たらの芽、白魚、蕗のとう「天一の春」

Photo居のお濠 千鳥ヶ淵のサクラが咲きはじめました」春になると、新聞の片隅に掲載されるフェアモントホテルの広告が好きだった。今はないそのホテルを桜の花が咲くたびに思い出す。たった3行の季節の頼り。新聞の紙面の、そこだけが桜色に淡く染まっているような、暖かく良い広告だった。ある日「そろそろ天一に食べに行こうよ♪」妻からの魅惑的な提案。良いねぇ。今度の週末にでも行こうかと答えながら、妻が読み終えたばかりの新聞に目をやると、片隅に小さな広告。「天一の春 たらの芽 白魚 蕗のとう」…なるほど、これか。これだけ分かり易く反応する消費者ばかりだと、広告主も楽だろうなぁ。

Photo_3の週末、東急本店の天一に向かう。「今日は万全の態勢だよ。お昼も180kcalのサンドウィッチだけにしたんだ」妻は100g単位の体重を気にしながら、夜中にポッキーと柿ピーを夕食代わりに貪り食べる奇妙な食生活。彼女の中ではバランスが取れているらしい。カウンタに座ると板さんがすかさず「今日のオススメはたらの芽、白魚、蕗のとうです」おぉっ!広告通りだ。もちろん、それ全部ください♪それにコゴミも。目の前に、そんな愛らしい春の山菜が並ぶ良い席だ。最初は蕗の薹。「そのままで召し上がってください」口に含むと、独特の苦味と甘みとがふわぁんと広がる。「美味しいねぇ。春の味だね、それに大人の味♪」あぁ、大人で良かった。続いてたらの芽を塩で、コゴミをタレでいただく。くぅっ、うんまい。サクサクとした歯応え。春の山菜たち、君たちを食べに来たんだよ。

Photo_6には何行きましょうか。鮎もありますけど」うぉっ!鮎!お願いします。思わず前のめりで答える。それにしても早いですねぇ。「昨日からです。琵琶湖の鮎が入りました」それは嬉しい。形を整えて丁寧に揚げられた鮎が半紙の上に泳がされる。美しい!写真撮って良いですか?「あぁ、じゃあ半紙を変えましょう。その方がきれいに撮れますね」ありがとうございます。愛らしい鮎の頭からガブリ。うぁ~、腹の苦味と身と皮の香ばしさが、たまらん。白ワインください!う~ん、合う合う。んまい。「他には鯒、海老…」くださいっ!妻と同時に即答。それと、穴子は2人で分けて、グリーンアスパラと椎茸お願いします。「椎茸は海老のすり身を詰めたのもありますが」それっ!ください。すっかり板さんにツボを突かれまくり。忙しそうに天ぷらを揚げながら、細部まで目が届く板さん。妻も完全にお気に入り。

Photo_7っぱり天ぷらは海老だね」名古屋文化圏出身の妻は海老が大好き。その海老は1本ずつ微妙に角度を変え、盛り付けるときに美しく寄り添うように揚げられている。下の1本は横に、上の1本はシャチホコのように。美しい。「最後に丸十ください!」デザート代わりにサツマイモを食べる。甘くてほこほこの芋に、優しい味の天汁とダイコンおろしをたっぷり乗せてぱくり。これまた幸せな味。天一の衣は薄くさっくり、揚げ色も淡く2人の好み。「お寿司よりも天ぷらの方が野菜も摂れるし、季節感もあるし、良いよね」今日の妻の満足度はかなり高い。確かに天ぷらは季節を舌で楽しみ愛でる料理。繊細な春の味を堪能した。「次はたん熊北店の春を味わう番だね♪」…こんな2人に蓄えができ、妻の実家である浜松に引っ越す日は来るのだろうか。あ、ところで本城さん、近々伺います!

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