仲間たちと一緒にスカッシュをやった後に、美味しいお酒を飲みに行くことは必須。人によっては、それを「スカッ酒」と呼び、スカッシュで汗を流した後には、もれなく付いてくるものだと信じている。かく言う私もそのひとり。ましてや、私の還暦パーティでも大活躍の“チームサダコ”と一緒なら言わずもがな。何と言っても、いつも(色々な意味でも)楽しく美味しくご機嫌に飲めるのメンバーなのだ。
ところがその日は、1軒目の店「遊和食 きときと」では何故かサダコが不在。とは言え、そんなことはおかまいなしに、たっぷりと飲み食べる。「この店好きぃ〜っ!美味しいね」店名通りに富山弁で“きときと(新鮮)”な魚と肴が美味しい店だから、ビールで乾杯の後はすかさず日本酒を飲んで、すっかりご機嫌さんなメンバー。その後は「Bar808」に河岸を変えて、途中で買い込んだワインを飲み続ける。
そこにサダコ(正確にはサダコに変身前の友人)が遅れて登場。酔っ払った他のメンバーを横目に見ながら、「IGAさん、パーティの画像見ましょうよ!」とあくまで冷静。自分が大活躍した画像を鑑賞しながら、「これ食べたかった」とぐずる。「近来稀に見る、ホントにいいパーティだったね」と、バブル時代に青春を過ごした奥さま。それはかなりの誉め言葉。素直に嬉しい。そして、いつものように皆んな大いに酔っ払う。
サダコは結局その日は登場しなかった。帰りの電車の中でも酔いつぶれるダンナを余所に、素面で帰宅したらしい。実は、それには訳があった。その数日後に開催される「ダンス発表会」で、ベリーダンスを踊る予定だったのだ。スポーツクラブのダンススクールのメンバーが、年に一度小さなホールを借りて日頃の成果を披露するハレの場。その日もスカッシュの後は本番直前の練習があり、途中で合流という訳だ。本気だ。
本番当日、毎年観に来ているという仲間たちがいち早く席を確保してくれていた。そこで、初観戦(?)のお気楽夫婦に注意事項。「決して笑わないように、可笑しいんだけど、声を出して笑わないように。周りから怒られちゃうからね」と念を押される。そして開演。クラシックバレーあり、キャストダンス(こんなスクールがあったんだ!)ありと、学芸会並みからセミプロ級まで、レベルはバラバラ。あれ?でも結構楽しいぞ。
そしていよいよ、サダコのベリーダンスの番だ。自分の子供の出番を待つような気持ちで、ドキドキ。子供はいないけど。派手な衣装の5人の女性がステージに登場。サダコはどこだと探す必要もなく、大柄な彼女はすぐ分かる。間違えませんように、祈るような気持ちでダンスに見入る。表情が硬いよ、笑顔!いつもの笑顔!心で叫んでも届かない。ベリーダンス(Belly Dance)ダンスだけに(笑)ハラハラだす。
あっ!ひとりだけフリが違っているぞ!やってくれた!彼女らしいなぁと、思わず優しい笑みが零れてくる。声は出さずに笑ってしまう。撮影は OKですと開演前にアナウンスがあったように、友人や家族が写真を撮りまくり、ムービーで記録する仲間たち。何だか良いイベントじゃないか。太極拳チームには、70歳は軽く超えていると思われるおばあちゃんが登場。流れるような型と、その体幹が素晴らしい。
「IGAさん、今日はどうもありがとうございます!」ステージを終え、やっと笑顔になるサダコ。「いやぁ、毎年レベル上がってて、笑うとこなかったね」友人たちの感想にも納得。オトナが本気で学び、大勢の人前で“ナマで”ダンスを踊る。自分にできるかと自問すると、かなりハードルは高い。サダコの顔にも踊り終えた達成感が溢れる。良い笑顔だ。良いお腹(補正済)だ。さて、飲みに行こうか!オトナの学芸会、打上げだ!
