オトナの修学旅行「つくば/第1夜」

Tsukuba1Tsukuba2くばって意外と近いよ。IGAちゃんたち、みんなで遊びにおいでよぉ♡」ご主人の転勤に伴い、世界を股にかけて(笑)引越しを続けてきたスカッシュ仲間、通称マダムから熱烈なお誘いがあった。ジュネーブやらワシントンD.C.を経て、彼女の現在の住まいはつくば学園都市。「修学旅行に行く!」彼女を姉と慕うお気楽妻が声を上げる。「行こう行こう!JAXA行きたいし」故郷長野LOVEのスカッシュ仲間が続く。ではと、引率の先生(私)が軽い腰を上げ、メンバーの日程を調整。ある週末、TX(つくばエクスプレス)に飛び乗った。「IGAちゃん、いらっしゃぁ〜い!」改札口でハグの歓迎を受け、ご新居に向かう。駅から徒歩2分。コンシェルジュが常駐する豪華マンションだ。

Tsukuba3Tsukuba4しみにしてたんだぁ♬」リビングのドアには「OPEN」のサインプレートが掛かり、秋らしい色合いでセッティングされたダイニングテーブルには「RESERVED」のプレートが置いてある。さすがはもてなし上手のマダム。「喉乾いてるでしょ、飲も!飲もう!」さっそく乾杯。「皆んなにいくら飲んでもらっても良いように、これ買ったのよ」見ると、テーブルの横にはワインセラーにワインやペリエが収納されている。すごい!そしてパプリカのムースなど、マダム手作りのオードブルが彩り美しく盛り付けられ、次々に供される。凄すぎ。どれも見目麗しいだけでなく、繊細で美味しい。「IGAちゃんのビストロ808の姉妹店になれるかしら」って、参りました。

Tsukuba5Tsukuba6クアパッツァ出すの忘れてた!」忘れるにしては大物すぎの鯛やムール貝、アサリがたっぷりの一皿が登場。これまたゼータクに美味しい。「例のチーズもあるよ♬」出てきたのは、Tête de Moine(修道士の頭) というセミハードタイプのチーズ。ジロールという専用の削り器を使って、花びらのように薄く削いで食す。スイスに駐在していた頃に食べて気に入ったもので、この日のためにチーズをネットでオーダーしたのだという。ん、匂いは強いが旨味のあるチーズ。口の中でホロホロと溶けていく。これはワインが進んじまうぜぃ!と何本目かのワインが空になる。それにしても、細部までマダムの気遣いを感じさせる料理であり、器であり、セッティング。感激、そして感謝。

Tsukuba7Tsukuba8ぁ〜、いらっしゃい。お久しぶりです」帰宅したご主人と挨拶もそこそこに、すっかり寛いでパジャマ姿になり、カラオケ三昧。彼とは以前の赴任先のワシントンD.C.で初めてお会いして以来。そして2度目はつくばでカラオケ(笑)♬長野の友人の余りに上手な歌に、皆で大笑い。すっかりツボに入った私は吉本新喜劇並みのコケを繰り返す。「どこまでカラオケの音が響くか、ベランダに出てみたり、廊下に出たりしたんだけど、ダイジョーブだと思うよ」一緒に歌って踊りながらも、気遣いの人マダム。けれども楽観的でもあり、自分も心から楽しみ、弾けてくれる。そんな様子がゲストを心地良くさせてくれる。それが彼女のホスピタリティの真髄であり、彼女の魅力だ。

は何を歌いますかぁ♬」ご主人はすっかりカラオケの虜。と、何曲か歌っている内に、いつの間にか深夜。引率の先生も調子に乗りすぎた。「さぁ、消灯時間をとっくに過ぎてますよぉ」すっかり宿の女将に変身したマダムに催促され、マンションの別棟にあるゲストルームへ。会社帰りにつくばに向かう我々の荷物が少なくて済むようにと、タオル、パジャマなど宿泊に必要な備品をほとんどを揃えて迎えてくれた彼女。完璧。民泊ビジネスもできそう。そんな彼女に感謝しつつ、修学旅行第一夜終了。…翌日に続く。

