残るは食欲「水刺齋(スランジェ)」

Han1Han2物の前に、何か軽く食べようか」OK!妻のことばに本能がすぐに反応した。毎週日曜に2人で一緒に受けているスカッシュレッスンは昼過ぎからスタート。直前のランチは必然的に軽めになる。そして1時間動きっ放しのレッスンはハードで、エネルギーを大量に消費する。途中でウェアを着替える程たっぷりの汗をかく。レッスンが終わってシャワーを浴びた後は、腹ペコで喉はカラカラ。一刻も早くビールをぐびぐび飲みたい!何か美味しいモノを食べたい!という飢餓モードに入っている。そんなタイミングで魅惑的な提案に乗らない手はない。というよりは、お腹が空くと不機嫌になり、買物どころではなくなることを、妻は良く知っている故の提案なのだとは思う。

Han3Han4曜の早めの時間とは言え、新宿タカシマヤのレストランフロアは賑わっており、既に人気店には待ち行列ができている。店の選択が遅くなれば、どんどん並ぶ人が増えて行く。こんな時のお気楽夫婦の決断は速い。何度か行ったことのある韓国料理「水刺齋(スランジェ)」という店の待ちが少ないと見るや、すぐに決定。早々に席に着くことができた。「シャキシャキの野菜食べようか!」日本国内に焼肉店は数多いけれど、韓国料理店は意外に少ない。この店はその中でも日本では珍しいフレッシュな韓国野菜を供する、お気楽妻がお気に入りの店だ。スイートキャベツ、レッドマスタード、黒サンチュなどの葉野菜にサムジャンを付け、焼肉などを包んで食べる。これが実に旨いのだ。

Han5Han6っ!韓定食があるよ!」メニューを眺めていた妻の声が弾んだ。韓定食というのは、韓国の伝統的な料理が何種類も出てくるコース料理。お気楽夫婦が以前ソウルを旅した時に食べた韓定食が美味しく、いつか日本でも食べたいと思いながらその機会がなかったのだ。じゃあ、それだ!一瞬も迷わず決定。何しろお腹が空いているのだ。生ビールをぐびりと飲んで、ようやく一息ついたところで、キムチの盛合せと黒ごまのお粥が出てくる。キムチは本格的に辛く、妻に提供。粥は適量で優しく美味しい。食事の最初に出てくるのも胃に優しく理に適っているいるらしい。続いてケジャンや豚足の煮こごりなど、前菜5種盛り。どれも滋味深く美味しく、ビールがすすむ。

Han7Han8ービスの海鮮チジミです」え?メニューを見ると、確かに韓定食をご注文の方にサービスとある。一口齧るとカリカリと香ばしく、思わずマッコリをお願いしてしまう旨さ。「これ全部食べたら最後まで行けないね」と、半分を残し、焼きボッサムの塩辛和えを野菜に巻いてぱくり。ん〜、豚の脂が実に甘く、んまい。「もう食べられないね」妻が次にやって来る予定の参鶏湯を断れないかとスタッフに尋ねると「えぇ〜、もうお腹一杯ですかぁ。ウチの参鶏湯美味しいから食べないと!」と韓国人のイケメンスタッフくんに驚かれる。では、そこまで言うならと食べて帰ることに。待つ間にマッコリをお代わり。そして余りにも美味しかった禁断のチヂミも、なぜか残らず平らげる。

ぁ〜っ!確かに混ぜると美味しいね♬」と妻が唸る。韓国人スタッフが熱々の参鶏湯をほぐし取り分け、「美味しいから、ちょっとでも食べて帰ってください」と小鉢を差し出してくれた。ん、間違いなく旨い。そうだった。これこそが参鶏湯だ。じんわりと高麗人参や松の実の味や香りが浸みてくる。まさしく韓国の味だ。とは言え、全部を食べるのは無理。ごめんなさいと箸を置く。動けないほどの満腹感。ふぅ〜と一息付いて、デザートのざくろゼリーをいただく。「あっ!もう8時だ。買物できないね」仕方ないねと、頷き合う本末転倒のお気楽夫婦。今年も物欲より食欲、残るモノ消費より消えるコト消費。相変わらずの2人だった。

