この場所で♬「パークハイアット東京」

Wedding1Wedding21994年に開業したパークハイアット東京。その年にお気楽夫婦は一緒に暮らし始めた。その開業早々に最上階のNYバーを訪問した2人は、初回からパークハイアットマジックに魅せられた。小さなエントランスからエレベータに乗り、ピークラウンジとジランドールのざわめきを横目にしてライブラリーを横切り、エレベータを乗り換え52階に降り立った瞬間、新宿の夜景の中に歩き出していけそうな錯覚に陥る。素晴らしい演出。席からの眺めも、店の雰囲気やサービスもすっかり気に入り、何か良いことがある度に訪れる場所になった。そして何度か宿泊し、ますますお気に入り度が増し、自分たちの結婚パーティをするならここしかない!と開催したのが2000年。スカッシュ仲間を中心に、こぢんまりとして温かく楽しいパーティだった。

Wedding3Wedding4る年にはお嬢さんの中学受験が無事に終わった友人と一緒に、NYバーとNYグリルをハシゴでお祝い。明るい日差しが注ぐNYバーで乾杯し、NYグリルでガッツリと美味しい肉料理を堪能した。妻や自分の誕生日を祝うことを(自分たちへの)口実に宿泊することも何度か。貯まったポイントを使ってパークスイートにアップグレードし、友人たちと一緒に食事をした後に、2次会は部屋で飲むというコースがお約束だった。大きい部屋なら最初から部屋飲みにしよう!と持ち込んだ料理や酒、ルームサービス(フォークナイフを人数分いただくために)でのんびり過ごしたこともあった。デリカテッセンで買い込んだ料理を部屋で食べると伝えると、皿に盛り付けて(料理によっては温めて)部屋まで運んでくれて驚いたこともあった。*ルームサービスよりもずっとお得♬

Wedding5Wedding62016年、結婚16年目の記念日も2人はNYバーにいた。仕事帰りに待ち合わせて行こうかという妻に、客先から向かうから別々に向かおうとフェイントをかけて、こっそり用意したプレゼントを抱えパークハイアットに向かう。感情体温が低い妻に、ちょっとやそっとのサプライズでは驚いてもらえない。先に席に着いていた妻に見えぬよう、ビジネスバッグの後ろに包みを隠し、まずは乾杯の生ビールをぐびり。料理のオーダーを済ませたところで、プレゼントを渡す。「おぉ〜っ」と妻は小さめのリアクション。それでも目ざといスタッフに「何かの記念日なんですか」と尋ねられると「結婚記念日なんです」とスムースに答えるところを見ると、どうやらご機嫌の模様。ここでパーティをしたのだと伝えると、スタッフは「おめでとうございます」と満面の笑顔。

Wedding7Wedding8ライドポテトにシーザーサラダ、去年もここで同じモノを食べたね」と妻が微笑む。あっという間の1年。今年のポテトもカラッと旨い。たっぷりのローメインレタスもパリパリと美味しい。変わらないことを確かめ、安心し、味わい楽しむ。セビーチェを肴にワインをぐびり。遠くにスカイツリー、そして東京タワーのダブルツリーを望む心踊る夜景。お気楽夫婦以外、ほぼ西洋人系の客だけという相変わらず不思議な空間。店名通り、NYCを訪ねているような気分。窓際で記念写真を撮るインバウンド系の観光客。TOKYOもなかなか良いでしょ?と話しかけたくなる。NYCとTOKYOのソーダ割り(意味不明)だ。「デザートはいかがですか」スタッフが尋ねてくる。では、NYチーズケーキをひとつ、軽い気持ちでオーダー。実は、それが彼の思惑通りだった。

めでとうございます♬」誰かの誕生日なのか?どこのテーブルだろうと思っていたキャンドル付きの皿が、思いもせずお気楽夫婦のテーブルにやって来た。え”っ!ホワイトチョコには「Happy Wedding Anniversary♡」のメッセージ付き。「うわぁ、ありがとうございます!」妻のテンションが一気に上がる。やられた。彼らの接客はいつもスマートで、柔らかく、適度な距離感を持っているのにフレンドリー。だからこのホテルは止められない。帰り際、妻が担当してくれたスタッフ(実は彼も含めイケメン君揃い)にお礼を伝えると、エレベータ前まで挨拶しに来てくれた。また来年、伺います。お祝いは、また来年もこの場所で。

