3人の女形と3人の女『ウドンゲ』『更年期 SHOW GIRL』
2008年 7 月26日(土)
3人の男性の演じる3人の中年女性の話、3人の女性が演じる3人の更年期の女性の話、そんな芝居を相次いで観た。「女」に拘る3人の男たちの名前は、篠井英介、深沢敦、大谷亮介。篠井と深沢は、加納幸和らと『花組芝居』でNEO歌舞伎の女形を演じていた、いわば女形のベテラン。特に篠井は、花組の看板女優(?)だった。大谷亮介は、小説家でも知られる(笑)原田宗典が座付作家だった東京壱組の俳優。(決して女装は似合わない)一癖ある3人のオヤジたちが女性を演じ続ける『3軒茶屋婦人会』というユニットで、第3回目公演を迎えた。どこかの芸人が喜びそうな3づくしの芝居のタイトルは『ウドンゲ』。
仮チラシには、女になる前の3人の写真。本チラシと比較すると、そのなりきり振りが良く分かる。いるのだ、こんなオバちゃんが。実在するのだ、確実に。特に深沢敦演じるオバちゃんは、誰の隣にも確実に、いる。断言しても良い。見た目が都子ちゃん(土曜朝の『旅サラダ』でお馴染み)に似ているとかいう問題ではなく、その性格、仕草、話し方から思考回路まで、疑いようもなく存在するオバちゃんそのもの。屈折した学生時代から現在の暮らしぶりまでが、くっきりと浮き出るオバちゃん。そのオバちゃんぶりに、笑わせてもらった。そして、イライラさせてもらった。加えて、篠井英介は、凄い。女だ。オバちゃんでもあるけれど、齢はとったけれど、「女」であり続ける。怖いぐらい女だった。良い芝居だった。
ところで芝居の会場はベニサン・ピット。公演毎に全く違う顔を魅せる良い小屋だ。(劇場の案内には、都営新宿線森下駅から徒歩3分とあるけれど、脚力に自信のある方ならその時間での到着は達成可能かもしれないが、一般人には到底無理。お気をつけください!)17年前、この会場で、当時人気だった岡本健一(元 男闘呼組)と村井国夫が演じる『蜘蛛女のキス』1公演を自社会員向けに買い切って、ヴーヴ・クリコに協賛してもらい、終演後にシャンパン片手に出演者によるトーク・ショー♪などという地味派手なイベントを(前職の会社で)担当した。私にとっては、そんな思い出の劇場。他にも2公演買い切って、その公演毎に(若き日の)私が入場者に向けてご挨拶したのだった。つくづくバブリーな時代だった…。
そして、3人の女性が更年期女性を演じた『更年期 SHOW GIRL』は、牧野エミ、楠見薫、中道裕子という小劇場ファンなら落涙する3人の女性ユニット「タニマチ金魚」の第1回公演。こなれていない初日だったため、苦笑する場面もあったものの、そこはご愛嬌。更年期にはちょっと早いように思える3人がドタバタを繰り返す、いかにも後藤ひろひと脚本、福田転球が演出した舞台だなぁ、という分かる人には分かる芝居。幕が降り、何度目かのカーテンコールで牧野エミが涙を流した。うんうん、応援してるから、その気持を忘れず今後も頑張れ!でも、見続けたいと思わせる芝居をやってくれなきゃ、すぐ見捨てるから、それも忘れないように。エラソーに言っているが、小劇場の空気は妻も私も大好き。芝居好きの役者たちが、観客たちが、作る独特の空気。時間とお金が許す限り、できるだけ多くの芝居を観に行くことが、役者たちへの応援だと思っている。「さぁて、次は何の公演に行こうか?」妻が劇場で配られたチラシを見定める。その目は、優しく厳しい。