鮟鱇の海を訪ねて「茨城ほのぼの紀行」

Photoる週末、茨城に住む妻の従妹を訪ねた。一人っ子の妻にとっては妹のような存在。「家を買ったから遊びに来てねぇ♪」と前々から言われてはいた。しかし、上野から特急で1時間、世田谷の西北端にあるお気楽夫婦の住まいからは都合2時間。日帰りで訪ねるには遠く、かと言って泊まりがけでわざわざ行くには“口実”が必要な距離。そこで、毎年恒例にしていた私の誕生日祝いのホテル宿泊を、都内近郊から水戸に変えた。口実(あるいは目的)は、鹿島灘や北茨城で獲れる冬の味覚、アンコウ。極めてシンプル。「うわぁ♪嬉しい。じゃあどこに行くか考えておくね・・・」妻が訪問を告げるメールを送ると、従妹からたっぷり絵文字入りのメールが返って来た。彼女も弟と2人だけの姉弟。姉の来訪を心待ちにする妹の姿が目に浮かぶような元気な文面だった。

Photo_2Photo_7寄り駅に迎えに来てくれた従妹夫婦の車で茨城観光ドライブ。「今日は“海コース”にしましょう!」行き先はお任せ。事前の予備知識がない分、車窓から眺める風景は新鮮。海岸線をひたすら北上する。いくつかの地元の名所を訪ねた後、さらに北に向かう。「ここは余り有名ではないんだけど、とっておきの場所なんだ♪」従妹がちょっと照れながら案内してくれた場所は、まさしく穴場スポット。遠くから冬の荒波が次々に押し寄せるが、海岸手前の岩場で波が消され、海岸線では穏やかな波がひたひたと寄せる不思議な入り江。いつまでも波を眺めていたくなる和みの風景。海辺の町で波の音を聞きながら育った私にとって、海岸で波の砕ける音は、心地の良い懐かしい音楽だ。「おぉ〜い。そろそろ行くよぉ!」妻に促されて車に戻る。

Photo_5Photo_6もないとこなんですけどねぇ」帰路、地元出身の従妹のダンナがそう言いながら、懸命に道の途中の名所を解説してくれる。確かになんでもない風景なのに、彼の茨城弁と相まって、実にほのぼのと温かい風景に見えてくる。「ところで、茨城の人って冬はアンコウ鍋ばっかり食べてるの?って言われるんですけど、家でもめったに食べないし、僕なんかお店で食べたことないんです」あぁ、そうなんだ。「だから楽しみなんだぁ♪」従妹も唱和する。素朴な夫婦。そんな2人が案内してくれたのは地元の有名店「山翠」。到着すると店の前まで客が溢れている。「予約しなくても大丈夫ですよって電話で言われたんだけどなぁ」と従妹のダンナが心配する。ん、のんびり待とう。そんな気分でいられる旅だ。

Photo_8Photo_9つこと30分余り。満席の店内の奥、お座敷に案内され、まずは乾杯。運転するダンナと姉妹のような従妹同士2人はお茶で。あん肝の煮こごり、アンコウのから揚げを肴にビールをぐびり。イワシの天ぷら、軍鶏の山椒焼きも良いお味。うんまぁ〜い。そして待望のあんこう鍋。「うわぁ、美味しそう♪」この店は味噌にあんこうの肝をすりこんで炙った秘伝の“焼き味噌”が特徴。小さな団子状の焼き味噌をスープに半分程溶き、くつくつと煮立ったら“あんこうの七つ道具”と言われる正身、皮、肝などの具材を入れる。旨そうっ。どれどれ、熱々を頬張る。うっ、旨い。ちょっと入れただけで濃厚な味になる焼き味噌の味と、淡白なあんこうの身がバランス良く、素朴ながら滋味溢れる美味しさ。「美味しいですねぇ」と声を揃える従妹夫婦。彼らと過ごした冬の1日と同様に、温かく、ほのぼのとした料理だった。

ころで明日のお迎えは7時ぐらいで良いですか?」え”?それはちょっと早くない?

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