いつものように♬「年末年始のお約束」

IMG_95922015年の大晦日、お気楽夫婦は義父母の住むマンションの“掃き納め”の大掃除を行う。老いた義父母が普段は掃除し切れない場所を徹底的にキレーにして、きっぱりと新年を迎えようという大事なミッション。妻が今回目を付けたのは、洗濯機の裏側。洗濯機を動かし、10年分の埃が溜まった“暗黒面”を掃除機で吸い取り、雑巾で拭きあげる。トイレ、レンジ周り、キッチン収納など、見違える程すっきり。「これ捨てていい?」妻がこまめに使ってなさそうなモノの廃棄を確認する。第三者的な視点で整理を行うと、断捨離がし易い。ひと仕事終え、近くのスーパー銭湯で“年の湯”に入ってさっぱりした後は、年越し蕎麦と雑煮用の食材の買い出し。妻の実家では台所を任される私(笑)の重要なミッション。今年の年越しは鴨南蛮そば。鴨の表面を炙り、焼いたネギと鴨肉のつくねを一緒に盛付ける。旨し。良い一年の締めくくりだ。

Osechi年最大の楽しみは、「割烹弁いち」さんのお節二段重。facebookで繋がっているご主人がアップするお節料理の画像や料理中の動画を眺めながら、おぉっ!活きの良い海老だ!それをゼータクに煮るか!わっ!鰆の西京焼き旨そうだ!と、年末からずっとテンションは上がりっぱなしだった。その一つ一つ丁寧に作られた料理の集大成が、二段重の中にぎっしり詰まっている。その絶品を味わいながら、朝から堂々と酒を飲む、なんとゼータクな時間であることか。「あ、カラスミ取っちゃった」と義父が慌てて取りかけたカラスミをお重に戻す。私の大好物だと知る義父母は、カラスミは私に独占的に食べてもらうことを良しとしているらしい。良いですよ、食べてくださいと言っても箸をつけようとしない。だったら私がとカラスミを頂き、キリッと冷えた日本酒をぐびり。あぁ、至福の味。いつもの義父母の気遣いに感謝。

Mt.Fuji根駅伝観戦も正月のお約束。往路の中継を眺めながら、2日目のお節を堪能しつつ、朝酒。カズノコをぽりぽりと齧り、ぐびり。うわっ、この鶏団子美味っ!とつぶやき、ぐびり。「アワビと一緒に煮たこの大豆が美味しいんだよねぇ」と言う妻に、だったらアワビはいただき!と煮アワビを横取りし、ぱくり。南に面したリビングルームには温かな陽光が溢れ、トロトロしながらTV画面を気にしつつ、幸福気分で読書の時間。持参した文庫本の3冊めを読了。4冊目の沢木耕太郎『キャパの十字架』を読み始めた頃、妻の母校が圧倒的な強さで往路優勝。明るく悲壮感がなく、走ることを楽しんでいるように見える良いチームだ。我が母校は5年ぶりに出場できなかったが、代わりに妻の母校の優勝で溜飲を下げる。東京からの帰路、新幹線の車窓から雄大な富士を眺めることができ、新年の吉祥を感じる。良い一年のスタートだ。

Shinnenkai華料理が良いかな」新年3日めは、日程だけ決めていた酒豪女子との新年会。あの店が良い、この店はどうかとメールでやり取りした後、新年らしく豪華に「全聚徳」で北京ダック!と決定。目の前でカリカリに焼きあがったダックをさばき、荷葉餅(カオヤーピン)に甜麺醤を塗り、ネギとキューリを一緒に美しく巻いてくれる。カリッとしたダックの皮とジューシーな肉、その間の脂、餅と野菜をひとくちで頬張る。それぞれの美味さが口の中に広がる。美味い。きっと今年も中華三昧の日々なんだろうなぁ。そうありたい。酒豪女子がにっこりと紹興酒を注いでくれる。そして自分のグラスも満たす。カラフェがあっという間になくなる。さすが注ぎ上手。友人と昼飲みしていたから、今日は余り飲めないと言っていたのは幻聴だろう。きっと今年もこの美味しく飲める飲み仲間と何度もグラスを交わすんだろなぁ。そう願いたい。

