ご近所の満腹・満足食堂「はしぐち亭」千歳烏山

Photoが近づくと、急に妻が忙しくなる。季節によって仕事量が大幅に変わる妻の担当業務。自分の仕事を紹介する際に「まぁ、季節労働者みたいなものだから」ということばも当たっている。そんな時に困ってしまうのが、独りの夕食。良い年齢のオヤヂがいつも弁当ばかりでも侘しいし、自分だけのために(2人の時でも外食ばかりなのに)料理を作るのも気が乗らず、かと言って行きつけの飲み屋ではブレーキ役がいないことを幸いに飲み過ぎてしまうし、わいわいと食べるべき中華料理、スペイン料理を独りで食べるのは心寂しい。まして独り焼肉は無謀だし、蕎麦屋の店仕舞は早い。文庫本を片手にビールをゆっくりと飲みながら料理のできるのを待ち、きちんと栄養バランスを考えた食事ができる“食堂”が欲しい…と思っていたら、ご近所にそんな店ができた。店の名前は、はしぐち亭

週通うクリーニングやさんのお隣。同じ場所に以前あった店は数週間で閉店。何となく店に入り難いマイナスオーラが漂っていた。それに比べ、開店したばかりのこの店は入ってみたい気持にさせる雰囲気がある。違いはなんだろう?ずっと気になっていた。そんなある休日の昼下がり、妻と一緒にお試しランチ。私はランチビールとオムライス、妻はロールキャベツ。いずれもサラダ付き。うん、どっちも美味しいぞ。バゲットを齧った妻が「あ、これナパスブレッド(ご近所のパン屋さん)のバゲットだ♪」と零したことばを聞き取った店主の橋口さん。「そうなんです、ナパスブレッドさんのパンは気に入って使わせてもらってるんです」ぴぴっ!パン好きの妻の琴線に触れた。聞けば表参道のフレンチレストランで修行中に、ご近所のオーバカナルで修行していたナパスブレッドの店主と知り合い、お互いに独立開業したこの街で偶然にも再会したのだと言う。

Photo_2ってみたいオーラの元が分かった。それは店主の橋口さんの飾らない穏やかな佇まい。目線が低く、細やかな気配り。気の利いたセリフが飛び出すわけでもなく、むしろぼそぼそと独り言のように話しかける彼の人柄の温かさ。メニューは、オムライス、ビーフストロガノフなどの“洋食屋”の定番メニューを中心に、フレンチとイタリアンのテーストを取り入れた幅広いメニュー。「そこに載ってない料理もいろいろあります、夜も是非いらしてください」はい、来ます来ます!来ました!と翌週すぐに1人で出かけた私。店のドアを開けると橋口さんの笑顔。「あぁ、こんばんは!」混んでますねぇ。「はい、ありがたいですねぇ」カウンタの端に座り、鴨のロースト、トマトサラダ、ガーリックトーストをオーダー。その日はなんと橋口さん、小さな店ながら独りで調理も接客もこなしていた。なのに料理はきちんと美味しく、タイミング良く運ばれてくる。凄い!「楽ばっかりできないです。独りでやれる時は頑張ろうかなと。でも、お客さんの中に店で働かせてくださいって言ってくださる方が何人かいらしてですね」それも橋口さんの人柄。ますます気に入った。

Photo_3末の夜、予約をして3度目の訪問。ご近所の友人夫妻と一緒。「きっと彼らも気に入るよ、2人を連れてこなくちゃね」そう言いあっていた。そして私の常連化の法則のためにも。店主とことばを交わし顔を覚えてもらい、間を置かずに再来店。そして予約で自分たちの名前を伝えれば、もう常連さん。「あぁ、いらっしゃいませ!」今日は仲間を連れてきました。「ありがとうございます!」その日も店は満席。お酒が飲めない友人夫妻は、嬉しそうにメニューを眺める。「あぁっ!マカロニグラタン頼んで良いですか?好きなんだけどなかなかメニューになくって」友人(夫)が涙ぐむ。それ以外にも「ほうぼうのワイン蒸し焼き」「バベット(牛ハラミ)ステーキ」などなど、たっぷりオーダー。グラスワインも何種類か。これは私が独りだけで楽しむ。「どれも美味しいねぇ」「う~ん、良い店だね」「気に入ってもらって良かった良かった」橋口さんがにこやかに見送ってくれる。「またおいでください」…こうして、蓄財のできないお気楽夫婦の外食率がますます高まるのだった。

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