
リゾートでの楽しみのひとつは食事にある。コンラッド・コ サムイの朝食は「ZEST」というオールデーダイニングのレストラン。明るく軽やかな雰囲気で、スタッフもにこやかな対応。「サワディカー」という挨拶で迎えられる。ホテルの敷地内を縦横に走る小道では、スタッフとすれ違う度に、「サワディカー」「コップンカー(ありがとう)」と笑顔で挨拶される。おはよう!も、こんにちはも、こんばんはも、さようならも、サワディカー。便利な一言。お気楽妻のZESTでの朝食のテーマは「エッグ・ベネディクト全制覇」。初日にメニューを見て、レギュラーのハム、ベジタリアンのほうれん草、オランデーズソースの代わりにココナツミルクとチリソースのタイ風の3種類を発見。エッグベネディクト好きの妻の目が輝いた。もちろん難なく全制覇を達成!

プールサイドのカフェ「AZURE」には、フィッシュ&チップスなどのリゾートお約束のメニューの誘惑が待っている。火照った身体をプールで冷まし、ローカルビール「タイガー」をぐびり。いかにも身体に悪そうな山盛りの揚げ物を頬張る。ん、んまいっ。普段のランチはサラダとベーグルだけの妻が、にこやかにポテトフライを口にする。「毎日午前中にジムに行ってるから良いのだ!」自分に言い訳するように呟く。インヴィラダイニングではタイ料理をいただく。辛さに騙されて、どんなに汗をかいても大丈夫。水着姿でバスタオルを小脇に抱え、パッタイ(タイ風焼きそば)やマッサマンカレー(日本でも人気急上昇中のタイカレー)をいただく。これも炭水化物をあまり摂取しない2人は珍しいランチ。もちろん昼からビール付き。至福の時間である。

ディナータイムにはちょっとお気取り系のレストラン「ヤーン」へ。黄昏時、リゾートを見渡す高台のレストランに、おシャレなカップルが連れ立ってやって来る。おシャレすぎて照明を落とし過ぎた店内で、色合いが良く分からないおシャレに盛り付けられた料理をいただく。タイ料理をベースとした洗練された味付け。斬新な食材の組み合わせ。どの料理も美味しい。けれど、暗すぎて写真を撮るのもたいへん。画像を見返しても何の料理だったか思い出せない。店の雰囲気を味わうにはうってつけだし、サービスも柔らかく丁寧なのだから、もう少し目で食べる楽しみがあると良いと思うのだが。とは言え、スタッフの方から写真をお撮りしましょうかと声を掛けていただいたり、お気取りなのに気さくでフレンドリーなリゾートらしい良い店だった。

トレーニング用のシューズと、ウェアを2セット。それがお気楽夫婦のヴァカンス必需品。ホテルの選択の際には、ジムがあることが必須。もちろん、このリゾートにも快適なジムがあった。念入りにストレッチを行った後に、トレッドミルかクロストレーナーで1時間ほど汗をかき、軽くウェイトトレーニングを行う。とは言え、消費カロリーは500キロカロリー程度。ふだんの日本での生活よりも圧倒的に多い摂取カロリーには追いつかない。けれども、美味しい朝食をたっぷりと摂り、読書で軽く腹ごなし、そしてトレーニングでたっぷり汗をかき、シャワーを浴びてさっぱり、そしてビールと美味しいランチ、プールサイドで読書とビール、夕刻にスパ〜夕食、と繰り返す生活が何よりもゼータクで、愉しいのだ。
そんな愉しい生活にも終わりがやって来る。いろいろあったけれど、良いリゾートだったね、と会話したのも束の間。サワットディー・カー(あなたの幸福を祈ります)とホテルを後にすることができずに終わる出来事が発生。結果、フライト時間ギリギリに空港に到着、搭乗手続きの最終案内に導かれ、長い列を飛び越してチェックイン。ある意味ラッキー♬ながら、ちょっと残念で複雑な気持ちを抱えつつ、この夏のヴァカンス第2の目的地、香港に飛んだ2人だった。
*滞在最終日、朝8時30分にカートで迎えに行くからと言われたのに、時間を過ぎても現れない。しばらく待てども来ず、諦めてカートを改めて手配。フロントで空港までの車の確認をすると、8時30分にフロントに来なかったから(だったら電話しろ!)他の予定に使って車がない、他の車を手配するから30分ほど待てと言う。迫るフライト時間。珍しく怒り心頭の妻。実はこれには伏線があった。予約時に現地決済のプランだったにも関わらず、事前にカードで数10万円(!!)を引落しされてしまい、大クレーム。返金まで呆れるほど時間がかかったという経緯があったのだ。やれやれ。

