劇場へ!『音楽の時間』リリパットアーミーⅡ

Lilipa島らも。作家で、役者で、ミュージシャン。そして、ジャンキー。2004年没、享年52歳。中島が観に行った芝居が余りにつまらなくて立ち上げた劇団が、笑殺軍団リリパットアーミー。現在は、座長であり脚本家、役者のわかぎゑふがリリパットアーミーⅡを率いる。お気楽夫婦が初めてその舞台を観たのは1997年。劇団の中心は中島らもからわかぎに移っており、中島らもは平劇団員として客演の役者のように舞台に上がっているだけだった。はじめは大阪の笑いにとまどいながらも、夫婦揃ってすっかり嵌り、わかぎが主宰するもうひとつの劇団ラックシステムも含め、毎回欠かさず観に行っている。リリパ設立から25年、関西を中心とした人気劇団ではあるけれど、公演はいずれも小さな劇場。必ずしも商業的に成功しているとは言えない。

Ongaku no jikan夜(ある週末と普段なら書くところ、今回は敢えて昨夜という)いつものようにご近所の友人夫妻を誘い、下北沢のザ・スズナリで初日を迎えた『音楽の時間』を観た。相変わらず良い舞台だった。大阪という街に拘り、丁寧に構成された脚本。2時間という公演時間内に、それぞれの登場人物を巧みに描き、観る者に感情移入させ、芝居の合間にきちんと笑いを織り込んで行く。わかぎの脚本には“こ難しさ”はない。むしろエンタテインメント。関西弁の微妙なニュアンスを大切にしながらも、ことばで遊び、ことばを紡ぐ巧みさは心地良い。そして重くなりがちなテーマを扱う時も、ある場面では大阪の笑いで物語の流れを緩め、ある時は大阪弁でテンポ良く畳掛ける。2時間という時間を全く飽きさせず、笑いに巻き込み、涙を誘い、楽しませる。まさしく(もちろん関東にも通用する)関西小劇場界のエンタテインメント。

wakagi F屓の引き倒しということばがある。素人の書くこんな記事に何の影響力もないのだけれど、(気に入りの芝居は特に)公演中には記事を書かないことにしている。けれど、舞台初日である昨夜、拍手が鳴り止まない舞台の上で、座長の挨拶に続く平日の公演はまだ“売る程チケットがある”というコメントが淋しかった。こんなに小さな小屋なのに、こんなに良い芝居の席が、平日とは言え埋まっていないのが悔しかった。そこで、どんなに小さな影響でも良い、ネタバレしないように注意しながら、公演中に記事を書くことにした。明治のはじめ、日本人が西洋音楽を聴き始めた頃の大阪。海外留学から帰って来た音楽家の卵。偶然知り合った置屋の女たちの大阪弁の会話が音階を持つことに気付く。そして五・七・五の和歌のリズムがメロディに重なり、日本で初めて西洋音楽が生まれる。そんなシーンに鳥肌が立った。

Kong calenderもしろかったねぇ♬」公演中、隣の席で笑い転げるご近所の友人夫妻の横で、薄〜いリアクションで芝居を観ていた妻が呟く。舞台を観ている様子だけからは決して伺えないけれど、彼女はわかぎの脚本が大好きで、コング桑田や野田晋市(今回は出演せず)などの役者が大のお気に入り。この劇団の芝居だけは必ずパンフレットを購入し、恒例の終演後のサイン会の列に並ぶ。その上、昨夜は舞台での物販案内でコング桑田が言うところの早割ではなく遅割、早い話が売れ残った2011年カレンダーまで購入。手作り感覚満載のカレンダーの3月、コング桑田を眺めてご満悦。劇団員が客演で出演する舞台のチェックも欠かさない妻は、劇団の公式サイト「玉造小劇店」を頻繁に訪問。もちろん劇団のファンクラブ会員にもなり、公演の度に友人夫妻を誘うことも忘れない。

っぱり芝居は楽しくなくっちゃねぇ」と妻。表現は平坦でシンプルだけれど、長年の付き合いで妻の発言の行間を読めば、これは席が埋まっていないという平日にまた観に行こうか!という勢い。ということで、皆さま、どうか劇場へ!

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