お気楽夫婦の2018年のヴァカンスは、2度めの訪問となるタイのプーケット島。前回は2007年8月だったから、約10年ぶりの再訪だ。*その年の12月にスマトラ沖大地震が発生。プーケット島も津波に襲われ、大きな被害があった。それ以降日本人観光客が減ってしまい、日本からの直航便もなくなってしまった。羽田から香港経由でプーケット島に向かい、帰りにも香港に立ち寄ろうというお気楽夫婦の旅程。直行便がなくても問題もなし。
宿泊するホテルは「トリサラ(TRISARA)」というラグジュアリー・リゾート。アンダマン海に面する広大な敷地に、客室は計42室のジュニアスイートまたはヴィラと、12棟の個人所有のレジデンス・ヴィラのみ。客室の広さは135㎡〜、ヴィラの敷地は240㎡〜。そして、その全棟にプライベートプール付きという贅沢さ。TRISARAとは、サンスクリット語で天上の3つ目の庭という意味。それは後に現地で実感することになる。
空港に着くと、ゲートにお迎えのスタッフが2人待っている。ほぉ。ここまでは他のホテルでも経験済み。そして彼らと一緒にイミグレ(入国手続き)へ。すると、誰も並んでいない窓口へスタッフが何かを告げ、審査官がうんと頷き手続き終了。この間、わずか数10秒。ふぇ〜!その後、荷物が出てくるのを待ち、お迎えの車を待たせて空港のコンビニにビールを買いに行ったのはご愛嬌。空港からもわずか20分!実に快適だ!
チェックインはオープンエアのフロントで、ウェルカムドリンクを飲みながら。手続きが終わるとカートに乗せられて、緩やかな坂の途中のヴィラへ。オーシャンヴュープールヴィラ「202」が数日間の我が家だ。建て付けの悪い木戸を開ける。緑に覆われた石畳の通路が続く。左手の玄関を敢えて素通り。逸る気持ちを抑えつつ、その先に待っている風景を頭に描き、思わず急ぎ足になる。そして、目の前にマイプールだ!
広い!今まで何度かマイプールを(短期間)保有した(笑)けれども、これは過去最大。それもマイ・インフィニティ・プール♬右手にデッキチェア、左手にはダイニングテーブル、手前の庇の内側にももうひと組のデッキチェア。プールに降りる階段まで付いている。素晴らしい!*何度か泳いだが、深さも十分で(笑)足が付かない場所では泳げないお気楽妻が溺れそうになったのもご愛嬌だ。これはお気楽夫婦の宿泊史上、最高のプールだ!
驚きは続く。プールサイドから室内に入ると、ヴィラの内部が素晴らしい。趣あるアジアンリゾートの典型的なデザインでありながら、レイアウトが巧みで機能的なのだ。巨大なワンルームにライティングデスク、キングサイズのベッド、ソファセットがゆったりと配され、開放的な空間を演出する。ベッドからはマイプールが眺められ、ベッドの後ろの窓を開けると、何とバスルームが現れ、ヴューバスになるという技。
そのバスルームはと言えば、玄関から一直線に、3ヶ所のタイプの違うクローゼット、バスタブ、トイレ、シャワールームが配されるという豪快なレイアウト。その横にはダブルボウルの洗面台と、その間に2人くらいは楽々寝そべることができるベンチシートが横たわる。リビングルームのベンチシートも合わせると、どこも快適そうな読書スペースが、使い切れないほどある。これは読書をするために建てられた幸福なヴィラだ。
夕陽は(雨季のため)こんなキレーには見られなかったが(1、2枚目と共にオフィシャルサイトより無断借用)、日々心地よく、ストレスを感じることなく過ごすことができた。ヴィラ生活は何かと不便だったり、虫や動物が跋扈したり、掃除が行き届いていなかったり、我慢することも多いのだが、このリゾートには不満なし。これは結構貴重なことだ。「食事も美味しかったし、ジムもスパも良かったしね♬」…という妻の感想の詳細は次回。
