ご近所鮨屋常連化計画「鮨いち伍 & 鮨あらい」千歳烏山
2009年 12 月20日(日)
お気楽夫婦は困っていた。御用達の新宿髙島屋の鮨源に山本さんという馴染みの板さんがいなくなり、鮨と言えばこの店、という店がなくなってしまったのだ。それから3年。もちろん鮨を断っていた訳ではない。あちこちの有名店や、評判の店など、ここと思う店には何度か訪れてみた。けれど、お気楽夫婦にフィットする店に出会うことはできなかった。何もゼータクを言っている訳ではない。2人が望む店は、季節毎のネタが豊富で、板さんとの距離は近からず遠からず、他の客と必要以上に絡まずに済み、リラックスして食べることができて、味と価格のバランスが良い店。あ、ゼータクかも。
そんなある日、ご近所に気になる2軒の寿司屋を発見した。美味しい店が増えている通称「八間通り」沿い。これは行かねばと、さっそく2つの店を立て続けに訪れた。まずは今年の4月に開店したばかりという「鮨いち伍」へ。入口横に丸い穴を穿つ独特の風貌、白いのれんが清々しい。店を入ると白木の低めのカウンタ。ガラス扉のネタ箱が2つ。それも客の前に持ち運ぶことができる箱。ほほぉオサレ。空腹の2人、すぐに握ってもらうことに。白身は何がありますか。「鯛ですね。昆布締めと、煮切り、漬けでご用意してます」ほほぉ×2、びびっときた2人。それ、一貫づつ、3種類ください。
黒く輝く盛り板の上に、3つの味の鯛の握りがタイミング良く乗せられる。う、旨いっ!「凄いっ!美味しいねぇ♪」昆布締め好きの妻が歓喜にむせぶ。光り物は?「鰯とシメ鯖です」じゃあ、それください。うぅ、旨い。次は赤身、中トロ、大トロください。煮切りで輝くマグロたちが、がつ〜んと旨い。その後もイカは丁寧に包丁が入れられ、車海老の踊りは、その場で茹でられる。良いネタ、良い仕事。「それにしても静かだね」BGMはなし。小さな店のため客の会話も少ない。まだ若いご主人も最小限の会話しか返さない。店の空気がやや重い。「でも幸せに美味しい♫」と妻はご満悦。
1軒目の店で調子に乗ったお気楽夫婦。翌週末、2軒目の店を訪問。やはり開店したばかりの「鮨あらい」。白木のカウンタ、ネタのケースが目の前にないのは「いち伍」同様。お酒を選びながらカウンタの中のご主人を眺めると何か仕込み中。おぉ、大好物のカラスミだぁ。まずは、カラスミください。ざっくりと切られた黄金色に輝くカラスミ大根をつまみに、きりりと冷えた日本酒をちびり。この店も良い感じのスタートだ。続いて握り。カワハギの握りに肝を添えて。ふんふん、冬の味。旨い。飾り包丁を入れたコハダもなかなか美しい。BGMが柔らかく流れ、適度な込み具合の店内は良い雰囲気。
そこに独りの客がやって来る。お気楽夫婦同様に初めてらしく、ご主人と盛んにことばを交わしながら食べる。聞かずとも耳に入る会話。「大間のマグロが…」「食楽の最新号の鮨特集で…」という声が聞こえてくる。ふぅ〜ん、天然の生マグロで取材されたんだ。ウチも食べなきゃ。ということで、さっそく中トロをオーダー。うん、確かに美味しい。「いやぁ、この周辺の美味しい鮨屋を探していたんですよ。感激だなぁ。やっと見つけました」と声を挙げる独り客。気持は良く分かる。ここにもお気楽夫婦と同様の計画を持っていた人がいた。けれど、大袈裟なリアクションが微妙だなぁ。
満足の夕餉を終え店を出た2人。さっそく次の作戦を検討する。「誰かを誘って食べに行きたいと思うのは、どっちの店かなぁ?」どちらも美味しいけれど、1度だけの訪問では満足できる居心地の良さは得られない。まずはどちらかの店を選び、ご近所の友人夫妻と一緒に訪問するところから始めよう。ご近所鮨屋の常連化計画。お店に通い、自分たちにとって居心地の良い店にする道程は、まだまだ長い。
■食いしん坊夫婦の御用達 鮨いち伍 訪問記