プーケット島の「トリサラ」は、料理が自慢のリゾートだ。到着した翌日、朝食を控え目に取り、ジムで汗を流した後で、「Sunday Jazz Buffe Branch」というイベントに出かけた。タイトル通り、ジャズの生演奏を聴きながら、ビュフェスタイルでいただく(朝食も食べたけど)ブランチ。ロブスターや牡蠣、ウチワエビなどの魚介類、小さな器に盛り付けられたオードブルの種類も豊富で、どれも目にも舌にも美味しい。
「ローストビーフも良い感じだよ♬」お気楽妻も超ご機嫌。彩り鮮やかに盛り付けたオードブル、ボイルしたロブスター、ウチワエビとブラックタイガーのBBQなどを平らげた後、ローストビーフを完食し、更にデザートの盛合せに挑んでいた。少食の妻としてはかなりのチャレンジ。「毎朝ジムで走るから良いことにしよう!」会場の「Seafood」の他に、ヨーロッパ料理の「PRU」も高水準。果たして妻の目論見は…。
妻が普段よりかなり多めの摂取カロリーを消費しようとしたのが、お気楽夫婦のヴィラから歩いて1分程のジム。確かに、かなりの快適さ。アンダマン海の青と、リゾートの緑、ヴィラ群の赤い屋根を見下ろす高台にあり、床から天井までの大きな2面採光のガラス窓から、その景色を眺めつつ汗を流す。マシンは最新、室内は清潔で、適度に空いている。まるで絵に描いたような、リゾートのジムのあるべき姿なのだ。
海岸にほど近く、波の音が間近に聞こえるプールの佇まいも素晴らしい。全ヴィラにプールが付いているにも関わらず、全長45mのラッププールが海岸線に沿って横たわる。砂浜の上のデッキチェアの足元にはヤドカリが動き回り、プールの傍の浜辺では産卵にやって来たウミガメが砂を搔き上げる。産卵が無事に終わった場所にはロープが張られ、ゲストに注意喚起。眺める海、火照った身体を冷やすプールとしては申し分なし。
滞在中、一切のストレスを感じなかった理由のひとつが、スタッフのホスピタリティ。リゾートの敷地内で出会った中で、誰一人として挨拶を交わさないスタッフはいなかった。これはフツーのようで、実は簡単なことではない。フロントや飲食サービス担当はもちろんのこと、送迎のドライバーから、ガーデナー、清掃スタッフに至るまで、すれ違う誰もが、「サワディークラッ」「サワディーカー」と笑顔で挨拶を交わす。
リゾート内に撮影スタジオがあり、滞在中に専属カメラマンが撮影してくれて、お気に入りの何枚かの写真がもらえる…。そんなサービスも漏れなく付いている。最初はテレながら、軽いノリのカメラマン(全世界共通?)に乗せられて、場所を変え、ポーズを変え、屋外で撮影をする。プールサイドのハンモックに2人で座り、「何か話して!彼は奥さんの顔を見て!」と注文を付けられ、汗ダラダラになりながら1枚。
陸上げされたカタマラン(双胴ヨット)に腰掛けて、「2人で話をしながら、自然にね」というリクエストに、会話までは写らないからと、もう暑くてたまらん!などと愚痴りながら1枚。最初は15分程度と言われた撮影時間は30分を超え、撮影枚数は軽く合計数十枚を数えた。撮影後、画像をチェック。早い話が、良かったら(有料だけど)アルバムにしないか?というプロモーション。そこはサラッとかわし、無料の6枚を選ぶ。
「楽しかったねぇ♬」と妻。こんな時、モデルのように成り切り、その場を楽しむことができるのは女性の強みか。「じゃあ次はマッサージだ!」滞在中に2度目の施術は半額になるというプロモーションに乗り、連日のスパに向かう…。こんな風に、お気楽夫婦のヴァカンス前半は過ぎて行った。持参した本も4冊読破した。買い込んだビールも飲み干した。…どこに行っても、どのホテルに泊まっても、ほぼ同様のお気楽生活。
…そんな2人のヴァカンスは、後半に続く。