「IGA-IGAのパーティで流した画像をじっくり観たぁ〜い!飲んでばっかりで見られなかったんだよね」パーティ会場でずっとヴーヴを飲み続けていた友人から、そんなリクエストがあった。「それにしても良いパーティだったね」ありがとう。そんな嬉しいコメントをいただいたら、しっかり応えねばと、「ビストロ808」を開店することになった。パーティの画像や映像をBGVにして、飲もう!と言う企画だ。
集まったのはお気楽妻も含め、偶然にも全員が世田谷在住の奥様(奥様候補生1名含む)たち。成人したお嬢さんがいたり、大学受験の真っ最中のJK娘を心配していたり、家族の季節はそれぞれ違う。会社勤めの仕事をしていたり、ご主人の仕事のサポートをしていたり、職業もバラバラ。けれども、スカッシュを通じて知り合い、美味しいものが好きで、何より美味しいお酒が好きだという共通点で、一緒に楽しく集まれる。
料理は何が良い?と尋ねると、「キャロットラペが食べたい!」「パテドカンパーニュも!あ、美味しいワイン持ってくね♬」「私はバゲット買って行きます!」と、ビストロ808の常連ならではの定番メニューのリクエストが返って来た。ビストロ808のメニューはシェフにお任せ、飲み物は自分が飲みたいモノを飲みたいだけ持参というルール。それもすっかり定着。白ワイン好きのシェフに気遣い、常連は泡や白を持参。
「ヴーヴ持って来ました!」「春らしいサクラのラッピングがあったんで、フェッラーリにしました♬」それは嬉しいね。パーティから続くヴーヴ!わが家にもヴーヴが1本残っていたから、その日もゼータクにヴーヴ三昧。オードブルの盛合せを味わいながら、グイグイと飲み進める。新たな定番となった季節の食材を使ったムースは、パプリカ。世田谷産ネギのマリネも好評。他の定番料理と合わせ、安定の美味盛合せ。
「持ち帰りしたかった!あっ、美味しそう!この料理も食べてない(涙)」「このチーズリゾット美味しかったね」パーティの映像を見ながら、当日の様子を思い出し、楽しかった時間を反芻する。準備に楽しく、当日は本番を楽しみ、終わった後に噛みしめる。一度で何度も美味しく楽しいパーティ企画。「IGA-IGA、またパーティやって!今度はじっくり食べたい」これまた嬉しいリクエスト。了解!何とかしよう♬
5年後に、銀座のセントリックでパーティやろうか。その問いにお気楽妻はビミョーな笑顔。「あんなに大袈裟じゃなくても良いよ」ん。こぢんまりと、ゆったりと、お祝いしようか。さらに5年も年齢を重ねても、アクティブな2人でありたい。「こんな部屋だったら時間気にせずに飲めるね」客室の写真を見ながら友人が微笑む。嗜好や価値観が近く、リラックスして一緒に居られる友人たちと、楽しい時間を過ごそう。
「またヴーヴを飲み続けるってことだよね。しょうがねーなー、こいつら!」と零す妻は、幸福そうな満面の笑み。5年後、そんなお気楽妻も還暦だ。
ハイアットセントリック銀座にはレストランが少ないどころか「NAMIKI667」というオールデイダイニングがあるだけ。とは言え、マルチユースな空間は、コーナー毎に特徴的なレストランであり、大きなテーブルがあるパーティスペースであり、バーでもある。ワンフロア全てを使い、吹き抜けが効果的で、開放的な空間。使い勝手はすこぶる良し。朝食はオープンキッチンのすぐ横に、和洋食のビュフェコーナーが登場する。
壁面には“魚”偏の漢字がPOPに描かれ、業務用キッチンのカウンタートップの上に料理が並ぶ、オシャレなカフェの風情。皿や料理のディスプレーが独特で、大きさや形の異なる皿やボウルが並び、人それぞれのスタイルで料理を盛り付けることができる。この演出はライフスタイルホテルの先輩、「アンダーズ東京」と同様。ちなみに、アンダーズとはヒンズー語で“パーソナルスタイル”と言う意味らしい。ふむふむと納得。
「NAMIKI667」の最大の特長は開放的なオープンテラス。さすがに3月初旬の朝食で利用するには肌寒いが、並木通りを行き交う人たちを眺めながら食事ができるロケーションは嬉しい。銀座の真ん中で(店名の667は、ホテルの住所の銀座6丁目6−7による)、ゼータクなスペース。朝食後、ランチ用のパンを買いに銀座の街をぶらぶら。早朝の街は観光客も少なく、「銀座に住んでいる気分だね」と妻もウキウキモード。
部屋に戻ると(自分たちでドアノブに掛けたとは言え)こんなDD(Don’t Disturb)カードが迎えてくれるのは楽しい。ZZZ〜「EXPLORING SLUMBERLAND 眠りの国を探険中♬」などと記載された遊びゴコロ溢れるカードだ。「ジムに行く準備をしなきゃ」とトレーニング好きの妻がはしゃぐ。ロッカールームもない小さな24h利用可能なジムだから客室で着替えて、ランニングシューズでホテル内をウロウロ。それもまた楽しい。
ハイアットの会員(Discoverist)は、空きさえあれば2時間まで無料でレイトチェックアウトが可能。14時までホテルに滞在できるとあって、ジムでたっぷりと汗を流す。そして部屋に戻ってシャワーを浴び、バスローブに着替えてビール!このフード付きのバスローブが秀逸。薄手の生地なのに汗をよく吸い、何よりも軽い。「これ良いよね」と妻。あの重く厚いタオル地のバスローブは着ていて疲れる!と彼女はいつも不満だった。
チェックアウト後、フロント前にあるライブラリーの雑誌を手に、ラウンジでまったり。このライブラリーの蔵書は、インバウンド観光客向けだけではなく、銀座、東京、日本を知るべき日本人にも充実のラインナップ。嬉しく楽しい視点の情報発信。ちなみに、このホテルは専任コンシェルジュを置かず、全員がフロント、ベル、コンシェルジュをこなすマルチタスクを目指している。スタッフ全員が“情報発信”できるのだ。
「お待たせしました。ご案内いたします」そんなマルチタスクの女性スタッフが声を掛けてくれた。ホテルジャンキーの2人は、このホテルの看板客室「ナミキスイート」の内覧をお願いしていたのだった。部屋でパーティをやりたいので、下見を!と言う半ば本気の理由。エレベータ内でスタッフと雑談をしながら最上階、127㎡の客室に向かう。「すごぉ〜い!」ドアを開けてもらった瞬間、妻のテンションが一気に上がる。
POPな内装の明るい客室。8人掛けのダイニング、カウンタ付きのキッチン、広いテラスなど、ホテルの客室の常識がぶっ飛ぶ。これは楽しい部屋だ。ホテルの客室としては珍しく、室内でのパーティを公認しており、外部からのデリ持込もあり。と言うか、ここは宴会場がないホテルなのだ!自宅で友人たちを招き、パーティを開催する感覚。これは良いね!まさしく正しいライフスタイルホテルの使い方。ここでやろうか!
…5年後には、お気楽妻が60歳、お気楽夫婦は30年。パーティやっちゃうか?