「フォーシーズンズホテル 京都」のメインダイニングは、「ブラッスリー」というモダンキュイジーヌのレストランだ。エントランスのあるロビーフロアが3階で、そこから吹き抜けの空間を見下ろす1階。大きなガラス窓越しに、青紅葉が彩る日本庭園の池畔まで続くウッドデッキのテラス席を眺める。スタイリッシュで巧みな空間演出に一目惚れ。陽射しを避ける大きな白いパラソルが並ぶ景色はリゾートホテルそのもの。

朝食用のレストランでもある「ブラッスリー」のプレゼンテーションは、眺めるだけでも恍惚となり、食欲がそそられるセクシィな演出。蠱惑的な美女に誘惑されて、つい多めに皿に取ってしまうダメ男。それも普段は食べないデニッシュ系ペストリーなんぞをたっぷりと。

極上のテラス席も、西洋人が起き出す前の早朝ならまだ空いている。各テーブル毎に真っ赤なポットがスタンバイしているテラス席へ。ゆったりと紅茶を飲み、シャキシャキの野菜と、種類豊富なシャリュキトリーを味わう。すっかりしみじみとリゾート気分。至福の時間だ。
朝食の後は、腹ごなしにジムへ向かう。これもお気楽夫婦のリゾートでの過ごし方。「このジムは今まで泊まってきたホテル史上最高だね」妻が興奮気味に語るのも無理はない。24時間利用可能な最新のマシンが揃う明るく清潔で広いジム、ストレッチやヨガ用のスタジオ、さらにはサイクルエクササイズ用のスタジオまであるのだ。入念にストレッチをした後、たっぷりと汗を流す。「気持ちイイ〜っ」満足の笑みをこぼす妻。

シャワーを浴びて、室内プールへ。これがまたゼータクな造りなのだ。プールサイドには何種か趣の異なるラウンジデッキ、水中のラウンジチェアがこれまたリゾート感満載。ジャグージに浸かりながらぼーっと、時間を過ごす。更には温浴施設も充実。完璧な和み空間。

「観光も行っとく?」レイトチェックアウトをお願いし、客室でサンドウィッチをいただきながら作戦会議。建仁寺から、東福寺を経て、泉涌寺と、青紅葉を求めた寺社巡り。そしてホテルに戻る。タクシーの運転手さんに案内していただき、効率的に参拝できた。
それぞれ良いお寺さんだったし、見所もあったけれど、やはり今回の旅はフォーシーズンズに尽きる。「また来なくちゃね。いっそ長期滞在したいなぁ」お気楽妻の最大の賛辞。南の島のヴァカンスの代わりに、京都にヴァカンス?「それはそれ、京都は京都で来るさ!」妻のホテルにかける情熱は半端ない。
カナダのトロントに本部を持つフォーシーズンズ(以下FS)・ホテルズは、言わずと知れたラグジュアリーホテルチェーン。お気楽夫婦も「FSホテル椿山荘東京」(現在は提携解消)や「FSホテル丸の内東京」の他、ランカウイ島、上海などに宿泊した経験がある。いずれも設備のデザイン性や機能性が高く、部屋数が少なく、スタッフのサービスが心地好い、実に快適なホテルだった。早い話がお気楽夫婦のタイプのホテルだ♬
「京都に行くならフォーシーズンズに泊まらなきゃ!」ホテルフリークの妻が譲らなかったのが、ただこの1点だけ。確かに事前情報から期待度は高い。個性的なエントランス、竹垣のアプローチ、低層の建物、ロビーの向こうには吹き抜けから見下ろすメインダイニングと日本庭園。京都駅から車で10分程の距離にあるロケーションなのに、これはもはやシティホテルではなく、リゾートホテルの佇まい。ストンと恋に落ちる。
客室に入っても恋心がいや増すばかり。入口からすぐ左手にウォークインクローゼット、作り付けのベンチ、ウォークスルーのバスルーム、そしてベッドルームとリビングコーナーという実に機能的なレイアウト。窓の向こうには東大路通り、豊国神社の緑。内装のデザインは京都らしさに溢れ、クッションは着物や帯のような柄、カーペットは麻の葉柄、間仕切りは障子のような意匠。機能とデザインがきちんと折りあっている。
ところで、案内してくれたスタッフは、チェックインを担当してくれた女性。会話が自然で丁寧でいながら慇懃ではない、“外資系”ホテルのスタッフらしい客との絶妙な距離感。「私がお部屋までご案内します」と一緒に歩きながらホテル業界話。パークハイアットが近くにできると言う話題で盛り上がる。やはりライバル視している模様。お気楽夫婦はどちらも大好きなホテルだけに嬉しい(選ぶのに困るけれど)だけだが。