日も楽しかったなぁ。今年もよろしくね」お気楽妻のメッセージに、「ほんと。今年もlove you guys です!」と酒豪女子から返信。嬉しいね。「来年も新年会やろうねっ!」珍しくテンションが高い妻の、かなり気の早い返信が続く。こうして、いつものように、いつもこうありたいと思うままに、1年の終わりと始まりを穏やかに過ごすことができた。ありがたいことだ。相変わらず、こんなお気楽な夫婦を今年もよろしくお願いします。

傘寿と喜寿と浜松で。「オークラアクトシティホテル浜松」

Sanju1Sanju2松に住む義父が80歳を迎えた。80を漢字で書くと八十、縦に書くと「傘」の略字に似ていることから、傘寿(さんじゅ)という年祝いの年齢だ。義母は77歳で、喜寿のお祝いの年。であれば、2人一緒に祝おうと妻と一緒にイベントを企画した。年末恒例の温泉旅館での宿泊を近場のホテル泊に変え、彼らにはスイートルームに泊まってもらい、お祝いしようという作戦。選んだホテルは、「オークラアクトシティホテル浜松」という駅前にある超高層ビルの上層部にあるホテルオークラ系の高級ホテル。ジムやプールなどのヘルスクラブが充実し、展望風呂もある。いつもの温泉旅館は部屋から大浴場までの距離が遠く、滞在中に何度も延々と歩くのが辛いという義母にもぴったり。

Sanju3Sanju4松といえばウナギ!という人も多いが、ヤマハ、カワイ、ローランドなどの世界的楽器メーカーの本社があることで知られる楽器の街でもある。ホテルが入居するアクトタワーはハモニカをモチーフにした外観で、浜松で唯一の超高層ビル(地上45階)であり、街のランドマーク。ホテル内部には音楽に関係する意匠が多く、エレベーターのドアには五線譜が記され、ボタンはヴァイオリン、上下を表すランプはピアノ型。そんな遊びのデザインを発見するたびに楽しくなる。客室はオーセンティックな内装で、ちょっとセクシー度が足りず、お気楽夫婦はやや不満。けれども老いた義父母にとっては「ゼータクだねぇ」という感想になる。お祝いするに相応しいハレの空気感はある。

Sanju5Sanju6宴はホテル内ではなく、「柚露(ゆうろ)」というくずし割烹を予約した。膝の悪い義母向けに椅子で座れる個室があり、主賓用にお祝いの水引を配してくれる細やかな気遣いの店。食事の前にスタッフからもおめでとうございますと挨拶され、まずは家族3人の記念撮影。さて乾杯というところで、義父が「ちょっと良いですか」とことばを挟んだ。「今日はありがとうございます。少しお礼のことばを述べさせてください」と、他人行儀な前置きで、ことばを詰まらせながら訥々と挨拶をする。ふだんはことば少なく、感情を表に出さない義父が、つっかえつっかえ発することばは胸を打つ。良かった。楽しみにしてくれていたのだ。これだけでも企画した甲斐があったというものだ。

Sanju7Sanju8宴の翌日、冬晴れの朝、しみじみと妻が言う。「遠出はしなくなったし、暗くなったら出掛けないって、行動範囲は狭くなったけど、まずまず元気でいてくれて良かった」本当に、心からそう思う。私の父も母も、何年かの闘病生活の後、病床で逝った。義父母は寿命よりも健康寿命、元気で何歳まで生きられるかを考えているはずだ。義父の挨拶の中にも「認知症にならないよう」と祈るような抱負があった。朝食の後、義父と一緒に遠州灘まで一望できる展望風呂に浸かりながら、珍しく長めの会話を交わす。自分で運転できなくなったら、車なしで行き易いスポーツクラブはどこか、どのクラブのプールが充実しているか。…うぅむ。やっぱり親娘だ。根っからの健康お気楽志向だ。

は70歳までスカッシュやるよ」それが妻の目標。いやいや、80歳までスカッシュできますって、あなたなら。今年の抱負はと尋ねると、「身体を鍛えるってことかなぁ」って、毎年同じか?とは言え、離れてはいても遠く義父母の生活を見守りつつ、自らの健康を維持する。一人娘の望みは、きっとそこにもあるのだろう。了解。お気楽夫婦の父母は、彼らしかいない。義父母のために浜松へ、お気楽妻のためにスポーツクラブへ、今年も一緒に出かけよう。

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