記憶通り、降り立った空港は素朴なままだった。着陸した飛行機からターミナルビルまでの移動は、遊園地にあるような小さなトローリーバス。そのターミナルビルは、オープンエアの平屋建て。入国手続きのために並ぶ狭い通路には、申し訳なさそうに扇風機が回る。16年ぶり、2度目のKoh Samui(サムイ島)だ。入国審査を終え、ホテルに依頼していた迎えの車を待つ。指定されていたミーティングポイントには、ゲストの名前を掲げた大勢のスタッフ。自分たちの名前を探すが、ない。待つ。再度探す。ない。「どこのホテル?」親切そうなおじさんが心配そうに声を掛けて探してくれるが、来ていない。空港の案内所からホテルに電話をすると、もう出たとの事。蕎麦屋の出前か!到着の高揚感が薄れ苛立ちが増す。待つ事1時間余り、ホテルまでは50分。やれやれ。

お気楽夫婦の2016年夏のヴァカンスで滞在したのは「コンラッド・コ サムイ」。サムイ島の南西端、バーンタリン・ンガムにある、全81棟のプールヴィラリゾートだ。コンラッドはヒルトングループにおいて、ウォルドルフ・アストリアに次ぐ旗艦ホテルブランド。レセプションは崖の最上部。チェックインを済ませると、崖の中腹に建つヴィラまでカートで送ってくれる。どんな発想で、こんな場所にホテルを建設しようと思ったのか?と思うような急峻な崖。建物を下から見上げると、タイに建築基準法はないのか?この建て方で地震が来たら、ひとたまりもないぜ!というヴィラが並ぶ。何せ建物の土台は、10mから20mほどの長さの何本ものコンクリートの柱で支えられ、スターウォーズのAT−AT(四足歩行戦車、あの足の長いやつね)のようなバランスなのだ。

214、それがお気楽夫婦が滞在したヴィラNo.。5層ほどの敷地の下から2層目。朝食用のレストランまで徒歩1分。海までの距離も程良く、絶好のロケーションだ。高い天井の下にシーリングファンが緩やかに回り、巨大なベッドの足元には大きなフットベンチ、そしてソファセット。つまりベッドルームはワンルームのジュニアスイートタイプ。なのに、バスルームも同等の広さ。巨大な円形のバスタブ、両面鏡のダブルボウルの洗面台、レインシャワーもついたやはり大きなガラス張りのシャワーブース。1ベッドルームプールヴィラというカテゴリは、全て同じ間取り。部屋の広さは65㎡。それだけで東京の我が家より広いのに、プライベートプールを合わせると約100㎡。リゾートに非日常を求める2人は、自宅より広い部屋(自宅が狭いだけ)に滞在するのが常だ。

プライベートプールの幅は15m。各ヴィラの配置が絶妙なため、隣のヴィラからの視界は遮られている。プールの縁まで行っても下層のヴィラの全体を見ることはできない。つまり、スイムウェアなしで泳いでも大丈夫ということか。おっと、目を凝らして良く見ると、海に近いヴィラのプールにピンクのダック?が浮いている。あの程度は見えるのか。あぶない、あぶない。読書をする場所はヴィラのあちこちにある。横にも寝られる大きなベッドでも良し、プールサイドのカウチでも、デッキチェアでも、もちろん涼しい室内のソファでも。おかげで読書は捗った。持参した全12冊の内、7冊を読破。その中の1冊、村上春樹の旅エッセイ『ラオスにいったい何が…』の帯に、こんな一節があった。「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」…。
後日、お気楽夫婦はそのフレーズを実感することになる。トイレの水量が弱く、一度ではなかなか流れなかったのはご愛嬌。その度ごとに一度で流れた!と喜んだり、2度でもダメだったと嘆いたり。それはほんの序章だったのだ。
次回に続く…。