「来週楽しみにしてま〜す♬ワインは宅配便で送りますね」お気楽夫婦の住む街で、お互いに1軒目で飲んだ後に、店を出たところでばったり会った仲間たち。店を出た瞬間に、ん??知ってる顔だ!と目を見交わす。一瞬の後に現実だと分かり、びっくり!迷うことなく一緒に2軒目に繰り出し大酔っ払い。そして翌週、同じ顔ぶれが「ビストロ808」に到着する前に、大量のワインが届いた。どうやら1人2本の計算らしい。
迎え撃つシェフ&スーシェフも抜かりない。大酒飲みの上に大食漢のメンバーに、肉料理をガツンと用意しようという作戦。オードブルのパテドカンパーニュを多めに作り、メインはスーシェフ渾身のガツンとローストビーフだ。他にも事前に料理のリクエストが来ており、鯖のリエット(クリームチーズ・バージョン)、グリーンメドレーサラダ(ストウブ蒸し)は必須。そこに季節のフルーツの料理を加えてメニューは完成だ。
「お邪魔しまぁ〜す♬」ツワモノたちを迎えるが、最初はお上品な奥さまたちの風情。「スカッシュとトランポリンで汗かいたから、ビールも買って来ました!」と手渡された(1ダースの!)缶ビールで乾杯♬そして「お腹ペコペコ!」との声に、料理の順番を変え、冷やしてあった「カラフルトマトとローズヒップジュレ」を出すと、「うわぁ!キレー!」「美味しっ!」と大騒ぎ。相変わらず反応の良い嬉しいゲストだ。
少し落ち着いたところで、前半のメイン「オードブルの盛合せ」。合わせるのはポルトガルのヴィーノヴェルデ。超微発泡のカジュアルワイン…だそうだ。実はあぁ見えて(笑)ゲストの1人、サダコに変身する奥さまは、ワインコーディネーター。10本のワインを選んだのも、その飲む順番を考えているのも彼女。きっと彼女はワインが好きな余りに、ついつい飲み過ぎて変身してしまうのかもしれない…と思いたい。
サバのリエット、グリーンメドレーサラダなど、リクエストされた料理も好評の内にあっという間に平らげられ、メインのローストビーフ・オニオンソースジュレの登場だ。いつもは薄めに切って何枚か食べてもらうのだが、今回は厚めに切ってガッツリと。すると「あ!あっちの方が厚い!」「へへへ」…子供か!というやりとりの後、「火入れ抜群!」「美味しい!」と絶賛の声。スーシェフもやる時にはやるのだ。
「わぁ〜っ!コンテチーズ大好き!」ズッキーニとイチジクのコンテチーズ焼きに歓声が上がる。私の経験上、ワイン好きの酔っ払いたちにコンテチーズが嫌いなヤツはいない。たっぷりの焦げたコンテチーズの香りで、ワインがススム。さらに、続いて供した「柿とゴルゴンゾーラのサラダ」がワインの消費を加速する。「ワタシ、今年初の柿だ!フルーツとワインって合うよね」胃も肝臓も強いという奥さまのペースも良い感じ。
「ストレッチして良い?」と、毎回オリーブオイルの手土産をいただく奥さまが開脚し始めたかと思えば、強内臓系の奥さまが同じ会話を繰り返す。そろそろ皆さま良い感じで酔ってきたぞ!と、ワインコーディネーターの奥さまは?と見ると、すでにサダコが降りて来ていた。ダンナが嬉しそうにサダコ降臨証明写真を撮影する。その彼も「このワイン、空なのに重いよ?」と満杯のボトルを抱えていたことは妻の観察による。
楽しく飲んで食べて大笑いした、嵐が過ぎ去ったようなビストロ808営業の翌日、何事もなかったようにグラスは磨き上げられ、皿はキレーに洗われ並べられている。1人酔うこともなく、後片付けをしてくれたスーシェフ、妻の仕事だ。毎度の事ながら頭が下がる。つくづくエライ。そう言うと「ワタシも楽しいし、喜んでもらえると嬉しいしね」涙。翌日の夕食はこれも恒例の、主催者の特権(笑)余りモノゼータクディナー。
「次の開店は10月頃かな」と嬉しそうに妻が呟く。さぁて、どなたをお招きし、何を作ろうか。ビストロ808は好評ながら不定期営業中。
例年ほどの厳しい残暑もなくサヨナラも言わず夏が去った。初夏の頃、まだ暑い日が続いている頃だろうと覚悟して予約をしたのに、ご近所の名店「萬来軒」に仲間たちが集まった日には、夏の後姿しか見えなかった。この店で、おぢちゃんが作る絶品四川料理を味わうために20年来集まっている友人たち。おぢちゃんは春先に病気で入院し、しばらく店を休んで初夏に復活したばかり。その日はお店再開のお祝いも兼ねていた。
「死んじゃうかと思ったよ」闘病生活を冗談混じりで語り、皆で贈ったお祝いの花束を抱えたおぢちゃんと記念撮影。「まだ元気でいてもらわなくちゃ!」「店が再開できて良かったですね」お祝いの言葉を掛けられると、おぢちゃんも照れた笑いを零す。「まだきっと体の中に悪いのが残ってるんだよ」と、相変わらずのおばちゃんの辛口も、痺れる辛さの麻婆豆腐も、健在だ。この店はこうでなくちゃ。次は上海がにの頃に!