お気楽夫婦の2018年のヴァカンスは、2度めの訪問となるタイのプーケット島。前回は2007年8月だったから、約10年ぶりの再訪だ。*その年の12月にスマトラ沖大地震が発生。プーケット島も津波に襲われ、大きな被害があった。それ以降日本人観光客が減ってしまい、日本からの直航便もなくなってしまった。羽田から香港経由でプーケット島に向かい、帰りにも香港に立ち寄ろうというお気楽夫婦の旅程。直行便がなくても問題もなし。
宿泊するホテルは「トリサラ(TRISARA)」というラグジュアリー・リゾート。アンダマン海に面する広大な敷地に、客室は計42室のジュニアスイートまたはヴィラと、12棟の個人所有のレジデンス・ヴィラのみ。客室の広さは135㎡〜、ヴィラの敷地は240㎡〜。そして、その全棟にプライベートプール付きという贅沢さ。TRISARAとは、サンスクリット語で天上の3つ目の庭という意味。それは後に現地で実感することになる。
空港に着くと、ゲートにお迎えのスタッフが2人待っている。ほぉ。ここまでは他のホテルでも経験済み。そして彼らと一緒にイミグレ(入国手続き)へ。すると、誰も並んでいない窓口へスタッフが何かを告げ、審査官がうんと頷き手続き終了。この間、わずか数10秒。ふぇ〜!その後、荷物が出てくるのを待ち、お迎えの車を待たせて空港のコンビニにビールを買いに行ったのはご愛嬌。空港からもわずか20分!実に快適だ!
チェックインはオープンエアのフロントで、ウェルカムドリンクを飲みながら。手続きが終わるとカートに乗せられて、緩やかな坂の途中のヴィラへ。オーシャンヴュープールヴィラ「202」が数日間の我が家だ。建て付けの悪い木戸を開ける。緑に覆われた石畳の通路が続く。左手の玄関を敢えて素通り。逸る気持ちを抑えつつ、その先に待っている風景を頭に描き、思わず急ぎ足になる。そして、目の前にマイプールだ!
広い!今まで何度かマイプールを(短期間)保有した(笑)けれども、これは過去最大。それもマイ・インフィニティ・プール♬右手にデッキチェア、左手にはダイニングテーブル、手前の庇の内側にももうひと組のデッキチェア。プールに降りる階段まで付いている。素晴らしい!*何度か泳いだが、深さも十分で(笑)足が付かない場所では泳げないお気楽妻が溺れそうになったのもご愛嬌だ。これはお気楽夫婦の宿泊史上、最高のプールだ!
驚きは続く。プールサイドから室内に入ると、ヴィラの内部が素晴らしい。趣あるアジアンリゾートの典型的なデザインでありながら、レイアウトが巧みで機能的なのだ。巨大なワンルームにライティングデスク、キングサイズのベッド、ソファセットがゆったりと配され、開放的な空間を演出する。ベッドからはマイプールが眺められ、ベッドの後ろの窓を開けると、何とバスルームが現れ、ヴューバスになるという技。
そのバスルームはと言えば、玄関から一直線に、3ヶ所のタイプの違うクローゼット、バスタブ、トイレ、シャワールームが配されるという豪快なレイアウト。その横にはダブルボウルの洗面台と、その間に2人くらいは楽々寝そべることができるベンチシートが横たわる。リビングルームのベンチシートも合わせると、どこも快適そうな読書スペースが、使い切れないほどある。これは読書をするために建てられた幸福なヴィラだ。
夕陽は(雨季のため)こんなキレーには見られなかったが(1、2枚目と共にオフィシャルサイトより無断借用)、日々心地よく、ストレスを感じることなく過ごすことができた。ヴィラ生活は何かと不便だったり、虫や動物が跋扈したり、掃除が行き届いていなかったり、我慢することも多いのだが、このリゾートには不満なし。これは結構貴重なことだ。「食事も美味しかったし、ジムもスパも良かったしね♬」…という妻の感想の詳細は次回。
