おめでたの箱入り「森 幸四郎のかすてら」

Photoる日、いつものように夕食を外で済ませ、深夜に帰宅したお気楽夫婦。宅配ロッカーに荷物到着を知らせる部屋番号が表示されていた。指定のボックスを開けると細長い箱。何だ?和服の反物のような大きさ。荷物を抱えエレベータに乗る。送り主を見ると前職の会社の後輩にあたる友人。先日送った出産祝いのお返しらしい。「何だろうね」我慢できずに、すぐに包みを開けようとする妻。何とか押し止める私。お気楽夫婦が住むマンションのエレベータの中には防犯用のビデオカメラが設置されており、エントランスのモニターに常時映像が流されている。ここで開けたらプライベート丸出し。「食べ物っぽいよ♪」妻は妙に鼻が利く。

Photo_2イニングテーブルの上に包みを置き、丁寧な包装を解く。おぉ〜っ!凄い。仰々しくも桐の箱。金塊かぁ。恐縮だなぁ。「そんな訳ないでしょ。銀座文明堂って書いてあるじゃない」妻にはシャレは通じない。その上、視力も抜群である。ふんふん、文明堂と言えば「♪カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂♪」というCMで有名な店。やはりカステラか。(ちなみに「電話は二番」というのは、電話交換手に銀座局の2番をお願いします!という時代からのコマーシャルだったということだろうなぁ。しみじみ…)箱を開けるとさらに白い包み。…今度は私が我慢できずに包みを開ける。

ぉ〜っ!やはり金塊だぁ♪中から現れたのは、美しく金色に輝く延棒。刻印も打ってある。(それは“焼印”でしょ!と妻)但し、「田中貴金属」とか「三菱マテリアル」とかではなく、「森幸四郎」とある。同封された栞の表紙には「銀座の職人 森幸四郎」、中面には「かすてら職人歴 半世紀…」と説明書きがある。その説明によると、製法の難しさによって“幻の味”となってしまった「五三カステラ」を文献や先人たちからの言い伝えによって復元したカステラらしい。凄っ!卵黄を3割増、和三盆糖、英国産ハニーなどの厳選した材料を使った究極の味の芸術品だという。八重洲の大丸でも人気らしい。ふぅ〜ん。「食べよう!食べよう♪」深夜でも甘いものを欠かさない妻が主張する。はいはい。金の延棒を取り出しナイフを入れる。良い香り。蜂蜜が染み出して来そうな生地。そして、すごい弾力。下の“こげ”の部分まできれいに残るように丁寧に切り分ける。

Photo_3に乗せ底を確認。うんうん。きれいに切れた。ザラメの和三盆糖も付いている。ぱくっとひとくち。上品な香りと共に、濃厚でジューシーな味が広がる。ザラメがかりっと良い音を弾く。しっとりとしたキメ細やかな生地が舌と歯に心地良い。うんまぁ〜いっ♪これは贅沢なカステラだ。ぱさぱさした感触が全くない。「美味しいねぇ。カステラなんて久しぶりに食べたけど」確かに私も久しぶり。子供の頃はお客さまの手土産の定番だった。端の部分をコソギ落として食べるのが好きだった。ちょっと苦みが甘みと混じり、絶妙の美味しさ。「うん、あったあった。それにしても箱入りのカステラなんて初めてだね」思えば、送り主の友人はいろんな曲折を経て結婚。結果的には“特大”の愛情と幸福を手に入れた。そんな友人待望の第一子。それも女の子。可愛くて仕方ないに違いない。あっ!なるほど、それで“箱入り”なんじゃない?「…」やはり、妻にはシャレが通じないらしい。

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