「今日はガッツリ肉を食べようか!」野菜食を優先する妻が珍しくそんなことを言う。今年も夏バテもなく過ごせ、スッキリと秋を迎えることができたから、夏へのお礼参のようなものか。それにしても、彼女の辞書には夏バテという文字はない。ちなみに、秋も冬も同様で、春の忙しさにさえも負けることはない。つくづくタフな女性だ。そんな彼女がガッツリと肉を食べるというのだから、そのタフさ加減はきっと無敵で素敵だ。
上タン塩、上カルビ、ロース…、少食の2人がガッツリと言っても、せいぜい食べるのはそんないつもの3品に豚カルビを追加するぐらい。そしてナムルの盛合せ(これが抜群に旨い)、サンチュで野菜摂取も忘れない。「冷麺も行っちゃおうか!」絶好調だ。生来の身体的(と精神的)な強さに加え、この夏もリゾートでたっぷり静養したが故に、心身共に万全なのだろう。満腹の私をよそに、にこやかに冷麺を啜る妻は余裕の笑顔だ。
過ぎ行く夏を惜しむ恒例のイベント、「用賀 本城」で鮎尽くしの会も今年で6回目の開催だ。今年は5名の参加。リゾートでのんびり読書をしていた時、何か忘れているぞ!と閃いて、慌てて女将さんにメッセージを送った。「うわっ!ヴァカンス中に鮎からウチの店を思い出すなんて(笑)ゆっくり休めてますか?」そんなメッセージが返って来た。のんびりと本を読んだり、楽しいことを考えることがヴァカンスなのだと返す。
そして待望の開催当日、ひと足早く到着した私は、女将さんとリゾート談議。彼女たちも翌週から遅いヴァカンスなのだ。「ほんと、IGAさんは人生楽しんでますねぇ」いやいや、妻と共にただお気楽なだけ。そして、肝心の鮎料理と言えば、ウルカと骨の素揚げから始まり、刺身、塩焼き、唐揚げ、梅煮、鮎飯といつも通りの季節の味。今年の目玉は琵琶湖名物の鮒寿司ならぬ鮎寿司。オトナになってよかったとシミジミ。
「ふぇ〜、さっぱり♬」前日に友人たちを招いてビストロを開店、深夜まで楽しい時間を過ごした。とは言え、料理の準備から後片付けまで、心地いい疲れも少々残っている。だったらお風呂か?と温泉に出かけ…る時間はない連休最終日の午後。だったらお隣の駅にあるスーパー銭湯か?と、お気楽温泉旅に出かけた2人。休日とあって混んではいたものの、湯上りにはすっかりリフレッシュ。冷えた生ビールが実に旨い。
「じゃあ、私はソフトクリームでも食べよっかなぁ〜っ♬」ほぼスッピンの妻が嬉しそうに売店に向かう。そう言えば去年の夏からソフトクリームが食べたい!と言いながら実現していなかったはず。2年越しの夏休みの課題終了?「そうだった!やっと食べられた!」間も無くお彼岸。秋も深まって行く。お気楽夫婦の夏を締め括る日々がこうして過ぎて行くのだった。「次は沖縄だ!」あ、そうだった。…秋も同様の2人だった。
香港に滞在している間、お気楽夫婦はほとんどホテル内で過ごす。出かけるのは昼食前後の街歩きだけ。それも香港島側に宿泊していることもあり、九龍側に出掛けることはほぼ無い。20回以上の香港渡航歴の中で、佐敦、油麻地、旺角など主な街は一度は訪れているとは言え、行動範囲は極めて狭い。本土から観光客が押し寄せ、地下鉄の混雑がハンパ無いことが出不精の理由のひとつ。その点、香港島には便利なトラムがある。
