内視鏡をダブルで!「ゴージャス人間ドック」

Photoえば、歯科治療で長い時間口を開けているのが辛い。歯冠の型を取るために、ゼリー状のブツを乗せたトレイをくわえただけでもうダメ。オエッとエヅイてしまう。咽頭神経過敏症。だから、経口(口から入れる)内視鏡での消化器検査などというのは自殺行為に等しい。想像もしたくない。「ぜんぜん平気だったよ♪」数年前に経口内視鏡検査を経験した妻はこともなげに言う。私には無理。涼しい顔をして検査を受ける妻とは違う。ところが、そんな私に朗報が届いた。検査の負担を軽くするための経鼻(鼻から入れる)内視鏡という技術が発達し、導入する病院が増えているというのだ。さっそく調査開始。ふむふむ。健保組合指定の検査センターにもいくつか実施している病院がある。せっかくだから、その中でも最新の設備であろうと当たりを付け、東京ミッドタウン・メディカルセンターの人間ドックを予約。

付に向かうエントランスもゴージャス。高級感溢れる内装。このセンターは「プレミアム人間ドック」と称して同じ建物の中にあるリッツ・カールトン東京に宿泊して検査をするコースもある。お値段は1泊2日のスタンダードコースで357,000円。2泊3日のバイオフィジカル250ダイヤモンドコースはなんと2,205,000円!すごい!もちろん私はプレミアム(…ではない)一般コースで受診。豪華なロッカールームで検査用のパジャマ風ウェアに着替える。センターの待合室には環状にソファが並び、周囲に診察ルームがある合理的なレイアウト。血圧、眼圧、血液検査と一般的な検診が続く。プライバシーを配慮するため受付番号で呼ばれ、それぞれの診察室に入る。自分の番号が呼ばれる度にどきどき。そして、いよいよ上部消化器内視鏡検査!

視鏡検査は初めてですか」はい。胃は初めてです。どきどきです。「経口に比べたらずいぶん楽になったと思いますよ」ちょっと安心。「まず鼻に麻酔をします。つんとします」事前処置が始まり、ベッドに横になる。「リラックスしてくださいね。では始めます」いよいよだ。ん、モニターを視る余裕もある。「喉を通るときにちょっと苦しいです。でも唾を飲み込まないでください」え!それは無理だろぉ!既に唾が溜まる。「飲まずに口から出してティッシュで拭いてください」うはぁ、厳しい。「はい、一番大変なところは過ぎました。食道からじっくり診て行きます」おぉ、美しいピンク色。「胃の入口です」うん、きれいだ。「あぁ、ここ小さな腫瘍がありますね。でも良性です、大丈夫です」え!本当に?保証してくれるんですか!(そんな声は出ない)「はい、戻っていきます」うぐぐ。苦しい。冷や汗だらだら。唾はたっぷり出まくり。もうダメだぁ。「はい、終了です。ずいぶん上手に受けていただきましたよ」あ、そうですか♪涎を拭きながらでも、誉められるとちょっと嬉しい。全検査終了。とても感じの良い検診センターだ。また来年もここに来ようか。

Photo_2 ころが私にはもうひとつ乗り越えるべき難関があった。大腸の内視鏡検査。10年ほど前に2度に渡り7つものポリープを摘出した経験を持つ私。4、5年毎に大腸の検査を別メニューで行うことを自らに義務づけている。入院、通院、検査とすっかりお馴染みの病院の個室に籠る。大腸の内視鏡検査は事前処置の方がたいへん。2ℓ以上はあろうかと思える下剤を2〜3時間で飲み、腸内を洗浄する。出し切れない場合は最終手段であるお仕置きとも言える「浣腸」が待っているため、必死で飲む。飲む。…もう飲めない。「いかがですかぁ。濁らなくなりましたかぁ」インタホンから看護婦さんの明るい声。救われる。はぁい。「では診に行きますので流さないでください」ちょっと照れる。「大丈夫ですね」合格。いよいよ検診だ。ベッドに横たわり、自らを鞭打ち、さぁどうにでもしてくれ!という気持にする。そのとき顔なじみの婦長さんが処置をする看護婦さんに耳打ち。注射を打たれる……。

い、終わりましたよぉ。問題ないです」え!寝てましたか。そうかぁ。前回の検査で苦しんだ私を覚えていたらしく、婦長さんが(強めの?)麻酔を施すよう指示したようだ。もう夕方。あっという間の検査。モニターも視られなかった。「病室に戻ってお休みください」麻酔が残っているのだろう。足下はふらふら。病室のベッドに横になる。ようやくほっとする。これでしばらくは大丈夫だ。

んな思いをしてまで定期的に検診を受けるのには理由がある。私の大腸ポリープ摘出手術の体験談を一緒に笑った同僚が、その僅か2年後に大腸癌で亡くなった。まだ若く、才能溢れる女性だった。辛かった。とても辛かった。あんな辛い思いを周囲に残したくなかった。まして妻には。「あなたがいなくなったら…」妻が呟く。うん、私がいなくなったら…。思わず泣きそうになる。「とっとと別の男を見つけるさ♪大丈夫!」…うんうん、そうだろう…え!

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