オトナの修学旅行「長野編」

Nagano1Nagano2野にもぜひおいでよぉ〜」つくばに住む友人を訪ねようと共通の友人と日程調整をしたところ、お気楽夫婦の都合が良い日程は、ちょうど彼女が長野に帰省しているタイミングだと分かった。「IGA−IGAたちをお連れしたい場所、いっぱいあるなぁ。車で案内しちゃうよ!」う〜む。だったら長野にも行っちゃおうか?1998年に長野で開催された冬季オリンピックの際に何度か出張して以来、2人とも長野を訪ねる機会がなかった。故郷長野LOVEの友人と一緒に、彼女のオススメの場所を巡るのも楽しそうだ。*お気楽夫婦に“社交辞令”は通じない。すぐにその気になり、具体的な計画を立ててしまうからご用心。よしっ、16年ぶりの長野、行っちゃえ!と長野(北陸)新幹線に乗り込んだ。

Nagano3Nagano4光寺は初めてだぁ」新装なった長野駅に迎えに来てもらい、ホテルにチェックインの後、さっそく参道を歩き国宝善光寺へ。無宗派であること、山門の額の文字に5羽の鳩が隠れていることを聞き、全く明かりのない本堂の下を手探りで進むお戒壇巡りを体験するなど、観光ガイドさながらの友人の案内で境内を歩く。参拝後、門前の老舗七味店「八幡屋礒五郎」でオリジナルの味をブレンドしてもらったり、宿坊街や酒蔵を案内してもらったり、すっかり修学旅行モード。翌日の戸隠神社参拝は、車で訪ねられる中社だけでなく、片道2km、往復1時間の奥社の参道を歩くという本格的な行程。樹齢400年の杉の巨木が並ぶ参道は圧巻。神々しい風景の中で、厳かな気持ちになる時間だ。

Nagano5Nagano6拝トレッキングでお腹が空いた頃には、戸隠名物の蕎麦が待っていた。戸隠神社の周辺には蕎麦畑が広がり、蕎麦屋が軒を連ねている。その中の1軒、友人オススメの「そばの実」という店へ。天ざる、そば三昧(3種の蕎麦ツユが楽しめる)、おろし蕎麦を3人で食べ比べ。蕎麦や天ぷらの美味しさはオススメ通りで、中でも香り高い胡桃ダレの蕎麦ツユが絶品。こざっぱりとしておシャレな店内の雰囲気も良く、接客レベルも高い、また訪れたいと思わせる良い店だった。その後、雨雲に隠れた「北信五岳(妙高山、斑尾山、黒姫山、戸隠山、飯綱山)」の美しい山容を想像しながらドライブ。サンクゼールの丘(ワイナリー)、小布施の町並みなど、友人オススメの観光コースを巡る。

Nagano7Nagano8れてる時にまた来て!見て欲しかったな。キレーなんだよ、山並みがね…」愛する故郷の風景を我々に見せられなかったことが心残りの友人と一緒に、旅の締め括りは長野名物「馬刺し」がウリの「長野といえば、バニクマン」で打ち上げ。雨女と自称する友人のパワーは強く、旅の道中ほとんどが雨。けれども、雨ならではの雰囲気ある景色も味わえたし、何より寺や神社の参道が空いており歩きやすかった。そして目の前の料理(馬刺しの5点盛り!や信州味噌を使ったバーニャカウダなど)も、信州の利き酒も、どれも美味しいよ、そう言っても残念そう。心底、地元NAGANO♡LOVE。だからこそ伝わった。楽しかった。好きになった。良い街だった。

しいなぁ。帰っちゃうんだぁ」そう言われてもなぁ。長野駅でハグをして、それでも別れがたく、お互いが見えなくなるまで手を振る。ありがと。友人の地元愛に感化され、地元愛のガイドに案内され、またすぐにでも行きたくなった。長野LOVE。「でも、イナゴも、ザザムシも、ハチの子も食べないよ!」と妻。良いさ。長野滋味珍味を食べなくても良い。また訪れよう。彼女がおススメの長野に。

