カァムバァ~ック!山本!「クリスマスの風景」
2006年 12 月16日(土)
待望の「鮨源」が、ようやくリニューアル・オープン。私よりもずっと、その日を心待ちにしていた妻と二人、“満を持して”の訪問。年末の凄い人出に、席がなくなる前にと、買物もそこそこに店に向かう。この店は週末の予約は不可。旨い鮨を食べてから、買物の続きをと、暖簾をくぐる。あちゃあ、いつもの入口すぐの席には、先客あり。残念。あれっ?山本さんの姿もない。お休みかなぁ。残念×2。カウンタの中は、見覚えのない板さんばかり。ちょっと淋しい。いつもの席の隣りに座る。氷冷のショーケースの中のネタが見やすくなっているが、他はどこを改装したのか分からない。「待たされた割には・・・」妻がぶつぶつ。
「何から行きましょう?」「あぁ、まずは生ビール、彼女はお茶。おつまみなしで、すぐ握ってください。白身は何がありますか?」「ヒラメと、カワハギと・・・」おしっ!気を取り直し、カワハギの肝かぁ!「ヒラメとカワハギをお願いします」「分かりました」しばらくして、「ヒラメはどちらで?」「あ、一貫づつお願いします。二人共小食なんで」「はい、ヒラメとカワハギです」あれ?醤油で食べるのか?そう言えば、塩か醤油か聞いてくれなかったなぁ。カワハギは肝なしかぁ。妻の目が、私に何かを訴えている。あ、そう。せめて、塩にしてもらえと。はい、はい。「あ、これ、塩でお願いできますか?」板さんが、握った鮨を戻し、この店の“売り”であるアンデスの天然岩塩を削り、降りかける。
「なんか、つまんないねぇ。美味しいけど」妻が呟く。確かに、今までなら山本さんが二人の好みを全て分かって、薦めてくれたし、コミュニケーションもスムースだった。妻は、山本さんのお薦めに頷き、味の工夫に驚き、技に感心し、心遣いに目を細め、それらの全てが鮨の美味しさを倍増させていた。初めての板さんだから、仕方ないよと妻に伝えながらも、いつもと微妙に違う味のネタひとつひとつに、アラを探してしまう。やや暖かいシャリに、唸ってしまう。人間の心理、味覚なんて、所詮そんなもの。
いつもどおりのネタ数を、早々に食べ終え、買物に戻ろうと席を立つ。レジには見慣れたおばちゃん。ちょっとホッとして、思わず尋ねる。「山本さんはお休みですか?」「山本さん?あぁ、辞めちゃったのよ。サラリーマンやってるのよ。白衣も似合う、良い板前さんだったのにねぇ。でも、今後もご贔屓にお願いします」ふぇ~っ!それは、悲しい。山本さんあってのこの店だったのに。うぅ~ん、困った。また馴染みになるまで、何度か通うのかぁ。・・・買物を終えて、店の外へ出ると雨。イルミネーションも寒々しく、それでも、だからこそ、とびきりに美しい。「新しいお寿司やさん、探す?」「まだ何度か行ってみてからだけどなぁ」「山本さん、会社勤めなんだねぇ」お気楽夫婦のテンションも今ひとつ上がらない。山本さん、新しい仕事も頑張って欲しいし、人の人生いろいろだけど、良い板さんだったのになぁ・・・。帰ってきてくれないかなぁ・・・。