中環(セントラル)から上環(ションワン)にかけて、最近話題のOTC(オールドタウン・セントラル)と呼ばれるエリアがある。お気楽妻は「ちょっと行ってみたいんだよね」と、今さら観光でもなかろうと渋る私を引っ張り街歩き。昔ながらの街並みと露店が並ぶ坂道、建物の壁に描かれたアート、お洒落なギャラリーなど、古の香港と現在、東洋と西洋とが交錯する不思議な雰囲気に満ちた街だ。「香港ぽくって良いね」と妻は満足気。
「脆皮焼鵝(ガチョウのロースト飯)を食べたいんだよね」と宣う妻。香港で毎回ご所望になるのが、街のB級グルメ巡り。「それもホテルで出すようなヤツじゃなくて、街の小さな店で食べたいんだよね」というのが、彼女の求める香港ランチ飯のシチュエーション。彼女自身が作成した行きたい店の(長〜い)リストを眺め、この店と第二候補はこの店かなとお目当ての店を地図に示す。了解!と地図を頭に入れて街に出る。
行列の長さに1軒目の候補は早々に諦め、再興燒臘飯店(Joy Hing Roasted Meat)という店に向かう。やはり人気店で行列ができているけれど、地元客が多く回転は早そうだ。はい、次は2人?奥に行って!と広東語で捲し立てられ、相席のテーブルに付く。指差しで、脆皮焼鵝と海老ワンタン麺をオーダー。期待通りにチープに旨い。「美味しいね〜♬楽しい〜ねっ♬」笑顔が溢れ、歌ってしまいそうな妻。香港LOVE♡
「今日は龍景軒だぁ〜、久しぶりだね!」2人のもうひとつの例外的な外出は「龍景軒(LUNG KING HEEN)」での夕食。ちなみに前年の11月以来の訪問だから、約半年ぶり。海外のレストランで、それを久しぶりと言うかは定かではない。香港滞在中、ランチとディナーの2度は訪れたいと、何ヶ月も前から予約を入れる妻。店のスタッフ、ジャッキー君とメールでやり取りをする、予約の時点からもう既に楽しそうだ。
この店の夜メニューで外せないのが、茹で海老。色鮮やかなプリプリのエビをワシっと掴み、エビ味噌をチュッとしゃぶり、ツルッと皮を剥き、カプッとかぶり付く。手の汚れなど気にせずに一気に食べる。これがお約束。そして焼き物。ローストグースも良いけれど、この日はバーベQポーク。カリカリの皮とジューシーな肉、甘辛いソースと相まって、思わず妻とこれだよね!と互いに微笑み合ってしまう味。
ランチメニューのお約束は、腸粉(チョンファン)とアワビのパフ。いずれも毎回オーダーする2人の大好物。そして忘れていけないのは、タロ芋のコロッケ!香港ではどの店でも供される一般的な料理だけれど、この店の上品で美しいカラッとした衣と、中の焼豚餡のバランスは絶品なのだ。因みに、この料理を日本の中華料理店(横浜中華街でも)では滅多にお目にかかったことがない。だからこそ香港に行くと食べたい一品だ。
そして、2人にとって香港の味と言えば、これ。海老ワンタン麺。プリプリの海老ワンタン(なぜかどの店でも麺の下に沈んでいるのが不思議だけれど)と、緑鮮やかなシャキシャキの芥藍(カイラン)だけと言うシンプルな麺。2人がゴム麺と呼んでいる独特の食感の香港麺と、干しエビのダシが効いたスープがたまらなく香港。この旅の間だけでも4杯も食べた2人の常食。「あぁ、また食べに行きたい!」と妻が宣う。同感。
…と言うことで、今回の香港の旅を終えた2人は、すぐに次回の香港行きの計画を立てるのだった(笑)。