立秋も過ぎ、夏も終わ…らなさそうな今夏。すっかり熱帯地域の日本。だいたい旧暦の二十四節気で季節を感じるのは無理がある。猛暑日が続く8月の初旬に立秋と言われてもなぁ〜という今年の暑さ。とは言え、暑さに負けず、今年も各地で夏を味わった。まずは大阪の北新地。出張の度に地元の方に連れて行っていただく店がある。「高橋謙太郎」という直球の店名。何度かお邪魔してすっかり顔なじみ。まいど!と声が掛かる。
大阪の“新地”という響きだけで敷居が高いと思っていたけれど、この店の気さくな雰囲気で固定概念が吹き飛んだ。同伴でご出勤の2人連れが多いことを除けば、実に居心地が良い。そして料理はもちろん、日本酒と酒器の組合せのセンスが素晴らしい。その日の逸品は白エビの握り。優しい味の白エビのヅケに強めのワサビ。旨い。酒は「阿部勘」の純米大吟醸に青い切子のグラス。目にも舌にもキリッと美味い。夏の幸福。
続いて渋谷 神泉。馴染みのワインビストロ「遠藤利三郎商店」へ。ワインアパートメントの1階という場所柄、ワインの店であるのは当然ながら、この店の料理は実に旨い。長く務めたシェフが替わっても料理の水準をキープし、ワインと相性の良い一品を供してくれる。いつものカウンタ席に座ると、妻にはスパークリングワインならぬスパークリングウォーターがすっと供される。2人の担当(3代目)ソムリエのミホちゃんだ。
実のはこの日、店のFacebookに掲載された「冷製カッペリーニ」の画像と席が空いているという情報に釣られて、サクッと業務を終了。すかさず予約してやって来たお気楽夫婦だった。ミホちゃんにそう伝えると「わぁ、嬉しいです。更新し甲斐があります♬」と笑顔。桃の甘み、トマトの酸味、生ハムの塩加減、そしてミントの香りが絶妙なハーモニー。画像から妄想した味の期待以上に美味しい夏の味。また釣ってねと店を出る。
さらに世田谷線 松陰神社前。行きつけの「ビストロ トロワキャール」に密かに?集まったのは、ある企画でご一緒しよう!というスカッシュ仲間たちとの決起集会(笑)。計画の実現を祈って乾杯!企画とは関係なく話題はあちこちに飛び、注がれたワインがあっという間にグラスから消え、笑い声が飛び交う。まだその企ては公にはできないけれど、このメンバーなら楽しいモノになるに違いない。今からとても楽しみだ。
夏の味として毎年恒例の「鮎のコンフィ」が食べたくて、この店にやって来たのだけれど、鮎を食べる前に絶品ガスパチョが、その日の主役の座を奪ってしまった。ひと匙飲んで、誰もが一斉に目を見張った。この店の絶品のひと皿にもトマトの酸味と桃の甘み。爽やかに旨い。今年はこの組合せだなぁと目を細める旨さ。これは「ビストロ808」では再現できないだろうなと、師匠の技を盗み見る。その壁は遥か高い場所だ。
シメは静岡県浜松市。妻の故郷であるこの街に帰る度に、可能な限り立ち寄る店がある。「割烹 弁いち」という3代100年近く続く老舗の料理屋だ。この店の魅力は最大4人まで座れる個室のカウンタ席。改装前は1階にあった人気のコーナーを2階に移し、ますます魅力的なスペースになった。その日も2人(と店主と3人)で、居心地の良い空間と酒と料理の組み合せを堪能する。「麗(うらら)」という銘酒で幸福の時間の開始だ。
「割烹 弁いち」のある遠州浜松は、食材に恵まれた地であるにも関わらず、地物を活かすけれど地産地消ではなく、その時期に最高の食材を各地から集め、料理に寄り添う日本各地の最良の酒を供する。その日秀逸だったのは、天然のトンビマイタケの独特の歯ざわりと絶妙なソース。シメもトンビマイタケの炊き込みご飯。秋のイメージがあるキノコだが、旧盆の頃が旬の、これも夏の味。なんと口福な時間であることか。
こうして今年もいつもの店で、各地の夏の味を堪能できた。街の巨匠たちに感謝。「あとは夏のヴァカンスを堪能するだけだね」とお気楽妻。了解♬