンジ、バーと一直線に結ばれ、高い天井からスクェアなフレームが下がるスタイリッシュな空間が広がる。
「あ、ここだ!」部屋に入った後、館内を散策。妻が事前に調べていたホテルの名所を発見。東シナ海に向かって大きなピクチャーウインドウが嵌め込まれ、打ち寄せる波と、その波とぶつかり合う岩と、水平線まで延びる青と、その上の空と雲を、ずっと眺めていられる空間だ。ホテルが建つのは、沖縄の中部恩納村、万座岬の対岸にある(橋で渡れる)瀬良垣島という(元)離島。360度海に囲まれていると言っても良い環境だ。
沖縄県で最大瞬間風速56.2メートルを記録した台風24号の高波が、開業早々のホテルを襲った。そして島の突先に設けられていたフィットネスセンターのガラス窓を破壊した。お気楽夫婦が訪れた期間は、ちょうど改修工事が始まったタイミング。「マシンが海水に浸かってしまったんです」と嘆くスタッフ。開業直後に宿泊した方の滞在記などを見ると、最新のマシンが揃っていた。ここで海を眺めながら汗を流したかった。残念!
遅めのランチを取ろうと、「オールデーダイニング セラーレ」に向かう。朝食会場になる場所だが、明るく広々とした店内で、ここもまた外の景色を眺めながらゆったりと食事をとることができる。妻が選んだクラブハウスサンドは、添えられたフレンチフライが見事にリゾート気分。カリカリのポテトが昼飲みビールによく合う。ハイアットホテルズとしては国内初のビーチリゾート。面目躍如のポテトだ(笑)。
客室は広いバルコニー付きのスタンダード。ワンルームタイプで38㎡と決して広くはないけれど、オープンな洗面スペースとバスルームの間の壁はガラスだし、クローゼットも扉なし。見事にフラットで開放的なリゾート仕様。ラグーンビューのバルコニーに出てみると、館内散策したルートを俯瞰して眺めることができる。さらに遠く万座岬の断崖の上に建つANAインターコンチホテルが見える。リゾート気分も最高潮だ。
眼下のプールエリアは、グスクプール、ジャグージ、波打ち際まで延びるラグーンなどからなり、インドアプールやプールサイドバーまで擁する本格的なリゾートアクティビティだ。そうなのだ。このホテルは、実に良くできたビーチリゾートなのだ。あのチャーミー(台風24号)さえ、やって来なければ。…海に繋がるラグーンの向こうには、本物の(笑)ラグーン、リーフ、そして外洋と水の色が変わる実に美しい眺めだ。
「また来れば良いさぁ」お気楽妻は至ってご機嫌で、ウチナンチュのように鷹揚だ。クラブラウンジでの食事も、ホテルのロケーションも、アクティビティ施設も(改修されれば)、お気に入りの模様。「視察に来た甲斐があったね。やっぱり現地に来なきゃ分かんないね。また来るよ」ホテルフリークで、かつハイアットファンの妻が宣言する。了解。穏やかな波の季節に、植栽が回復し、ジムで走れるようになったら再訪しよう。