“想い”のおもひで「カリエール展」

Kari1Kari210代最後の年、旅先の倉敷の大原美術館でその絵に出会った。ウジェーヌ・カリエールの「想い」という作品。当時は名前も知らない画家の、その小さな絵の前でしばらく動けなかった。女性が片肘を付き、物思いに耽っている。色彩に乏しく、霧がかかったようにぼんやりとした輪郭。その女性の表情は悲しいのか、楽しいことを思い出しているのか、悩んでいるのか。見る人に委ねられているように曖昧で、見る人のその時の「想い」を表わすようでもあった。10代の私がどう捉えたのかは覚えてはいないけれど、しばらく飽かず眺め、すっかり魅了されてしまった。美術館を巡る旅がそれまで以上に好きになり、誰の絵が好きかと聞かれれば、迷わずカリエールの「想い」と答えることになる。10代の私に、誰もそんなことは聞いてはくれなかったけれど。

Kari3Kari420代最初の年、パリに2ヶ月弱の短期留学をすることになった。アリアンス・フランセーズという語学学校に通う、というツアー。入学初日にクラスを決めるテストを受け、学生証を発行してもらい、カルト・オランジュという定期券を買ってしまったらこっちのもの。2日目以降には全く通学せず、ルーブル美術館や印象派美術館(当時はオルセー美術館はまだ開館前だった)を見て回り、リュクサンブール公園をぶらつき、街のカフェで屯した。そのツアーの中に広島出身の女性がおり、帰省の度に立ち寄る大原美術館の「想い」が大好きなのだという話題になった。驚くべき偶然。運命の出会い?では、パリ市内にあるカリエール作品を一緒に見に行こうということになったものの、「想い」以上の作品には出会えず、彼女ともその後会うこともなかった。

Kari5Kari650代の最後を迎えようとしている今年、「カリエール展」が開催されるということを知った。副題は「セピア色の想い(パンセ)」。これは行かねばだ。カリエールの作品は、大原美術館所蔵の「想い」に限らず、“カリエールの霧”と称される幻想的な表現を使った作品が多い。例えば、美術展のメインビジュアルに使われている「手紙」という作品も、霧の中で子供を抱く母が手紙を読んでいる。その内容は嬉しい便りなのか、悲しい報せなのか、やはり鑑賞する側に任せされている絵に見える。ただ、「想い」と違うのは、抱かれる娘の明るく無垢な表情。けれども、それは嬉しい手紙の象徴なのか、悲しい便りとの対比を描いたのか、またしても曖昧で、淡い色調の中に秘められている。セピア色のパンセという副題通り、30年以上も前の記憶が懐かしく、甘酸っぱく蘇る。

Kari7Kari8Luckyだったね♬」53歳になったばかりの妻が言う。美術展を見た後、土地勘のない新宿西口を彷徨った。その後、何となく入った中華料理屋が“当り”だった。パリパリの羽根つき餃子、合菜戴帽(野菜炒めの上に帽子のように巻いて焼いた卵を被せてある)などが素早く出てくる。失礼ながら期待できない店構えにも関わらず、メニューは豊富、味もそこそこ、お値段は手頃という小さな幸福。団体客で賑わう狭い店内は、大声で会話しないと相手の声が聞こえない。日本語が余り上手ではない店員が、変な日本語でオーダーを繰り返す。ふだんならイライラするシチュエーションでも、余裕を持って笑って楽しめる。ネガティブな状況もポジティブに捉えれば楽しみに変わる。受け手に感情を委ねるのは、絵画も料理も一緒…なのかもしれない。違うか(笑)。

60歳近い今の方がずっと若々しいなぁ」20歳の頃の私の写真を見て妻が言う。まぁね。何者かになろうとして、何者になれるのかを想い、迷ったり、足掻いたり、そんな“こっ恥ずかしい”時代だった、んだよ。ねえ?40年間という時間を挟んだ、10代最後の齢の私に話しかけた。返って来た彼の想いは…。