立秋も過ぎ、夏も終わ…らなさそうな今夏。すっかり熱帯地域の日本。だいたい旧暦の二十四節気で季節を感じるのは無理がある。猛暑日が続く8月の初旬に立秋と言われてもなぁ〜という今年の暑さ。とは言え、暑さに負けず、今年も各地で夏を味わった。まずは大阪の北新地。出張の度に地元の方に連れて行っていただく店がある。「高橋謙太郎」という直球の店名。何度かお邪魔してすっかり顔なじみ。まいど!と声が掛かる。
大阪の“新地”という響きだけで敷居が高いと思っていたけれど、この店の気さくな雰囲気で固定概念が吹き飛んだ。同伴でご出勤の2人連れが多いことを除けば、実に居心地が良い。そして料理はもちろん、日本酒と酒器の組合せのセンスが素晴らしい。その日の逸品は白エビの握り。優しい味の白エビのヅケに強めのワサビ。旨い。酒は「阿部勘」の純米大吟醸に青い切子のグラス。目にも舌にもキリッと美味い。夏の幸福。
続いて渋谷 神泉。馴染みのワインビストロ「遠藤利三郎商店」へ。ワインアパートメントの1階という場所柄、ワインの店であるのは当然ながら、この店の料理は実に旨い。長く務めたシェフが替わっても料理の水準をキープし、ワインと相性の良い一品を供してくれる。いつものカウンタ席に座ると、妻にはスパークリングワインならぬスパークリングウォーターがすっと供される。2人の担当(3代目)ソムリエのミホちゃんだ。
実のはこの日、店のFacebookに掲載された「冷製カッペリーニ」の画像と席が空いているという情報に釣られて、サクッと業務を終了。すかさず予約してやって来たお気楽夫婦だった。ミホちゃんにそう伝えると「わぁ、嬉しいです。更新し甲斐があります♬」と笑顔。桃の甘み、トマトの酸味、生ハムの塩加減、そしてミントの香りが絶妙なハーモニー。画像から妄想した味の期待以上に美味しい夏の味。また釣ってねと店を出る。
さらに世田谷線 松陰神社前。行きつけの「ビストロ トロワキャール」に密かに?集まったのは、ある企画でご一緒しよう!というスカッシュ仲間たちとの決起集会(笑)。計画の実現を祈って乾杯!企画とは関係なく話題はあちこちに飛び、注がれたワインがあっという間にグラスから消え、笑い声が飛び交う。まだその企ては公にはできないけれど、このメンバーなら楽しいモノになるに違いない。今からとても楽しみだ。
夏の味として毎年恒例の「鮎のコンフィ」が食べたくて、この店にやって来たのだけれど、鮎を食べる前に絶品ガスパチョが、その日の主役の座を奪ってしまった。ひと匙飲んで、誰もが一斉に目を見張った。この店の絶品のひと皿にもトマトの酸味と桃の甘み。爽やかに旨い。今年はこの組合せだなぁと目を細める旨さ。これは「ビストロ808」では再現できないだろうなと、師匠の技を盗み見る。その壁は遥か高い場所だ。
シメは静岡県浜松市。妻の故郷であるこの街に帰る度に、可能な限り立ち寄る店がある。「割烹 弁いち」という3代100年近く続く老舗の料理屋だ。この店の魅力は最大4人まで座れる個室のカウンタ席。改装前は1階にあった人気のコーナーを2階に移し、ますます魅力的なスペースになった。その日も2人(と店主と3人)で、居心地の良い空間と酒と料理の組み合せを堪能する。「麗(うらら)」という銘酒で幸福の時間の開始だ。
「割烹 弁いち」のある遠州浜松は、食材に恵まれた地であるにも関わらず、地物を活かすけれど地産地消ではなく、その時期に最高の食材を各地から集め、料理に寄り添う日本各地の最良の酒を供する。その日秀逸だったのは、天然のトンビマイタケの独特の歯ざわりと絶妙なソース。シメもトンビマイタケの炊き込みご飯。秋のイメージがあるキノコだが、旧盆の頃が旬の、これも夏の味。なんと口福な時間であることか。
こうして今年もいつもの店で、各地の夏の味を堪能できた。街の巨匠たちに感謝。「あとは夏のヴァカンスを堪能するだけだね」とお気楽妻。了解♬