*特筆すべきはバスルーム。左から①ウォークスルー、②バスタブとシャワールームのセパレート、③一体化したビューバスと3wayの使い方ができる。素晴らしい!
ルームサービスも全室に備え付けられたiPadでオーダーできる。キッズメニューやベジタリアンメニューもあり、エキスプレスメニューは24時間OK。全メニューが写真付きだから、直感的に選べるし、届けてもらう時間の指定もできる。その日は「瓢亭」でランチをたっぷりいただいたので、さほどお腹も空いていない。客室内の居心地も良いことだし、だったら夕食で試してみよう!ということになった。
お気楽な2人が選んだのは、「丹波地鶏のシーザーサラダ」と「季節野菜のロースト」そしてお約束の「フレンチフライ。それに加えて、たっぷり入ったパンが付いてくるから、少食の2人には充分な豪華ディナー。ご近所に散歩しながら買って来たビールをグビリ。ルームサービスのスタッフが「一緒にワインはいかがですか」と、オススメのワインを持って来てくれたけれど、その日はビールと小瓶のワイン(散歩で調達)で満足。
「良いホテルだし、良い部屋だね♬」ホテルフリークの妻も満足の笑み。窓の外には古都の慎ましい夜景、暗すぎない照明、食事をするのに充分な広さ、レストランの個室で食べているような豪勢な気分。客室で食事をしようと思える、というのが彼女のホテル評価の基準のひとつ。この部屋はかなりの高得点で合格の模様だ。「また明日もジム行かなきゃね」妻が満足した理由のもうひとつ、スパについては、次回の記事で!
「京都に行こう!その日はスカッシュのレッスンないし♬」と、お気楽妻が宣言した。彼女の週末の最優先事項は、1999年から(20年近く!)続けている日曜のスカッシュレッスン。何よりも優先すべき不動のスケジュールであり、海外の渡航先から帰ってきたその日にレッスンに出かけた事もある。逆に、休講となったら、もうひとつの血が騒ぐ。ホテルフリークの血だ。「京都ならフォーシーズンズか、リッツだね」おぉ怖っ!
京都はインバウンド観光客に人気のある街でありながら、ラグジュアリー系のホテルが少なく、ホテルおたくの妻が泊まりたい!と思うホテルがなかった。そしてようやく2014年冬に「ザ・リッツカールトン京都」が、2016年秋に「フォーシーズンズホテル京都」が開業し、いつかは!と楽しみにしていた模様。そこで、毎年春先に忙しい妻の慰労を兼ねた「ホテルでのんびり企画」の行先は京都になった。よしっ!京都行こう!
還暦のお祝いにとスカッシュ仲間からいただいた旅行券を使い、グリーン車で往復!と言うゼータク旅。ただし、2泊ともフォーシーズンズ、またはリッツというのは予算オーバーだ。初日の宿泊は「ザ・ウェスティン都ホテル京都」となった。チェックインするとスイートルームになぜかアップグレード。近くに南禅寺、遠く吉田山、遥か貴船、鞍馬を望む良い眺めだ。プールで泳ぎ、ラウンジでビールをいただき、街に出る。
夕刻、早めに到着した祇園白川に掛かる巽橋で夕涼み。周辺には多国籍語が溢れる。目当ての店は白川沿いの「割烹 さか本」という小さな店。現在はご夫婦で沖縄の人気カフェ「サン・スーシィ」を経営する、P社時代の後輩(妻)のご実家だ。ビルの中の小さな通路を通った突き当たり、店に入ると窓の向こうに白川のせせらぎ、獲物を狙う白鷺の姿も。実に落ち着いた佇まい…のはずが、その日はインバウンド観光客で満席。
「賑やかで申し訳ありません」女将さんが申し訳なさそうにご挨拶。いえいえ。観光の街の宿命。それよりも皆さん英語が堪能で、若い板さんも英語でカウンタの客と世間話を展開中。さすが京都。さすがと言えば、もちろんお料理も。ひと口だけの“おかゆさん”から始まり、じゅん菜の小鉢、蛸と子持ちシャコの炊いたん、すっぽんのお椀、炙った鱧などが美しく盛付けられたお造りなど、どれも美味しく見事な皿が続く。
「湯葉美味しそう♬」専用の器で出て来たのは、振り湯葉というこの店の名物料理。熱々の湯葉を鰹出汁でいただく。湯葉は妻の好物だけあって、嬉しそうに湯葉を振る。それに比して、私のテンションは下がり気味。実は、前夜に深酒をしてしまった私は料理を少しづつ残し(大将にお断りして)、最後まで辿り着こうとするのが精一杯。美味しいのだけど、全部は食べられず、少しづつ味見という体たらく。やれやれだ。
翌日、やや回復した二日酔い(どころか3日酔い)男は、引き続き絶好調の妻と共に「瓢亭 別館」へ向かった。ウェスティンに泊まるなら、歩いて行ける「瓢亭」へ、そんな計画だった。ところで、京都の人にとっては、スターウッド・ホテル&リゾートと提携してウェスティンと冠しても未だに「都ホテル」であり、京都の迎賓館であり続けている。もちろん運営する近鉄グループにとっても本店格の旗艦ホテルだ。
「瓢亭 本館」のランチは、と言うかランチでも、懐石料理で23,000円から。とても食べ切れない、と言うよりも、ランチにそんな料金を払えない。その点、お隣の別館では松花堂弁当が5,400円でいただける。これも十分過ぎる程ゼータクなのだが、23,000円に比べればグッとお手頃に感じる瓢亭マジック。名物「瓢亭玉子」も入った豪華な盛合せ。一子相伝の料理「瓢亭玉子」は、白身の固さと黄味の蕩け具合が絶妙な逸品だ。
「京都に来た〜って感じだね。京都を食べた〜っ!」暖簾をくぐりながら、お気楽妻が満足の笑みを零す。京都らしさが堪能できる名店だった。南禅寺を横目に見ながら、仁王門通りを経て、以前京都に来た際に2人で歩いた蹴上のインクラインを眺めつつ、ウェスティンホテルに戻る。さぁ、いよいよ京都旅のハイライト、「フォーシーズンズホテル京都」へ向かうぞ。そうだ、続いて京都(泊まりに)行こう。の旅。