オトナの修学旅行「つくば/第2日」

Tsukuba1Tsukuba2学旅行と言えば、社会科見学。“学園都市”とか“研究学園”と名乗るつくば市には、社会科見学に相応しい施設に事欠かない。「JAXAに行く前に、エキスポセンターの前を通るね。HⅡロケットの実物大模型があるんだよ」社会科見学のメイン施設であるJAXA(宇宙航空研究開発機構)筑波宇宙センターまでのルートまで工夫してくれるマダムの気遣いの細やかさ。「あ、国土地理院もあるけど、行ってみる?」「おぉっ!行く行く!」地図好きのお気楽妻がすかさず食いつく。彼女は地図が大好物で、飽きず眺めることができる。国土地理院の地図と測量の科学館は、入場無料。エントランスを入るとすぐに、赤と青のメガネを使って3Dに見える巨大な日本地図が待っていた。

Tsukuba3Tsukuba4ぁ〜っ!すごい」北海道から沖縄までフロアいっぱいに広がる日本地図が壮観。地域ごとに載っている地図帳では分からない、東西南北に広い日本を実感し、その距離感を体感する。「石垣島って遠いんだね」「関東平野は平らだねぇ」時間を忘れ、真剣に見入る修学旅行生たち。その上、屋外にはタイルに詳細な地図を焼き付けた地球儀。「ここ愉しい〜」国土地理院様、さすがです。テンションアゲアゲのままでJAXAに向かう。モニターに映し出される“地球の出”、ロケットの実物大模型、これまたオトナの子供心をくすぐりまくり、実に愉しい。売店では宇宙食を販売していたり、屋外ではHⅡロケットの模型の前で記念撮影ができたり、サービス精神に溢れる施設。

Tsukuba5Tsukuba6くば、良いトコだね♬」長野LOVEの友人が呟く。ん、同感。道路は広く、数多い研究施設の前庭には芝生と植栽が配され、まるで欧米の郊外都市の風景。赤い看板も少なく、街並みも美しく整っているから、雨のドライブも車窓の風景を眺めるだけでも心地よい。と、たっぷり真剣に社会科見学を楽しんだこともあり、腹が空く。当初は筑波山に登り、蕎麦を食べに行こうという計画だったが、雨天のため中止。前夜の料理を食べきれなかったから、それをいただこうというオトナの修学旅行に相応しい柔軟な予定変更。昼からビール、そしてスパークリングワイン。満腹のため、手を付けられなかった「Coq au vin(鶏のワイン煮)」などをいただく。シミシミで旨し。

Tsukuba9Tsukuba8しくって延泊しそうな勢いだなぁ」美味しく楽しくワインがススム。心地よく酔い始め、皆んな自然にハシャギ始め、長野LOVEの友人のおふざけモードが上がってくる。すっかりびぢん台無し。「ねぇねぇ、バドミントンやろうか!」とマダムの突然の提案。え”?ウチの中で?確かに天井は高いし、十分なスペースはある。すると彼女が持って来たのは、柔らかいネットが張ってあるなんちゃってバドミントンラケット。真っ直ぐに打ってもあらぬ方向にシャトルが飛んで行く。「総当たり戦やろ〜」「長く続いた人が勝ちにしよう」皆んなノリノリで、かつ真剣に対戦するも、思うようにラリーが続かず、大笑い。…と、遊び疲れ、飲み過ぎで、ソファに沈み込む引率の先生(私)。

たおいでねぇ」「うん、すぐにでも来たぁい」改札前のハグでお別れ。結局昼過ぎから夜まで飲み続け、TXの車内でもテンション高いまま、写真を撮ったり、メッセージを送ったり。「あっ!リゾット食べるの忘れてた!」と長野LOVEの友人が叫ぶ。では、次回はリゾットを食べに行こうか。それにしても、マダムのホスピタリティの高さに甘え、楽しみ切った2日間だった。Thanks マダム♡

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