名物に旨いものあり?「はらこめし、寿司、牛タン」仙台

HarakoMeshi物に旨いものなし。それは一面で正しく、誤りでもある。例えば、1軒の店が地元の名産を活かし近所で評判となり客が集まる。評判が口コミで広がり遠来の客も集まるようになる。すると周囲に同じような料理を出す店ができる。評判の店の波及効果で近所の類似店にも客が並ぶようになる。その辺りからが分岐点。2軒目以降の店も最初の店に負けずに味を追求し、ある水準に達していれば、最初の1軒だけの評判から地域の評判にステップアップする。そして、そんな店が増えれば好循環となり、地域全体の“名物”になり、一段と多くの人を集めることになる。けれど、その過程で努力を惜しみ、あるいは便乗するだけのお店が出てしまう時点で、悪循環に陥るリスクが生まれる。せっかく食べに行ったのに…という気持はマイナス方向に倍加する。

Gyutan-Street士宮焼きそばにはじまる“B級グルメ”でのまちおこしは、そんな過程を意図的に作ることに他ならない。地域の誰かが創造したある種の知的財産を地域で共有し、地域の財産とする。地域のB級グルメブームと呼べる程になった今は、その経済効果は巨大なものになっている。情報が口コミで伝わるという過程は昔と同じでも、今はネットという口コミが爆発的に広がるインフラがある。その口コミにマスコミが乗っかり、さらに情報は日本の隅々まで広がっていく。そして、その地に行かなければ食べられなかった料理が、日本の各地で食べられるようになる。長崎ちゃんぽんの「四海楼」、宇都宮餃子の「みんみん」、仙台牛タン焼きの「味太助」、名古屋手羽先唐揚げの「風来坊」などなど。諸説あるものもあるけれど、いずれもどこかの街で、誰かが最初に考えた料理(なのだろう)。

Gyutanころで、仙台名物と言えば、牛タン。三陸のネタを使った寿司も有名だし、阿武隈川河口の亘理町が発祥だというはらこめしも人気。観光はしなくても、地元の名物料理は食べずにはいられないお気楽夫婦。ある週末、仙台を訪れた際に向ったのは、駅構内にある「すし通り 牛タン通り」というレストラン街。仙台名物の牛タン焼き、寿司屋だけを集めた分かりやすいコンセプト。牛タンの「利久」「伊達の牛タン」「喜助」、寿司の「海風土」「三陸前」など人気店を揃え、いつも行列が絶えない場所だ。はらこめしがメニューにあることを確かめ、その中の1軒に入る。さっそくいただいた「はらこめし」。輝くイクラ。見た目は期待通り。握りのネタも悪くはなさそう。はらこめしをひと口。ん〜、美味しいけど、予想の範囲内の味。驚きも、口の中に広がる喜びもない。見れば、板場の雰囲気もどんより、清潔感にもやや欠ける。

Rikyuたちの口が驕っているのかなぁ。あんまりオイシーって感じじゃない…」妻も思わず口ごもる。「観光客向けだけで、場所が良いから人も入るからかなぁ」ちょっと残念そう。よし、だったら夕食に挽回しよう。キンキの炭火焼の「地雷也」、牛タンだったらオーソドックスに「利久」はどうだ!「ん〜、地雷也は前に行ったから、利久かなぁ」妻の期待は薄め。ふっ、見てなさい。と言うことで、宿泊先のウェスティンホテル仙台のすぐ傍にある利久一番町やなぎ町店に向う。新規開店したばかりの店らしく、店内は清潔感が溢れている。カウンタに座り、お馴染みの「牛タン炭焼き」「牛タン薫」などをオーダー。「あれ?美味しい!」と妻。あれ?ってことはないでしょう。美味しいよね。一般的な焼肉屋の“タン塩”などと比べると、圧倒的に肉厚でジューシー♬きちんと旨い。名物と呼ぶに相応しい味。

気店の店舗展開にはいくつかのパターンがある。独自の味と料理を守り、1店だけで伝統を繋ぐ店。例えば、親子丼発祥の店と言われる人形町「玉ひで」(けれど、この店も羽田空港国際線ターミナルに支店を初めて出した。ちょっと残念)。そして、利久のように発祥の地を起点に全国に展開する店。ちなみに全国で24店、東京都内だけで3店舗もあるらしい。そこに行かなければ食べられない味と、身近にあろうとする味。どちらも一長一短あるけれど、オリジナルの味の水準がキープできるなら、どちらにもそれぞれの価値はある。けれど、“名物”と呼ばれ、その地に行かなければ食べられない味が失われるのは淋しい限り。「近所で気軽に食べられるようになったら、まぁこんなもんかって思っちゃうのかな」では、それを確かめに「玉ひで」の羽田の店に行ってみようか。「ん?香港に行くついでに?それとも台北?」妻の興味はいつも羽田の先にある。

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