学生時代、数多くのアルバイトをしながら大学とアテネ・フランセに通っていた。コンサートのスタッフ、花屋の店員、英会話スクールの雑務など、経験した雑多な職種の中でも飲食系のサービススタッフの仕事が多かった。建て替え前の「パレスホテル」では、宴会場の配膳係だった。結婚披露宴でシャンパンを抜くタイミングがズレたりの失敗もあったけれど、飲食系サービスのマナーと技術の基本を学んだ場所でもあった。
当時から(存在そのものは決して派手ではないけれど)パレスホテルは料理が美味しいと評判だった。宴会が終わった後、切り残したローストビーフをスタッフで味見することができた。ローストビーフ初体験。牛丼ばかり食べていた学生にとって、この世には何て美味しい肉料理があるんだ!という衝撃の味だった。…それから40年。当時の貧乏学生は、自腹でパレスホテルに食事に行けるくらいのオトナになった。感涙。
友人たちと一緒に向かったのは「琥珀宮」というホテル内にある中国飯店系の中華レストラン。「広東料理Foo」のサービススタッフだった根本さんが支配人を務める店だ。初訪問ということもあり、ランチでお試しと伺ったところ、絶品料理にノックアウト。前菜のローストポークの香ばしさ、点心5種の大根もちの絶妙な歯ざわり。悶絶の美味しさ。最もお手頃な彩り点心コースでも、味もサービスもボリュームにも満足。美味。
ランチの後は、客室でティータイム。その日は日曜日。最優先のスカッシュスクールは休講のため、お気楽妻のリクエストで5年ぶり2度目の「パレスホテル東京」に宿泊。客室のタイプは前回同様に皇居や和田倉噴水公園を望むVIEW、そしてちょっとゼータクに前回のデラックス(45㎡)よりやや広めのグランドデラックス(55㎡)。広めのバルコニー、そして何と言ってもバルコニーに面したVIEWバスが嬉しい。
バルコニーから眺められるのは、左手に東京駅近辺に聳えるスカイスクレーパー群。その高さ(100m)でかつて物議を醸した東京海上の茶色のビルが埋没する、丸ビル(179m)、新丸ビル(198m)をはじめとした200m近くの高さのビル群が皇居のお濠に沿って連なり、日比谷公園の傍らには出来立ての東京ミッドタウン日比谷(192m)が鎮座する。正面には虎ノ門、六本木、赤坂方面のビルが林立し、皇居の緑を縁取る。美景。
東京は美しい街なのかもしれない。決して景観を優先してきた訳ではなく、都市全体のグランドデザインもない。継ぎ接ぎだらけで、部分最適。けれども侵すべからざる空間として、皇居(江戸城)という存在が都心のさらに核となる景観を守った。パレスホテル東京を尖鋭として、皇居に攻め込んだビルたちはお濠で足止めを食らう。競うように立ち上がるビルたちは皇居を引き立てる額縁でしかない。だからこそ美しいのだ。
昭和40年代までは百尺(約30m)で制限されていた丸の内地区のビルの高さが、100m、200mと高層化すると同時に、複数のビルを合わせて建て替えることで大規模化を実現してきた。それらの丸の内のビル群の成長を、丸の内1−1−1という絶好の場所から見守っているのがパレスホテル東京だ。ビル群と緑が眩しい日中の風景も、黄昏時の眺めも、各ビルがその輝きを競い合う夜景も、どれも美しく、眺めて飽きることがない。
翌朝、朝食はインルームダイニングで。お気楽妻はお約束のエッグベネディクトがメインの洋食を満足そうに頬張る。私が選んだ和朝食は、ホテル朝食ランキングで自分史上最高の水準。どれも手が込んだ少量多品種の“おかず”がツボ。ついつい食べ過ぎたため、食後はレイトチェクアウトをお願いして、ジムでたっぷり汗を流す。「やっぱりこのホテルはいいね。住みたいね」と妻の評価は前回同様の最高水準。再訪必至。