鮎尽くし2016「用賀 本城」

Ayu1Ayu2城です。IGAさん、今よろしいですか」その日の朝、思いがけない人からの電話。何事だ。「今日の鮎なんですけど…」と、言い淀む本城さんの暗い声。その日は恒例の「本城 鮎尽くし」の日。まさか鮎が届かなかったか。最悪の状況を想像し身構える。「鮎がちょっと弱ってましてね、お刺身ではお出しできそうもないんですよ」と、最愛の飼犬の命が尽きそうなのだとでも言うように、本城さんが悲しそうに続けた。なぁんだ。良かった。そう言えば、昨年の鮎尽くしの会では、大きなボウルの中で跳ねる鮎を、テーブル席の我々にわざわざ見せに来てくれたんだった。「では、絞めてしまいます。代わりの料理考えますわぁ」残念そうに、そしてちょっとホッとした様子で電話を切る本城さん。そうか。もしかしたら彼が一番楽しみにしていたのかもしれない。

Ayu3Ayu4尽くしの料理を「用賀 本城」でいただき始めたのは3年前。鮎好きのお気楽夫婦。いつか新橋の「鮎正」で鮎尽くし料理を食べてみたいのだと話題にしたところ、「ウチでやりましょか」と神の啓示のような本城さんのひと言がきっかけ。2回目からは友人たちをお誘いし、数えて今年で4回目の開催。京都(たん熊北店)を出てからは鮎尽くし料理はやっていなかったという本城さん、どうやら我々の予約を毎年心待ちにしていただいている気配。京都の料理人の血が騒ぐらしい。晩夏の頃、一般河川では鮎の産卵の季節、落鮎の頃。そして、成魚でも小ぶりの琵琶湖の「小鮎」。それらを料理によって使い分ける。鮎尽くしの前に、イチヂク、生麩などの彩り鮮やかな京料理の小鉢がいくつか供され、鮎のカルパッチョ(!?)から鮎尽くしがスタートした。

Ayu5Ayu6の肝を石で焼く本城さん。香ばしい匂いがカウンタ席に漂う。香りだけで日本酒をぐびりと飲めそうだ。ところで、カウンタ席に友人たちと5人は不自然かとも思うが、厨房での本城さんの所作を眺め、会話を楽しみながら、出来上がっていく料理を楽しむにはベストの席。お茶目な本城さんがポーズさえ取ってくれる。そして、潤香(うるか)と干し鮎の炙りに焼いた肝添えという、日本酒がススんでしまう最強の肴でぐびり。続いてメインの塩焼き。かりかりジューシーで淡白な身と、ほんのり苦味を楽しむ腹を一緒にかぶり付く。頭から食べられるこの大きさが鮎の塩焼きにはぴったり。日本人として生まれ、この味を美味しいと思えるオトナになったことを幸福に思うひと時。日本っていいなぁと、『和風総本家』のフネさんのナレーションが聞こえてきそうな味。

Ayu7Ayu8鮎の梅煮も鮎料理の王道。もっちりと膨らんだお腹の卵、ほろほろと柔らかい鮎の身を一緒に味わう。梅の身の酸味が程良く効いた上品な甘さ。肝の苦味とはまた違った鮎の旨味や舌触りを楽しむ。「次はお食事で、鮎ご飯です。デザートはどうされますか」すでに満腹中枢からSOS信号が発せられている私を除いて、全員がいただきます!との返事。元々酒を飲まないお気楽妻と、ご飯も甘いものも大好きな役員秘書は言うまでもなく、アスリート女子は風邪をひいていたり、翌日に大事なプレゼンがあるとの若手(でもなくなってきた)建築家は酒を控えめということもあり元気に食べ続ける。特に役員秘書は「ん〜、私もお腹いっぱいだけど、お代わりください!」と鮎ご飯を平らげる。気持ちの良いコメ食いっぷり。メンバー全員での撮影もお茶碗を抱えて(笑)。

日も美味しかったです。ご馳走様でした!」メンバーが声を揃える。その日も本城さんや女将さんと話しながら、いつの間にか最後の客となり、お2人に見送られて店を出る。こうして鮎の季節が終わり、すなわち夏が終わってしまった。すっかり恒例となった鮎尽くしは、夏の終わりと秋の到来を実感するイベントになった。また来秋、こうやって友人たちと一緒に訪れ、行く夏を惜しみ、季節の移ろいを味わいたいものだ。「またすぐに秋を味わいに来るよ!」お気楽妻は夏を惜しむ余韻よりも、目の前にある秋の味が優先だ。

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SINCE 1.May 2005