Archive for 4 月 14th, 2007

言ふことなし「ふるさとの山」

P1040107故郷の川の水の匂いを覚えているから、鮭は生まれた川へ帰って卵を産む。誰もが知っていることだけれど、何故だろうかと思っていた。生まれてすぐに海に出て、一生のほとんどを大海で過ごし、生まれた川に産卵の時期だけに戻り子孫を残して死んでいく鮭たち。一生の中で故郷で過ごす時間の方が短いぐらいなのに。なぜ戻ろうとするのか。なぜ故郷に拘るのか。一方で、ヤマメのように生まれ育った淡水域で過ごす陸封型の魚もいる。あるいは、海に出たきりで故郷を目指さない魚も…。

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」 母親を見舞って急ぎ訪ねた故郷の山を眺めながら、そんな歌が頭に浮かんだ。石川啄木が故郷の“お山”岩手山に向かって詠んだ歌。初めて教科書で知ったその歌は、ふと思い出した今、違う響きを持って響いた。生まれた街で過ごした日々よりも、東京での生活がずっと長くなった。普段の生活では故郷を懐かしむ訳でもないのに、妙に心に浸みた。母の入院する病室の窓から眺める月山(がっさん)は、その名の通り白く輝く美しい裾野を春の暖かな陽射しの中に広げていた。桜の花がようやくほころびかけていた。

P1040108登山が好きな両親は、子供たちを連れてふるさとの山々に登った。活花の先生をしていた母は、野草の名を呼びながら野山を歩いた。母が倒れ、車椅子の生活になってからも、父は母を連れて林道をドライブし続けた。“出羽富士”と呼ばれる鳥海山(ちょうかいさん)も、そんな山のひとつだ。日本海まで裾野を広げるこの美しい山も、この地方の人々に愛され、親しまれている。母の入院している病院の建物の四隅は、サンルーム風の明るい休憩コーナーになっている。そこからは、この二つの名峰以外にも“ふるさとの山”が望め、それぞれの名前が冠してある。なかなか良い趣向だ。

Photo_117東に月山、北に鳥海山が美しく拡がる春の街を訪ね、啄木の歌を噛み締める。こんな春の日は、そう何度もやっては来ない。ふるさととは、母がいるからこそ、父がいるからこそ。そんな思いを抱え、じんわりしてしまったところに、両親と一緒に住む弟と、近くに“嫁に行った”末弟が集まった。見舞の時間も終わったし、寿司でも食べに行こうぜっ♪この時期は“サクラマス(サクラマスの陸封型がヤマメ)”が旨いよ。よっしゃぁ!その後は兄弟3人でカラオケかぁ?…故郷の弟たちもありがたきかな。

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